異例の卒業式も笑顔 輪島消防署で合同、送辞答辞なし 9校125人、喜びかみしめ

卒業証書を受け取る河井小卒業生=15日午前9時半、輪島消防署

 能登半島地震で甚大な被害を受けた輪島市で15日、小学校の卒業式が行われ、9校125人が学びやに別れを告げた。このうち6校は校舎が被害を受けたり、避難所に使われたりしたことから、輪島消防署で合同実施。校歌は歌わず、下級生の送辞や卒業生の答辞のない異例づくめの巣立ちとなった。それでも2次避難などで離れ離れになった同級生と久しぶりに会う児童もおり、そろって卒業できる喜びをかみしめた。

  ●会議室で2回

 6校ある輪島地区では河井・鵠巣(こうのす)・三井と鳳至・大屋・河原田の3校ずつを2回に分け、輪島消防署(同市杉平町)の会議室で式を執り行った。

 河井・鵠巣・三井の卒業式では、保護者約110人が見守る中、河井小55人(1人欠席)、鵠巣小3人、三井小3人が門出を迎えた。

 開始前に地震の犠牲者に黙とうをささげ、各校の校長が6年生1人1人に卒業証書を手渡した。3校を代表して鵠巣の滝井篤子校長が式辞を述べ、「能登はやさしや 土までも」と記した加賀藩士朝加久敬の旅日記を引用し、「皆さんの体の中には輪島の地で培われた優しさとたくましさがある。その優しさとたくましさがあれば今後、どんな困難も乗り越えていける」と激励した。

  ●校歌は歌わず

 校歌は歌わず、最後は「卒業生の歌」として音楽グループ「FUNKY MONKEY BABYS」の「あとひとつ」を合唱した。

 地震で河井町の自宅が焼失し、金沢市に2次避難し浅野町小に通っていた五十嵐鈴夏さん(12)は13日に輪島に戻り、式に参加。「みんなと卒業できてうれしい。一緒に輪島中に通えるのが楽しみ」と笑顔を見せた。友人の旭香穏(かのん)さん(12)=宅田町=は、ずっと携帯電話で連絡を取り合っていたとし「久しぶりに会えてすごく楽しいし、うれしい」と喜んだ。

 門前地区では、門前東小の体育館で門前西小と合同の卒業式が行われた。町野小は同校体育館で実施した。

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