今回は、①においてレシピを紹介したニヴェルの郷土料理タルタル・ジョットとビールのペアリングについて考察したいと思います。芳醇な香りと強い旨味、さらには微かな酸味を持つフレッシュタイプのチーズであるブレット・ド・ニヴェルと、爽やかな香りが特徴的なスイスチャードをふんだんに使用し、オーブンで香ばしく焼き上げたこの料理には、果たしてどのようなビールが合うのでしょうか。今回は以下のような4種類のビールを用意しました！
サッポロ・プレミアムビール（ピルスナー）／サッポロビール
まずは、サッポロビールの国外販売商品である「Sapporo Premium Beer, サッポロ・プレミアムビール」。コクのある味わいとホップの爽やかな香りと苦味、そしてキレのある喉越しのバランスが良いこのビールは、ヨーロッパでも高く評価されています。このビールが持つバランスの取れた味わいは、濃厚なチーズの味わいと芳醇な香り、タルト生地の香ばしさ、さらには香草の爽やかな香りと苦味も兼ね揃えるタルタル・ジョットとよく合います。また、ホップ由来の香りと苦味、ドライな喉越しは、タルタル・ジョットの中にふんだんに使用されたチーズやバターの油分や塩分を洗い流し、後味をすっきりとさせてくれます。
ペデュー（アビイ・トリプル）／コリエール醸造所
次に、アルコール度数が10%と高く、黄桃、洋梨のような有核系果実、さらにはバタースコッチのような濃厚な香りとコクのある味わいが特徴のアビイビール「Paix Dieu, ペデュー」。口に含んだ時には、香ばしい焙煎麦芽の風味も感じられるほか、後味には全体を引き締めるような微かな苦味も感じられます。強い風味と濃厚な味を持つブレット・ド・ニヴェルをふんだんに使用したタルタル・ジョットと合わせても、風味が損なわれることがなく、互いの味を上手く引き立ててくれます。
セゾン・フリュック（セゾン）／デ・クルール醸造所
次に、ベルギーの学園都市ルーヴェン郊外にあるマイクロブルワリーBrouwerij de coureur（デ・クルール醸造所）で期間、数量限定で製造された「Saison Geluc, セゾン・フリュック」。このビールから感じられる干し草、さらにはレモングラスのようなグラッシーで爽やかな香りと、タルタル・ジョットにふんだんに使用されているスイスチャードとパセリの香りには近しさを感じるほか、原料に使用されている小麦やオーツ麦由来の香ばしさと、高温で焼き上げたタルトの風味が上手くマッチしています。また、セゾン独特のドライな味わいと喉越しの良さ、さらには副原料に使用されているカルダモン由来の清涼感のある香りとスパイシーな風味が、ふんだんに使用されたチーズやバターの油分を上手くマスキングし、後味をさっぱりと仕上げてくれます。
ウェストフレテレン8（トラピスト・ダブル）/シント・シクスタス修道院
最後に、ベルギー随一のホップの名産地として知られるポペリンゲにあるシント・シクスタス修道院で醸造されているトラピストビール「Westvleteren 8, ウェストフレテレン8」。上質なポペリンゲ産ホップ由来のグラッシーでスパイシーな香りと豊富な苦味、焙煎麦芽の香ばしさ、乾燥させたプラム、バナナのようなフルーティな香りと風味、さらには純度の高い蜂蜜、メープルシロップのような上質な甘味が特徴的なビールです。上質且つ複雑な味わいのウェストフレテレン8は、強い熟成香と風味を持つブレッド・ド・ニヴェルをふんだんに使用し、タルト生地とともに香ばしく焼き上げたタルタル・ジョットとのペアリングでもその特徴を損なわれることなく、料理の味や風味を存分に引き立てます。さらに、後味に感じるホップ由来のグラッシーな香りと苦味に加え、タルタル・ジョットに使用されているスイスチャードとパセリの爽やかな風味がまとめ役となり、味わい全体を上品に仕上げてくます。
