物価高への一矢となるか「キャッシュレス決済」の現在地:「不安で使わなかった」経験者は22%

最新の意識調査や利用者の声、消費者物価指数もチェック

2024年3月11日から、東京都が「暮らしを応援!TOKYO元気キャンペーン」を実施中。都内の対象店舗でキャッシュレス決済サービスを利用すると、決済額の最大10%がポイントで還元されるものです。

対象の決済サービスは、au PAY、d払い、PayPay、楽天ペイの4種類。決済サービスごとに上限3000円分のポイントが還元され、4つすべてのサービスを使えば最大1万2000円分のポイントが還元されるという。

このキャンペーンの目的のひとつに「物価高騰対策」が挙げられます。関東在住者からは「ポイント還元されるなら買っちゃおう!という気になる」という声も。

数年前と比べて、格段に利用者が増えた印象のあるキャッシュレス決済。それでは、実際にキャッシュレス決済の利用状況はどのようなものなのでしょうか。

今回は最新の意識調査と経済産業省による分析結果を交えながら、消費者物価指数についてもチェックしていきましょう。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

【要点】経済産業省「消費者実態調査」のキャッシュレス関連まとめ

まずは、経済産業省が行ったキャッシュレス実態調査について確認していきましょう。

そもそも、この調査が行われたのには、別調査で得られた「現状のキャッシュレス比率(32.5%)」の数値が、実態としてキャッシュレスが使われている肌感覚と必ずしも合致しないことが背景としてあります。

キャッシュレスの利用実態が網羅的にまとめられた調査、ポイントをおさえながらチェックしていきましょう。

キャッシュレス決済「浸透率」:「7~8割程度以上の利用」全体の54%

【性別・年代別】キャッシュレス決済利用者の割合

調査の結果、日常生活において「7~8割程度以上キャッシュレスを利用する」と回答した人が全体の54%でした。キャッシュレス決済が浸透していることがうかがえます。

お釣りなどでかさばる現金と違い、とにかく支払時や履歴確認時など「利便性」の高いキャッシュレス決済。スマホの高い普及率とも関連性がありそうです。

キャッシュレス決済と「支払い額」との関連性:1000円以下で使用割合が増加

また、その他の質問において、タッチ決済の利用に意欲的な人ほど「1000円以下」の決済で現金を使用する割合が低下していることがわかりました。

さらに別の質問を分析したところ、フルキャッシュレス層であっても74%は現金を持ち歩いていると判明しています。

ここから「現金がなくても生活できる」と感じている人は少数派であり、コンビニや駅などの少額・高頻度の買い物においてキャッシュレス決済が選択されているといえるでしょう。

そんなキャッシュレス決済のなかでも、多くのアプリ・サービスがある「モバイル決済」に対してどのような利用意識、不安な思いがあるのでしょうか。

【最新】キャッシュレス・スマホ決済に関する意識調査

マイボイスコム株式会社は、通算8回目となる『モバイル決済』に関するインターネット調査を実施。

モバイル決済の利用状況や意向、選定時の重視点が浮き彫りとなりました。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査対象:MyVoiceのアンケートモニターの男女
  • アンケート母数:9537名
  • 調査期間:2024年2月1日~2月5日
  • 調査会社:マイボイスコム株式会社
  • リリース公開日:2024年3月4日

スマホ決済の利用意向:「利用したい」派が6割弱

マイボイスコム株式会社の調査で明らかになったスマホ決済の利用意向の割合は「利用したい」「まあ利用したい」を合わせて6割弱でした。

【グラフ】スマホ決済の利用意向

過去調査と比べて、増加傾向にあるとわかります。また、スマートフォン主利用者では6割強となりました。
それでは、こうした増加傾向の背景にある「ワケ」とはなんなのでしょうか。

スマホ決済選定時の重視点:「利用店舗・サービス」「ポイント還元率」

同調査によると、スマホ・モバイル決済利用意向者の選定時の重視点を聞いたところ「利用できる店舗・サービスの多さ」「支払いのスムーズさ・手順の簡単さ」が各65%台、「ポイント還元率の高さ」が52.5%でした。

