日本の「GDP」が問題視されていますが、決して低くない順位ですよね。困ることはないと思うのですが……。

GDPの基礎知識

国内総生産、略してGDPは、ある国の経済規模を示す重要な指標です。この数字は、一定期間にその国内で生成される財とサービスの総価値を表し、企業や家計が生み出す価値を加算して算出されます。国の産業構造や経済力の大枠を把握するために用いられ、政策立案や国際比較の基準となっているのです。

しかし、GDPの数値は物価の変動や通貨の価値によっても変わるため、経済の実態を正確に把握するためには、これらの要因を考慮する必要があります。

例えば、日本の2022年のGDPは4兆2375億ドル(1ドル148.14円とすれば約626兆円)と報告されていますが、これはその年の市場価格に基づいて計算された名目GDPです。一方、物価の影響を排除した実質GDPを見ると、成長率は名目GDPよりも低い場合があります。この差は、物価上昇率やデフレーターと呼ばれる指標を通じて考慮されます。

国際的には、各国のGDPをドル換算して比較することが一般的ですが、これには為替レートの変動が大きく影響します。日本円が対ドルで急激に価値を失った場合、円ベースでGDPが増加しても、ドル換算では減少することがあるのです。実際に、近年の円安傾向は日本のGDPの国際ランキングにも影響を及ぼしています。

さらに、GDPには計算に含まれない経済活動も存在します。無報酬の家事労働や地下経済など、市場を通じて取引されない活動は、GDPの数字には反映されません。このような理由から、GDPは経済の全体像を捉えるには不十分な面があり、その解釈には慎重なアプローチが必要です。経済学者や政策立案者は、GDPの数字を用いて経済の成長動向を分析し、景気の方向性を予測します。

GDP成長率が正の値を示す場合、経済が拡大していると判断され、マイナスであれば縮小していると判断されます。このように、GDPは経済活動の測定と分析において中心的な役割を果たしていますが、その数値の背後にある多様な要因を理解することが、経済の真の状態を把握する鍵となります。

日本のGDPをどう評価するべきか?

日本の経済規模を示すGDPは、世界ランキングで常に上位に位置していますが、この数値だけで国の経済力を判断することには問題があるでしょう。経済成長の停滞が長期間続いている現状を考えると、GDPの絶対値以上に、成長率の動向が重要であるという見解があります。

特に、1990年代から続く経済の低迷期を経て、日本のGDP成長率は他の先進国と比較しても低い水準にとどまっています。例えば、2020年度の日本のGDP成長率はマイナス4.6%と、新型コロナウイルスの影響もあり大幅なマイナス成長を記録しました。このような状況は、雇用機会の減少や国民生活の質の低下に直結し、社会全体に負の影響を与えかねません。

消費、投資、政府支出、そして輸出入のバランスなど経済活動の各要素を詳しく分析することで、経済成長を促進するための政策立案に役立てることできます。GDP成長率がプラスであり続ける豊かな社会を目指すには、GDPの数字や世界ランキングの位置づけにとらわれず、経済の質的な成長を目指す政策の策定が求められているのです。

GDP経済率に注目した質的評価を

日本のGDPランキングは世界でも上位に位置しているものの、経済成長の質的な面で課題が浮き彫りになっています。特に、過去数十年にわたる成長率の低迷は、経済の持続可能性に疑問符を投げかけています。日本経済が真の意味での成長を遂げるためには、GDPの数値やランキングを超えた、経済の質的な側面に着目した政策立案が重要となります。

出典

GLOBAL NOTE 世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)
NHK 2020年度のGDP -4.6% リーマンショック超える最大の下落

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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