花粉症だと「花粉症手当」がもらえるって本当? 辛いのは分かるけど、通院1回で「5000円」は高すぎませんか?

花粉症手当とは

花粉症手当とは、社員が花粉症で病院を受診したときの医療費や処方された薬の費用に対する手当です。症状がある人の通院や疑わしい症状がある人のアレルギー検査などで活用できます。

花粉症の治療費は、地域にもよりますが1回あたり2000円から3000円程度かかる場合が多いようです。投薬で症状を抑える方法のほか、根治のための舌下免疫療法を受ける場合は定期的な通院が必要で、医療費負担も増えます。そのため、手当を導入している企業では1回あたり約5000円を支給しているようです。

花粉症に苦しむ社員の健康を考慮し、会社で手当の創設を考えている場合は、1回あたりの支給額や支給回数などを細かく決めておくとよいでしょう。

花粉症手当が導入され始めている理由

花粉症手当は、株式会社ラフールや株式会社SRACreativeといった企業で、すでに導入されています。導入理由は、花粉症患者数の増加や社員の生産性向上です。

花粉症の患者数は年々増えています。東京都の調査によれば、都民の48.8%がスギ花粉症の有病者であるとの結果が出ました(図表1)。有病者数は過去の調査と比べて約1.7倍増加しており、花粉症患者が急激に増えていることが分かります。症状のない人もいつ発症するか分かりません。決して他人事ではないのです。

図表1

東京都健康安全センター 花粉症患者実態調査(平成28年度)概要版より筆者作成

花粉症手当があれば、有病者の健康管理ができます。「アレルギー検査でも手当が適用できる」というように制度を細かく決めれば、疑わしい症状が出た職員に検査受診を促すこともできるでしょう。

また、花粉症は社員の生産性低下を招く恐れがあります。第一三共ヘルスケア株式会社の調査では、47都道府県の調査対象者4700人のうち、78.2%の人が仕事や学業に支障や影響があると回答しました(図表2)。

図表2

第一三共ヘルスケア株式会社 「花粉症」が及ぼす影響に関する47都道府県全国調査より筆者作成

業務パフォーマンスが低下すれば、会社の業績にも影響が出ます。花粉症手当を用意し症状を緩和、根治してもらうことで、社員が集中して仕事に取り組めるようになるのです。

花粉症手当は不平等?

花粉症手当は花粉症を患う人にとってはうれしい制度です。しかし、花粉症でない人のなかには、「どうして花粉症の人だけ5000円ももらえるの? 」「風邪を引いても手当はもらえないのに」と感じる人もいるでしょう。

しかし、花粉症手当は、決して不平等な制度とは言い切れません。その理由は以下の2点です。

__1\. 花粉症はもはや「国民病」と呼ばれるほど多くの人が発症している
2. 生産性低下による経済損失は見過ごせない額になっている__

花粉症は、すでに全国的にまん延している病気と言えます。第一三共ヘルスケア株式会社の調査では、全国の半数以上である55.1%の人が花粉症の症状があると回答しています。さらに、症状がある人のうち、66.8%の人は風邪と同じくらいかそれ以上に辛いと回答しているのです。

さらに花粉症は重症化すると、口腔アレルギーやアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。

また、花粉症による生産性の低下が招く日本全体の経済損失は、1日あたり2,215億円と言われています。花粉症に何ら対策をしないと企業の業績に悪影響をおよぼし、自分自身の給料も減ってしまうかもしれないのです。

花粉症手当はマイナスとなっている生産性を標準レベルまで引き戻すための手当であり、単なる手当の上乗せではないのです。

花粉症手当で誰もが働きやすい職場環境に

花粉症手当の導入は、社員の健康管理や生産性の向上に役立ちます。花粉症の有病者数が増えていることもあり、本格的に導入を検討しようとする企業担当者の人もいるでしょう。

花粉症手当は福利厚生の一環です。手当を羨むのではなく、症状への深い理解や社員が気持ちよく働けるメリットに目を向けるのが重要と言えるでしょう。

出典

東京都健康安全センター 花粉症患者実態調査(平成28年度) 概要版
第一三共ヘルスケア株式会社 「花粉症」が及ぼす影響に関する47都道府県全国調査

執筆者:石上ユウキ
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