【グラフ】スマホ決済選定時の重視点

また「キャンペーン、割引などの特典」は女性全体、「セキュリティ対策の充実度」「よく利用する店で使える」は女性高年代層で高い傾向にありました。

興味深いことに、直近1年間にスマホ決済を利用していない人では「設定の簡単さ」がやや高くなっています。

それがそのまま、キャッシュレス決済のハードルにつながると考えられるかもしれません。実際に、不安に思っているという人の声も聞いてみましょう。

便利ではあるが…「スマホ決済」を利用したくない理由3つ

今回、同調査に寄せられた全6000件のコメントから、不安をカテゴライズしてみました。

不安な理由①スマホからの「データ流出」が不安

「紛失の可能性があるスマホにデータ集約する事に抵抗がある」(男性66歳)

キャッシュレス決済のなかでも大きな割合を占める「スマホ決済」。多くのサービスを利用していれば利用する分だけ、スマホの中に個人情報がたまっていくのは否めません。

そうしたアプリやサービスの情報網から、自分の大切な情報が抜かれてしまうことを危惧している人も少なくないようです。

不安な理由②「利用金額が不明瞭になる」のが不安

「お金の請求時期がずれるため忘れたころに引き落とされるため」(女性52歳)

財布の中から減っていく現金と異なり、オートチャージなどの機能がついていれば、なおさら不明瞭になりがちです。

そういった不安を抱えていながらもキャッシュレス決済にチャレンジしたい場合には、オートチャージをオフにしたり、口座をわけたりするなども一つの手。または、プリペイド形式のアプリ・サービスなども検討してみてください。

不安な理由③スマホ操作や「アプリの立ち上げ」が不安

「アプリの立ち上がりが悪く、レジで人を待たせたり、待たされたりするのが嫌だから」(女性48歳)

スマホの操作に自信がなかったり、アプリの用意で時間がかかってしまったりすることに不安を覚える人もチラホラ。

最初のうちはよく知る人と一緒に使用したり、すぐに別の支払い方法に切り替えられるようシミュレーションするのもよいかもしれませんね。

2024年はどうなる?消費者物価指数の上昇率

物価上昇が著しい昨今ですが、2024年の物価見通しはどうなっているのでしょうか。

【東京23区】2023年1年間の消費者物価指数

【2023年】2020年基準・消費者物価指数

総務省によると、東京都区部の2023年CPI(総合)は前年比3.2%となっています。

1年間で3%も物価が上がっており、それだけ現金の価値が下がっていることになります。

また、2023年の各月のCPIを前年同月比で見てみると年初は4%を超えていましたが、12月には2%代になりました。

それに比べて生鮮食品及びエネルギーを除いたコアコアCPIは依然として前年同月比が3%代で推移しており、2024年も物価の上昇は続くかもしれません。

ポイント還元などメリットも! キャッシュレス決済を検討してみて

海外と比較すると、日本におけるキャッシュレス比率は大きいとは言えません。

しかし、増加率や意識調査の結果をみると利用傾向が高まっている様子が伺えます。

はじめてのことは何でも難しく感じがちですが、キャッシュレス・スマホ決済などは実際にやってみるとその簡単さ・利便性に驚くでしょう。

関東に在住されている人は、東京都のキャンペーンが開催されているこの時期に利用を検討してみるのもよいかもしれません。

参考資料

  • 東京都「暮らしを応援!TOKYO元気キャンペーン」
  • マイボイス株式会社「【モバイル決済に関する調査】スマホ決済選定時の重視点は「利用できる店舗・サービスの多さ」「支払いのスムーズさ・手順の簡単さ」が利用意向者の各65%台、「ポイント還元率の高さ」が5割強」(PRTIMES)
  • 経済産業省「消費者実態調査の分析結果 2023年3月」

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