バイデン氏、TikTok「禁止」なら再選戦略の重要手段失う可能性

Nandita Bose Helen Coster Heather Timmons

[ワシントン 14日 ロイター] - 米下院が13日、中国系動画アプリ「TikTok(ティックトック)」について米国での事業を売却しなければ全米でアプリ配信を禁じる法案を可決し、バイデン大統領は上院も通過した場合に署名すると表明した。

しかし法案が成立すれば、バイデン氏は再選に向けて重要な若い有権者への効果的なアピール手段を失ってしまうかもしれない。

バイデン氏陣営は、開設しているティックトックの公式アカウントの動画で共和党の候補指名が確実なトランプ前大統領の社会保障予算削減姿勢を激しく批判し、何千もの「いいね」を獲得した。ただ寄せられたコメントの話題は、ティックトック禁止法案に集中している。

ある投稿には「この動画がティックトックで見られたのが素晴らしい。禁止したら一体どうやってこれを選挙戦に使うつもりなのか」と記されていた。

本来民主党寄りとされる米国のオンライン上の「政治世論」が形成される場所は近年、ティックトックに移行してきたというのが専門家の分析。X(旧ツイッター)が所有者であるイーロン・マスク氏の下でハラスメントを防ぐ規制措置を撤廃してしまったほか、フェイスブックは政治コンテンツから距離を置く中で、政治に関心がある若い世代が選ぶプラットフォームがティックトックになっているというわけだ。

ティックトック利用者は、一貫して民主党に投票する有権者の比率が非常に高く、バイデン氏にとっては是非取り込みが必要になる。これに対してトランプ氏の陣営は、ティックトックに公式アカウントを持っていない。

気候変動問題に取り組む若者の活動団体サンライズ・ムーブメントのミシェル・ウェインドリングさんはティックトック禁止について「若者同士の主な対話の場がなくなることで選挙に大きな影響を与える。若い有権者の政治離れに一段と拍車をかけ、彼らを幻滅させることにもなる」と警告する。

ピュー・リサーチ・センターによる2023年の調査では、ティックトックで定期的にニュースを視聴している人の約60%は民主党員か民主党寄り。またこうしたニュース視聴者の19%は黒人、30%はヒスパニックで、いずれも全人口に対する割合(約14%と19%)より高い。ティックトックのニュース視聴者の44%を18歳から29歳が占めるのも大きな特徴だ。

テキサス大学のサミュエル・ウーリー教授(ジャーナリズム)は、ティックトックを禁止すれば、非常に対立的な選挙が行われようとしている中で、大部分の有権者から政策について意見を交わす能力を奪うことになると指摘した。

ティックトックで110万人のフォロワーを抱えるトランス女性の一人は「私たちはソーシャルメディア、ティックトックの力を通じてバイデン氏を当選させた」と語り、20年の大統領選では若い有権者の参加が過去最高を記録したと指摘した。

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