『ブギウギ』趣里がクライマックスに向けてメッセージ “歌の力”の限界と向き合うスズ子

『ブギウギ』(NHK総合)第24週「ものごっついええ子や」で描かれるのは、愛子(このか)の誘拐未遂騒動。3月14日放送の『あさイチ』(NHK総合)で“朝ドラ受け”に参加した伊達みきお(サンドウィッチマン)が、「『捜査一課長』面白かったですね」とボケを入れるほどに、高橋刑事を演じる内藤剛志の存在感が際立った、朝ドラとしては特異な週だったと言える。

3月15日放送の第116話では、愛子が友達になった一(井上一輝)と再会を果たす。一は、事件を起こした小田島(水澤紳吾)の息子。父の逮捕により、一は親戚に預けられることになり、学校を転校してしまっていた。「一君がおらんようになったんは、マミーのせいや!」と登校拒否をする愛子に、スズ子(趣里)は一を家に連れてきてもらうよう高橋にお願いするのだった。

愛子も一も全ての事情を知っているという、複雑な状況。それでも愛子が一に会いたかったのは、明日もまた空き地で遊ぼうという約束を破り、一を傷つけてしまったのではないかと思っていたからだった。「ごめん」と愛子が素直に謝ると、2人はそのまま庭で無邪気に遊び出す。「子供の背中を見てると、我々はちゃんと生きなきゃと思いますな。彼らは一生懸命ですから」と感慨に耽る高橋に続き、大野(木野花)も「子が親の背中を見るのではなく、親が子の背中を見て育つのかもしれません」とポツリ。心温まるシーンであるが、どことなく刑事ドラマのラストの雰囲気も漂ってくる。

次は父と一緒に家を訪ねることを約束する、一と愛子。高橋がそう約束させたのは、刑事として小田島がスズ子に謝罪をし、更生してほしいという思いからだろう。帰り際に愛子が一に手渡したのは、少女漫画。1000回は読んだというボロボロになった漫画を見て、一は「こんな女の本読めるかよ」と言いながらも愛子に感謝を告げる。そして、一はスズ子に愛子が有名人の子としてからかわれ、つらい思いをしていること、多忙なスズ子のもとで愛子が寂しい思いをしていることを、スズ子に直接伝える。

この第24週では、スズ子の歌が聴く人の活力になっている一方で、小田島のような誰かにとっては疎ましい存在になってしまっていないかというスズ子の悩みが吐露される。善一(草彅剛)でさえも、「余裕のある人間たちだけが楽しんでいるじゃないか」と思うこともある難しい問題であるが、それでも悩みながら続けていくしかない。その先に自分なりの答えがあると信じて。

夕げの食卓。スズ子は愛子に、母親として過保護であったことを謝る。「愛子は優しいええ子に育ってくれてるわ」と、愛子が人を気遣うことのできる子に成長していることを実感し、「愛子。ワテの子でいてくれて、ほんまにありがとう」と言葉をかけると、愛子も「私もマミーが好き」と、かつての幼い日の頃のような無邪気な笑顔が戻っていた。スズ子と愛子の間にあった壁は、今回の騒動をきっかけにしていつの間にかなくなっている。

『ブギウギ』もいよいよ残り2週。『あさイチ』(NHK総合)の「プレミアムトーク」にはついに趣里が登場し、クランクアップの映像が初解禁。終わりには、今後の展開について「これからステージのシーンもありますし、懐かしい方々も出ますので、ぜひ最後までご覧ください」と視聴者にメッセージを届けた。
(文=渡辺彰浩)

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