脳内にサナダムシの幼虫、生焼けのベーコンが関係か 片頭痛の米男性

ヴィクトリア・リンドリア、BBCニュース

アメリカでこのほど、片頭痛をたびたび訴えていた男性の脳にサナダムシ(条虫)の幼虫が見つかった。生焼けのベーコンを食べたことと関係があるとみられている。

この症例は米医学誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ケース・リポーツ」に掲載された

それによると、男性(52)は普段の片頭痛が悪化し、常用していた薬が効かなくなったことから医師の診察を受けた。

スキャン検査の結果、脳内にサナダムシの幼虫の嚢胞(のうほう)が発見されたという。

生焼けの豚肉を食べたことでサナダムシが体内に入っていたと思われる男性が、「不適切な手洗い」が原因で嚢(のう)虫症になったと医師団は見ている。

嚢虫症は、豚条虫としても知られる寄生虫、有鉤(ゆうこう)条虫の幼虫によって引き起こされる感染症の一種。脳内に嚢胞ができることもある。

サナダムシを摂取した人は、その卵によって自ら感染(自家感染)することがある。卵は排せつ物として体外に出され、同居人らが感染する場合もある。

加熱が不十分な豚肉を食べることで直接、嚢虫症が引き起されるわけではない。

医師らは、男性は「不適切な手洗い」後の自家感染によって嚢虫症になったと「しか推測できない」としている。

男性は「加熱が不十分な豚肉が好み」だったことから、医師らは「食習慣」からサナダムシが体内に入ったと推測した。

男性は抗寄生虫薬と抗炎症薬が効き、その後完治したという。

不十分な手洗いなどによって

米疾病対策センター(CDC)は、サナダムシの幼虫が「筋肉や脳などの組織に入り込み、嚢胞を形成する。嚢胞が脳で発見された場合、その状態は脳嚢虫症と呼ばれる」としている。

また、「サナダムシが体内にいる人の便に含まれる有鉤条虫の卵を飲み込むと、嚢虫症になる」としている。

サナダムシの卵は「食べ物、水、あるいは便による汚染の表面を通して」広まるという。

「人は汚染された食品を食べたり、汚染された指を口に入れたりして、サナダムシの卵を飲み込んでしまう」

「サナダムシが体内にいる人は、自分自身が感染したり(自家感染)、家族に感染させてしまったりする可能性がある」

嚢虫症は、豚肉の厳格な検査が義務付けられているアメリカやイギリスではあまりみられないされる。

この感染症が多いのは、ラテンアメリカ、アジア、アフリカで、特に豚が放し飼いされ、衛生状態や食品安全対策が不十分な農村部で目立つ。

不十分な手洗いや、汚染された食べ物や水の摂取が、この種の感染症にかかる危険性を最も高くしている。

今回の男性の症例報告を書いた医師らは、「昔からよくある暴露や旅行以外の原因で、脳嚢虫症にかかるのは非常に珍しい。アメリカではそうした症例はゼロだと考えられていた」としている。

医師らはまた、今回の症例は「加熱が不十分な豚肉の摂取」と、それによる自家感染のリスクを浮き彫りにしたと指摘。

「アメリカで感染した豚肉に遭遇するのは歴史的に非常に珍しく、今回のケースは公衆衛生に影響を及ぼすかもしれない」と結論付けている。

(英語記事 Tapeworm larvae in brain linked to underdone bacon

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