社説:民間ロケット 失敗を糧に再起目指せ

 初挑戦は失敗に終わった。民間の小型ロケット「カイロス」が打ち上げ直後に爆発した。

 新たな宇宙ビジネスへの民間参入にとって痛手は大きい。原因を探り、再起を期してもらいたい。

 宇宙事業会社スペースワン(東京)はおととい、和歌山県串本町にある民間ロケット発射場で、カイロスの打ち上げに挑んだ。

 固体燃料で推進力を得るロケットで、全長18メートル、重さ23トン。小型衛星を搭載し、軌道投入に成功すれば民間では初めてとなり、宇宙関連の国際市場参入に向けた大きな一歩となるはずだった。

 ところが、発射直後に何らかの異常が発生し、ロケットに搭載したコンピューターの判断で自律破壊に至ったとみられる。

 打ち上げ失敗は残念だが、ロケット開発で初号機段階のトラブルは珍しくない。

 起業家イーロン・マスク氏が率いる米スペースX社も今でこそ年間数十機のロケットを打ち上げる能力を誇るが、当初は何度も失敗を重ねた。2019年に民間単独では国内初のロケット打ち上げに成功したインターステラテクノロジズ(北海道)も、機体爆発などの失敗を経て3回目だった。

 ただ、カイロスは、再三の打ち上げ延期による焦りはなかったのか。リスクの高い初号機に政府の情報収集衛星を搭載したのは拙速ではなかったか。

 民間企業の持ち味であるスピード感を生かしつつも、課題や事業の採算性を精査し、再挑戦につなげることが大切だろう。

 宇宙関連市場は、40年に1兆ドル(約150兆円)を超すと予測され、急増する衛星需要を受けて昨年、ロケット打ち上げは過去最多の212回に上った。しかし、米国や中国が回数を伸ばす中、日本は2回にとどまった。

 日本では政府と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導してきたが、海外では00年代以降、民間企業がけん引する。政府は民間参入を促し、総額1兆円規模の「宇宙戦略基金」を創設して企業を支援するなど前のめり気味だ。

 スペースワン社もその一つとされる。小型ロケットに特化して、いつでも、どの軌道でも衛星を届ける「宇宙宅配便」の事業化を目指し、30年代に年間30機を打ち上げる目標を掲げている。

 「われわれは失敗という言葉は使わない。新しいデータ、経験があり、それは新しい挑戦の糧になる」―。強気の姿勢を崩さない同社の意気込みを見守りたい。

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