いまみんなが惹かれる“魅力のある人”とは? アンケート&6つの観点から識者が分析

アンケートから分析!

Q. 性別にかかわらず、あなたは人のどんなところに惹かれますか?(複数回答)

内面・性格…63%、立ち居振る舞い…42%、雰囲気…32%、発言・会話…30%、身だしなみ…25.5%、行動…23.5%

20代、30代の女性200人にアンケートをとった結果、6割を超える人がまずは「内面・性格」と回答。上記以下には、コミュニケーション力、仕草や表情、ギャップなどが僅差で続く。一方で、ルックスや能力という回答は上位に挙がらなかった。

Q. 性別にかかわらず、あなたは人のどんな内面に惹かれますか?(複数回答)

安心感・癒し…43%、誠実さ・裏表がない…43%、優しさ…38.5%、朗らかさ・明るさ…34%、ブレない強さ・安定感…30%、ポジティブさ…29.5%

6割以上が支持する内面をさらに掘り下げると、上位の回答は「安心感・癒し、誠実さ」など。不安や疑心暗鬼な感情があふれる今の時代性を反映した結果に。ちなみにポジティブさに僅差で続くのは包容力。それ以下に、ひたむきさ、謙虚さなど。

Q. あなたが魅了される人、惹かれる人に対する想いは、どんな感情ですか?

人間性に対する尊敬…42.5%、自分にはないものを持っている憧れ…18.5%、元気をもらえる・励まされる…15%、才能に対する尊敬…9%、ときめき…7.5%、疑似恋愛感情…5%

憧れの人に対して抱く感情は、ひと昔前なら「ときめき」「疑似恋愛感情」が上位だった印象があるが、結果は「人間性に対する尊敬」が突出して多数に。安心感や誠実さに惹かれるという前の質問の回答を裏付ける結果に。

Q. 多くの人を魅了する人のイメージは、昔と比べて変化してきていると思いますか?

はい…32%、いいえ…33%、どちらともいえない…35%

時代背景の変化から、「変わった」という人が多数かと思いきや3分割の結果に。逆に、価値観の多様性が重視される社会となったことで、人を惹きつける要素も多様化。大多数が一様に「魅力」と認めるものを特定しにくい時代に。どちらともいえないとは、変わった部分も普遍的な面もあるということ。

Q. 多くの人を魅了する人のイメージは、どのように変化してきていると思いますか?

・今は何事にも柔軟に対処できて、やわらかいイメージの人が魅力的
・以前より、より安定感を望んでいる気がする
・何でもバリバリできる元気な人から、思いやりのある穏やかな人に変わった
・カリスマ性だけでなく、優しさや包容力なども求められているように感じる
・外見重視から誠実さや常識、社会貢献度で判断されるようになった

魅力のある人

1、変化に対して柔軟。前向きに楽しんで受け入れられる人。

魅力のある人の定義として“人の心を惹きつけること”は大前提だとしながら、「何を魅力的に感じるかは時代背景により変化し、多様性が重視される今は、人の心を惹きつける要素も多様化している」と話す、公認心理師の山名裕子さん。

「コロナ禍を経て2024年の日本は、地震や飛行機事故の災いから始まり、円安が続くなど不安定な状況下にあります。さらにSNSでは、著名人のみならず一般の方も自分の意見を発信したり、私生活をオープンにすることが当たり前となりましたが、一方で偏った正義感を押し付けたり、誹謗中傷などが増加しています。日頃カウンセリングをしていると、そんな社会の流れに疲れ、不安を抱えている人が非常に多いように感じます」

その結果、癒しを求める人が増え“やわらかさ”や“しなやかさ”を持つ人が魅力的に映る傾向にあるという。

「笑顔や話し方、立ち居振る舞いなどに“やわらかさ”や“しなやかさ”が感じられることはもちろん、社会の変化にも柔軟に、そして前向きに対応できるかどうかも含まれます。例えば多様な働き方や生き方、意見があってもそれはそれでいいよね、と共感して肯定できる人。また、自分の意見をやわらかい物言いで丁寧に伝えられる人。ものごとを前向きに捉えられる人は、周りにストレスを与えず、逆にエネルギーをもらえる人、と魅力的に映るのです」

2、大切なのは、自覚している魅力に他人が共感してくれるかどうか。

「ひと昔前と違って、一つの要素だけでみんなが一斉に『あの人は魅力的だ』としないのが、今の社会や文化の特徴」と話すのは、帝京大学文学部社会学科講師の田島悠来さん。

「応援するという意味を含む“推す”という言葉は、憧れの人に対して個人が抱く複数の感情や感覚を魅力と捉えて、総称したものだと考えています。“エモい”もそれに似ていて、何か心惹かれる要素があるけれど、それを的確に言い表さなくても“エモい”のひとことで表現し、通じてしまう時代なんですね」

そんな時代背景から生まれた価値観が、他人が感じる魅力への“共感力”。

「アイドルたちはよく、たくさんいる中から『私を見つけてください』という言葉を使ってアピールすることがあります。そこでファンは、個人的に感じた魅力を人に伝えるという布教活動のような行動をしたり、それぞれの推しどころを共有し合いながら、推し活へのやりがいにしています。この概念は一般社会にも広まり始めているのではないでしょうか。つまり、魅力は自分からアピールするものではなく、他人が勝手に発見してくれるもの。そして複数人がそれを魅力的だと共感して初めて、魅力として発見されるのではないかと考えています。自分がコンプレックスに感じている部分も、もしかしたら他人からすれば魅力的に映ることもあるのかもしれません」

3、必ずしも目立つ存在じゃない。集団の中で求められている役割をわかっている人。

「先ほど、魅力は他人が勝手に見つけてくれるものだと説明しましたが、ただナチュラルな自分でいれば見つけてもらえるわけでもありません」(田島さん)

