【最大2000万円】自分亡きあとも、愛する妻の生活を守りたい…各種「配偶者控除」を活用した節税テクニック〈税理士が解説〉

(画像はイメージです/PIXTA)

相続税には配偶者が有利となる仕組みが複数あり、うまく活用すれば効果的な節税が可能です。ここでは「居住用財産贈与の配偶者控除」を中心に見ていきましょう。※本連載は、公認会計士であり、税理士、社会保険労務士の資格を持つ五十嵐明彦氏監修の書籍『いちからわかる! 相続・贈与 2024年最新版』(インプレス)より一部を抜粋・再編集したものです。

自分亡きあとの「配偶者の住まい」を確保する!

相続では配偶者に有利な税制の仕組みが多くあります。

その一つが「居住用財産贈与の配偶者控除」です。居住用の不動産または取得のための金銭の贈与が、最大で2000万円、基礎控除を合わせると2110万円まで非課税になるというものです。

要件として、婚姻期間が20年以上あることのほか、自分が住むための住居である必要があります。

この特例の主なメリットは、自身の生前から配偶者の住まいを確保できること。また、相続開始前3~7年以内の贈与であっても、相続財産に持ち戻されることはありません

ただし、贈与を受けた方が先に亡くなると、相続財産となるので却って相続税が高くなる可能性があります。その点も必ず考慮しましょう。

贈与を受けた住居あるいは金銭に対してこの特例を利用したい場合は、贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本など、一定の書類を添付して贈与税を申告します。

将来の売却・買い替えに備えて「配偶者控除」を活用

いずれ自宅を売却する予定があるのであれば、事前に「居住用財産贈与の配偶者控除」を活用しておくとさらなる節税も見込めます。

通常、自宅を売却すると、「マイホーム譲渡所得の特例」が利用できて、売却益の3000万円までが非課税になります。しかし、自宅を売却して4000万円の利益が出た場合、1人の持ち家だと「マイホーム譲渡所得の特例」を利用しても1000万円分の足が出て、所得税約176万円が課税されます。

そこで、事前に「配偶者控除」で妻に2000万円分の不動産を贈与します。このとき、贈与税は配偶者控除により0円です。こうして、夫婦で自宅を半分ずつ所有したうえで、売却すると「マイホーム譲渡所得の特例」も2人分、合計6000万円まで控除され、所得税も0円になるのです。

ただし、売却前提で「配偶者控除」を利用すると、要件を満たさない可能性もあります。あくまで数年後の展望として活用するようにしましょう。

居住用財産贈与の配偶者控除の仕組み

適用条件

・婚姻期間が20年以上の配偶者間の贈与

・居住用不動産もしくは取得のための金銭贈与

・贈与を受けた翌年3月15日までに居住している

基礎控除110万円+配偶者控除2000万円=最大2110万円まで控除

配偶者控除を活用した節税テクニック

◆4000万円の自宅を1人で売却した場合

[図表1]4000万円の自宅を1人で売却した場合

◆4000万円の自宅を半分妻に贈与してから2人で売却した場合

[図表2]4000万円の自宅を半分妻に贈与してから2人で売却した場合

贈与税の配偶者控除は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も引き続き居住することが要件となっています。贈与後すぐに売却を行った場合には、贈与税の特例が受けられない可能性があるので注意が必要です。

五十嵐 明彦
公認会計士・税理士・社会保険労務士

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