花の案内人(3月15日)

 スマホの地図アプリは実に頼りになる。訪れたい店の名前を打ち込めば、詳しい経路と一緒に、到着時刻を表示してくれる。至れり尽くせりだが、端末とのやりとりは、どこか味気ない▼喜多方市の桜の名所「日中線自転車歩行者道」では毎年、開花に合わせて「さくらメイト」が登場する。市内のNPO法人が数年前に始めた観光ガイドで、高校生や大学生が担う。おそろいの桜色の上着を身に着け、来訪者に優しく声をかける。市内の名所や歴史はもちろん、酒蔵の見どころまで案内してくれるからうれしい▼若い世代の古里愛を育むため始まった。例年、観光関係者らから講義を受ける。模擬ツアーを考え、自分の足で確かめる。今年は5人が研修を受け、デビューの日を心待ちにしている。任期は桜の季節のみだが、翌年も応募する若者もいる。人材育成の取り組みとしてすっかり定着した▼さて、クイズを二つ。日中線跡の自転車歩行者道は整備されて今年、何年を迎えるでしょうか。当初175本だったシダレザクラは今、何本に増えたでしょうか。地図アプリは答えを知るまい。楽しみが増えた。春満開の笑顔はじけるガイドさんに教えを請いに出かけよう。<2024.3・15>

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