医療脱毛を行う美容クリニック「しらゆきクリニック」(名古屋市熱田区)が破産しました。被害者は1500人を超えているということです。前金で代金を支払っていたにも関わらずサービスを受けられなくなった被害者からは、怒りと戸惑いの声が聞かれています。
40代女性は友達を紹介「大事なものを失っていたかも」
20代女性:
「全身とVIO(の脱毛)が8回で約46万円。あきらめざるを得ない。まさか自分に降りかかるとは想像できなかった」
女性が嘆く理由は…
中筋 孝臣記者:
「破産した『しらゆきクリニック』はビルの9階、10階に入っていました。ただ、現在はカーテンが閉められています」
女性が利用していた熱田区の「しらゆきクリニック」が2023年12月7日、突然、破産しました。「しらゆきクリニック」は医師や看護師など医療従事者が脱毛の施術を行う美容クリニックで、前払いで低価格を売りに顧客を獲得していました。
20代女性:
「何人限定とかキャンペーンをやっていて、いくら引きで何万円になります、とアピールしていて、これだけ安くなるのかと驚いた。医療脱毛だから正直、安心だと思った」
女性は2022年8月、全身脱毛の施術8回分、約46万円を一括で支払いましたが、最後の1回分の施術を受けていません。民間調査会社などによりますと被害者は1500人以上で、負債総額は3億3700万円にのぼるということです。
被害者の40代女性2人を取材しました。恵子さん(仮名)は、2023年8月末に7万5000円を支払い、契約。その後、友人の博子さん(仮名)に「しらゆきクリニック」を紹介しました。
恵子さん(仮名):
「下手したら友だちも失っていた。人間関係もボロボロになって、大事なものを失っていたかもと思うと怖い」
恵子さんに紹介された博子さんは、2023年9月末に13万4800円を支払い、契約しました。しかし施術はまだ1回も受けていません。
博子さん(仮名):
「契約した時に、クリニックをつぶすということが頭によぎっている時期に契約してしまったのか(知りたい)」
非公開の債権者説明会 元経営者は2023年夏ごろには破産も視野に入れていた可能性
12日、名古屋簡易裁判所では「しらゆきクリニック」の元経営者らが債権者に向け、事情を説明する集会が非公開で行われました。今回取材した3人の被害者の女性も債権者集会に参加。
元経営者の発言をメモした紙を見せてもらうと、開業した2022年3月から6月までは「順調」、しかし12月には「売上は下がるばかり」、翌2023年8月は「改善見られず」、2023年9月には「事業譲渡検討」と書かれています。
すでに2023年夏ごろには破産も視野に入れていたような発言について債権者集会では・・・
20代女性:
「破産詐欺には当たらないのか? という質問があり、それについて管財人が妥当かどうかの調査をするとは言っていた」
40代の女性2人が集会で聞いた話は・・・
恵子さん(仮名):
「売り上げを出すために機械やフロアを増やしたりしたが、数字は伸びなかった。コンサル会社の言いなりになっていた自分が悪い、という言い方だった。ご自身の責任をどれだけ感じているのか怪しい」
破産申立代理人の弁護士とコンサルティング会社はテレビ愛知の取材に対し「お答えできません」と回答しています。
20代女性:
「諦めみたいな気持ちが結構強くて、これも仕方がない。社会勉強だと思って受け入れている」
博子さん(仮名):
「お金を払ったのに(施術を)受けられていないから返金はしてほしい」
専門家「返金される可能性は低い」 被害防止には「大幅値引き」「前払いキャンペーン」に注意
すでに支払ってしまった未施術分の代金は、返金されるのでしょうか。消費者問題に詳しい、和の森法律事務所の瀬戸和宏弁護士に話を聞きました。
瀬戸弁護士は「返金される可能性は低い」と話します。破産したクリニックの資産の換金は、裁判所に選ばれた破産管財人という第三者の弁護士が行います。
被害者へは、回収できたお金から未払いの税金などが先に引かれた後、債権額に応じて割り当てられるので、被害者が受け取る分のお金が残らない場合があるほか、仮にあったとしても返金されるのは数パーセントにしかならないというこです。
今回のような被害に遭わないようにするには、美容クリニックのどこを見たらいいのか。
相場の価格と比べて大幅な値引きをしていないか、いつも前払いキャンペーンなどの割引で客を集めている事業者かどうかを確認することが大事だといいます。
一括で資金を得なければ成り立たない自転車操業に陥っている可能性があり、注意が必要だといいます。