部下がいわゆる「モンスター社員」で、仕事中でも平気でスマホゲームをします。そのせいで仕事が残っても「残業はしない主義」とのことですが、最悪の場合は解雇も可能でしょうか…?

法律上は社員を解雇することは簡単ではない

労働契約法16条では「解雇は使用者(会社側)がいつでも自由に行えるものではなく」、「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」は解雇ができないとされています。

そのため、社員を解雇する場合には、「解雇ができる社会通念上相当な理由」が必要です。勤務態度が悪い、業務命令に従わない、といった問題行動が1度あった程度であれば解雇は難しいでしょう。また、解雇が正当かは裁判所で最終的に判断されます。

仕事が残っている社員が残業命令を無視した場合、解雇は可能?

「業務中にサボっているため仕事が残っている社員に対して残業命令をし、これを社員が無視した場合に解雇できるか」については、先ほどと同様、解雇に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるかが焦点です。残業命令に従わなければいけないのかについては、就業規則や労働契約書に記載の上、労働者に周知しておく必要があります。

就業規則や労働契約書で残業についての記載があれば、使用者と労働者の双方が納得して締結されているので、労働者が残業命令に従わなければいけないことを納得していると考えられるでしょう。そのため、この場合は残業命令を無視したことを理由に解雇することも可能と考えられます。

なお、解雇する場合は30日前に解雇の予告をしなければいけません。予告をしない場合は30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。

社員が残業をしなくても解雇できない場合

もっとも、業務態度の悪い社員が残業命令を無視した場合でも解雇できないこともあります。例えば、体調不良や子どものお迎えなどで残業ができない場合です。この場合は正当な理由として残業命令を拒否できます。

また、解雇が労働基準法以外で認められないケースもあります。例えば、労働者の性別を理由とした解雇や、労働者が育児休暇や介護休暇を取ったことを理由とした解雇です。前者は男女雇用機会均等法、後者は育児介護休業法によって解雇が認められていません。

できるだけ解雇にならないように使用者と労働者が働きやすい環境を作っていくことが大切

「モンスター社員」は社会的に問題となっていますが、解雇も簡単にできないためどのように対処すればよいか分からない場合もあるでしょう。その場合、まずは就業規則や労働契約書に解雇についての事由を記載し、労働者に周知しておくことが大切です。不当な解雇は認められていませんが、正当な理由があれば解雇できます。

事例のように、業務中にスマホゲームなどをしてサボっているため仕事が残っているにもかかわらず残業をしない社員は、正当な理由がなく残業命令を無視することが何度も続くようであれば、最悪の場合解雇することも可能でしょう。

また、解雇をする場合は解雇予告が、予告ができない場合は解雇予告手当の支払いが必要になります。とは言え、まずは、できるだけ解雇にならないように使用者と労働者が働きやすい環境を作っていくことが大切です。労働について話しやすい環境づくりを日頃から心がけましょう。

出典

厚生労働省 労働契約の終了に関するルール

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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