靖国神社、新宮司に元自衛官 前ジブチ大使の大塚氏

Yukiko Toyoda

[東京 15日 ロイター] - 靖国神社(東京都千代田区)は15日、新たな宮司に元海将の大塚海夫前ジブチ大使が4月1日付で就任すると正式発表した。山口建史現宮司の退任に伴う人事で、自衛官出身者が同神社宮司に就任するのは、1978年に第2次世界大戦のA級戦犯を合祀(ごうし)した松平永芳氏以来。3月14日の総代会で了承された。

靖国神社を巡っては、極東国際軍事裁判で裁かれたA級戦犯を合祀していることから政治家らによる参拝が政治問題化することが多く、歴代首相の参拝には中国や韓国が反発してきた。2013年12月に当時の安倍晋三首相が参拝した際は、米オバマ政権も「失望」を表明した。

宮司に就任することが決まった大塚氏はロイターに対し、「43年にわたり防衛と外交の世界で平和を追求してきたが、次の人生で、国のために尊い命を捧げた人々の霊が祭られるこの『平和の神社』に奉仕できることを誇りに思う」と述べた。

大塚氏は防衛大卒。1983年に海上自衛隊に入隊後、自衛隊司令部幕僚長や防衛省の情報本部長を歴任した。2020年に自衛官出身者として初めて大使に任命され、アフリカ東部ジブチの特命全権大使に就任した。

大塚氏は2月発行の靖国神社の社報で「国防という点で英霊の御心を最も理解できるはずの我々こそが、英霊の思いに感謝すると同時に、その思いを受け継ぎ、日本の平和のために尽力すべきとの信念が湧いた」と寄稿、多数の駐日大使や軍高官を靖国神社に伴って同神社を訪問したと記載していた。

大塚氏が正式に靖国神社宮司に就任すれば、14代宮司となる。歴代宮司の多くは華族出身や神社勤務経験者だが、第6代の松平永芳氏は海軍少佐から戦後に陸上自衛隊へ転じた。

天皇の同神社参拝は1975年を最後に途絶えている。12代宮司の小堀邦夫氏は内部会議で天皇陛下を批判する発言をしたと一部週刊誌に報じられ、退任した。

靖国神社は戊辰戦争で死亡した兵士らの慰霊のため1869年に建てられた東京招魂社が前身。終戦までは軍直轄の神社で国家神道の精神的支柱と位置付けられた。戦後に宗教法人化され、太平洋戦争で戦死した日本軍の軍人や軍属ら約250万人も祭っている。

(豊田祐基子 編集:久保信博)

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