集団の中では、ある程度自分の立ち位置を見つけたり、キャラクターを演じる必要もあるという。

「グループ活動をするアイドルが増え、デビューまでに密着したオーディション番組が人気です。様々な個性が存在する中で魅力が際立つ人とは、無条件に圧倒的オーラを放つ人というよりも、リーダーシップを発揮してみんなをまとめる人や、目立たずとも陰で支え続ける人、メンバー間の関係性を良好に保つムードメーカー的な人など、何かしらの役割を担う人です。これは一般社会にも当てはまると思います。会社や仲間などの集団の中で自分の仕事を遂行しながら、自分はどんな立場をとるか、どんな役割を担えばいいのかをわかっていて、それを自然に振る舞える人は、周りから見ると空気が読めて他者との関係性をうまく築けると判断されるでしょう。集団の中で誠実に、品行方正に目立つ、これこそ現代的な魅力の放ち方なのかもしれません」

4、裏表なく話せて風通しのいい人が、安心と心地よさを与えてくれる。

生成AIや、画像・動画の加工技術の進化などにより、真実とフェイクの境界線や見分けが難しくなりつつある時代。「だからこそ、“風通しのいい人”が求められるのでは」と山名さん。

「疑う気持ちやネガティブな感情から解放されたいと思っている人が多いことから、裏表がない人、プライベートに隠さなければいけないようなことがない人は、魅力的に感じるでしょう。有名人でも、プライベートをありのまま見せることが人気に繋がったりもするように、疑う前にさらけ出してくれる人には安心感を抱くものなのです」

相手に誠実な人、清廉潔白な人と映れば、窓から風が入ってくるような心地よさを与えることができて、相手の疲労感を拭いつつも、好印象をもたらすという。

「そういう人は日頃のストレスケアがきちんとできているため、ネガティブな感情を溜め込んだり、感情のままに行動したりしません。言い方を変えれば、冷静さを持つ人=クールな人であるともいえます。風通しのいい人になるためには、まず自分自身と向き合い、自分がどういう人間かを知ること。自分が何に興味を持ち、何が好きで、今後やりたいことは何かを整理していくと、ブレない心が作られていきます。そうなると最初に説明したような、多様な意見にも肯定的で、前向きにチャレンジする姿勢を持つ“しなやかな人”にもなれるでしょう」

5、“I”=私を主語にして、自分の意見を言えるブレない強さを持っている。

コンプライアンスやハラスメントに敏感になるあまり、つい発言を控えてしまうといった風潮も見受けられる中、内に秘めた強さやブレない芯を持った人が求められる存在になっていく、と山名さん。

「情報過多な時代に生きていると、いろいろな情報に流されて自分の意見がブレてしまいがち。その中でカリスマとなるような魅力を発揮するのは、必要な情報を自分の意思で見極め、選択して突き詰められる人。つまり、しっかりしているとか、強いという意味での“したたかさ”を持った人です。気持ちが定まっていない人は『誰かがこう言っていたよ』とか『こんなニュースを見たよ』など、自分でなく周りがそう言っていたという話し方をしますが、強い芯を持った人は『私はこう思います』と、主語を“I”にして発言することができます」

さらに、自己プロデュース能力の高さも問われるという。

「ただ思ったことを自由に発言していると、いわゆる“炎上”を招きかねません。自分の考えを言う時は言う、言わない時は言わない、と見極めることが重要なのです。しかるべき時に、根拠を持った自分の意見を主張できる人こそが、今求められる強さです。その裏には、自分が確信したことをやり続けるという忍耐力や継続力があり、さらに時代の変化とともに新たなものを恐れずに、率先して取り入れられるという行動力もあるのです」

6、完璧すぎないことが、魅力的な存在であるのに欠かせないラストピース。

「容易に希望を見出せない閉塞的な現代社会の中で、現実離れした並外れた才能を持ち、夢物語を見せてくれる存在は、誰もが認めるヒーロー」としながらも、何もかもを完璧にやり遂げる人が必ずしも魅力的に映るとは言い切れない、と話す田島さん。

「著名人の場合、世界一のパフォーマンスで観客を魅了しながらもプライベートではオタクな趣味を持っているとか、実はかわいいキャラクターが好きだとか、いわゆる“ギャップ萌え”が推し活の一要素ともなりますが、一般社会に置き換えると、“完璧すぎないこと”が魅力を作り出す要素の一つとなるでしょう。例えば、仕事をバリバリこなして成績を上げ、コミュニケーションも上手で、人格者でもある人が、陰では誰にも知られないように一人で悩んでいるとか、あるいはかわいらしいミスをするなど。特に日本人はそのような少し抜けたところや、意外な弱い一面に惹かれやすく、つい守ってあげたくなるような気持ちを抱く傾向にあると思います」

ある一部分に見える弱みは決してマイナスではなく、むしろ人間らしいと評価され、さらに人を惹きつける要素になるようだ。

「完璧なのに何かが足りない…そんな時に意外な弱さはラストピースとなり、圧倒的に魅力的な存在として人を惹きつける完全体になるのではないでしょうか」

山名裕子さん 公認心理師。「やまなメンタルケアオフィス」主宰。ビジネス、恋愛、人間関係などにまつわるストレスケアや、悩みへのカウンセリングを行う一方で、メディアへの出演や公演活動などを行っている。

田島悠来さん 帝京大学文学部社会学科講師。文化社会学の視点から、日本の“アイドル文化”がどのように育まれてきたかなどを分析・研究している。著書に『アイドル・スタディーズ』(明石書店)などがある。

※『anan』2024年3月20日号より。取材、文・若山あや

(by anan編集部)

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