犯罪、重大交通事故増加 警察官が全高校で指南 福島県警と県、県教委連携 今月スタート

 増加している犯罪と重大な交通事故から高校生を守ろうと、福島県警は県、県教委と連携し、県内全ての高校で警察官が防犯と交通安全を教育する初の対策に乗り出す。自転車盗の被害は高校生が4割を占め、ヘルメット着用率は高校進学後に極端に下がる。各署の担当警察官が地域の治安情勢に応じた心がけを伝える。この取り組みを機に警察と高校の連携をさらに強め、ネット犯罪予防などの指導にも力を入れる。

 これまで学校の依頼を受けて個別に防犯指導などを企画してきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、実施できない時期もあった。近年は刑法犯認知件数や死亡事故が増加傾向にあることから、踏み込んだ取り組みを打ち出した。

 県警が県私学・法人課、県教育庁高校教育課を通して全ての高校に協力を求め、第1弾を今月からスタートさせる。県内の公立、私立計約100校に今春、入学する新1年生約1万7千人を対象とする。

 各署の防犯や交通安全の担当警察官が今月下旬から始まる各校のオリエンテーションなどで、それぞれの地域の治安を分析した資料やデータを用い、注意点を説明する。希望する学校には全校生まで対象を拡大する。追加の講習も視野に入れている。

 重点対策に据えている自転車盗の昨年の発生件数は1061件で前年より3割以上増え、被害者の4割超が高校生だった。無施錠で盗まれる事例が多いため、前輪と後輪を施錠する「ツーロック」の重要性を訴える。買い物の途中や自宅で駐輪中の盗難も多発しており、どのような場合でも、鍵をかける必要性を呼びかける。

 高校生のヘルメット着用は1割に満たない。100%近い中学生と比べて着用率の低さが目立つ。昨年、県内で起きた自転車事故の死傷者は321人に上り、ヘルメットを着けていたのは49人。高校生に限れば、負傷者の着用率は2.4%にとどまった。

 自転車事故の死者の6割が頭部のけがが原因となっていることを示し、努力義務となっているヘルメット着用を促す。

 県警は新たな取り組みの中で、交流サイト(SNS)を介した犯罪や、高収入をうたって犯罪に巻き込む「闇バイト」の危険性も教える。県警の防犯アプリ「POLICEアプリふくしま」の活用を勧める。

 県警は効果を検証し、実績を上げている高校の事例を全県に広げたい考えだ。

 全校集会で警察官の指導を受ける予定の学法石川高の森涼校長は「警察官が学校に姿を見せ、対策などを説明してもらえるのは効果的だ。今後も定期的に防犯や交通安全意識向上のために連携したい」と話した。

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