神戸ワイン、白鶴酒造に譲渡協議 製造販売40年、醸造設備が老朽化 農政公社から引き継ぎ検討

神戸ワイン用のブドウの摘み取り作業が進む果樹畑=2023年8月、神戸市西区平野町印路(ドローンで撮影)

 「神戸ワイン」を製造・販売する神戸市の外郭団体・神戸農政公社(同市西区)などは15日、ワイン事業を白鶴酒造(同市東灘区)に譲渡する方向で協議を開始すると発表した。1984年の販売開始から約40年が経過し、醸造設備などの老朽化が進んでいたことから、同公社が設備の引受先を探していた。

 同公社と白鶴はこれまで、神戸ワインの瓶詰めを白鶴に委託したり、純米酒と梅酒、ブランデーをブレンドした「梅ブランデー」を共同開発したりするなど、協力関係を深めていた。

 譲渡が実現すれば、白鶴が神戸ワインを製造・販売する一方、市内の生産者からワイン用ブドウを買い取る業務は同公社が引き続き担当する見通し。譲渡額や醸造設備の引き継ぎなど詳細は今後、協議していく。

 神戸ワインは、同公社の前身「神戸みのりの公社」が1984年から製造・販売を開始。市内の農家からブドウを買い取り、98年度にはワインブームに乗って過去最高の約110万本(720ミリリットル換算)を売り上げた。しかし、ブームの陰りや安価な輸入ワインに押され販売が急減。2000年代初頭には在庫が膨らみ、同公社は経営難に陥った。

 その後、耕作面積を減らしたり栽培品種を高級品種に絞り込んだりして在庫を圧縮し、経営再建に注力。19年6月に大阪で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)では、初日の夕食会に神戸ワインの最高級シリーズ「ベネディクシオン」が供された。

 新型コロナウイルス禍による販売減を経て、22年度には21万7千本を売り上げた。現在、同市西、北区の契約農家や農業公園3カ所計約40ヘクタールで栽培するブドウを原料としている。神戸ワインは国産ブドウのみを使って国内で生産した果実酒だけが表示できる「日本ワイン」で、国内外から注目を集めている。(三宅晃貴、大盛周平)

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