団地産エビ「ぷりぷりで甘い」 空き室で養殖実験、回転ずし店のネタに出荷も 神戸・垂水

エビが泳ぐ水槽を見学する参加者=神戸市垂水区本多聞4

 団地の空き室を使ったエビの養殖実験が新多聞団地(神戸市垂水区)で進んでおり、すくすくと育ったバナメイエビの試験的な出荷が行われている。都市再生機構(UR)などが取り組み、今月は、回転ずし店や百貨店での販売も実施。9日には団地近隣の住民らを対象に見学会や弁当販売があり、「団地産エビ」を味わった参加者が「ぷりぷりで甘い」と驚きの声を上げた。(岩崎昂志)

■URなど、住民向け見学会

 URによると、同団地は1974年度にでき、91棟2564戸が並ぶ。養殖は2022年11月、商業施設などが集まるエリアのかつて診療所だった建物を使って開始した。水槽の水を長期間入れ替えずに飼育できる「完全閉鎖循環方式」を手がける企業「ウイルステージ」(滋賀県)とUR、日本総合住生活の3者が共同で実証実験に取り組む。

 当初はヒラメとカワハギも育てたが、飼育環境の調整が難しくなかなか大きくならなかったという。一方、バナメイエビは簡易水槽内を元気よく泳いで順調に育った。昨年8月からはエビだけに絞った養殖に移行。稚魚は山口県から取り寄せ、おおよそ4カ月で体長15~20センチ、重さ約30グラムの出荷基準に成長する。

 住民向け見学会は昨年に続き2回目で、約40人が訪れた。室内に並ぶ5基の水槽は幅約1.5メートル~4.5メートル。半透明のエビを網ですくうと元気よくはね、参加者が「大きい」「元気!」と目を丸くした。

 家族で来た多聞の丘小学校3年の氏川心花さん(9)は「でかくて透明できれい。エビはちょっと苦手だけど食べてみようかな」。同団地で子ども時代を過ごした楫(かじ)一彦さん(57)、滋子さん(57)夫妻=垂水区=は「冷凍ものと違ってぷりぷりで臭みがない。この団地でこんな話題が生まれるとは」と笑顔を見せた。

 団地産エビは今月上旬、宝塚市や伊丹市などの回転ずし店ですしネタとしても試験販売された。20日には神戸阪急(中央区)での販売も予定している。

 養殖実験は当面続け、事業化も視野に販路開拓などに取り組むという。UR担当者の石川朋一さん(28)は「試食会などで地域還元を進め、団地の活性化にもつなげたい」と話す。

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