テニス界の英雄フェデラーが現役で戦い続けるナダルとジョコビッチへの思いを語る「彼らが望む限りはツアーにいてほしい」<SMASH>

現地3月10日にアメリカ・ロサンゼルスで行なわれたアカデミー賞授賞式に出席した男子テニス元世界ランク1位のロジャー・フェデラー氏(スイス/42歳)が、米大手ライフスタイル雑誌『GQ』のインタビューに回答。長年共に男子ツアーを牽引してきたノバク・ジョコビッチ(セルビア/現1位/36歳)とラファエル・ナダル(スペイン/元1位/37歳)に対する思いを語った。

22年9月の「レーバー・カップ」(イギリス・ロンドン/男子団体戦)で輝かしいキャリアを終えたフェデラー氏は、多忙を極めた日々や長らく抱えてきたヒザのケガの不安から解放されたこともあり、引退後は非常に穏やかな時間を過ごせているという。惜しまれながらもプレーをやめる決断を下したことについても特に後悔はないようだ。

「それ(引退)が理にかなったものなら、とても安心したよ。ここ数年はヒザ(の故障)のせいでとても大変だったし、終わりは近いと感じていた。正式に引退してその(第2の人生への)一歩を踏み出したけど、一息ついてから『ああ、よかった』と思えた。なぜならロンドンで別れを告げる時も、それに先立つ(全ての)ことも、(色々な思いから)とても大変なものになるだろうとわかっていたからね」

今はもう「テニスを恋しいとは思わない」と語るフェデラー氏だが、自身と幾多の名勝負を繰り広げたジョコビッチとナダルの動向はしっかりと追っているそうだ。近年はナダルが度重なるケガで苦しんでいることを踏まえつつ、宿命のライバルたちに次のようなエールを送った。
「僕は彼らがどこまで活躍するのかを気にしながら見ている。ラファ(ナダル)がいつ復帰するのか、ノバク(ジョコビッチ)が新たな記録を破るのか、といった具合にね。『この試合は絶対見る』みたいに予定を立てることはないけど、彼らが活躍するのは良いことだ。

今でもテニスを注視しているけど、ラファが思うようにプレーできていないのを見て悲しくなった。彼がドーハ(カタール・オープン)やインディアンウェルズ(BNPパリバ・オープン)を欠場したことは知っているが、期待感は持っている。また彼が競える状態に戻れることを願っているよ」

続けてフェデラー氏は共に“ビッグ4”と呼ばれたアンディ・マリー(イギリス/元1位/36歳)にも触れ、「僕はロンドンの会見でアンディやノバク、ラファやボルグ(スウェーデン/元1位)の隣に座り、『4人の中で最初にキャリアを終えたのは正しい流れだった』と言ったんだ」と引退当時を回顧。最後は改めてこう締めくくった。

「僕はツアーに彼らがいない時期を過ごしたことがあったが、今度は彼らが僕なしでツアーでの時間を過ごす番だ。股関節のケガでリタイアしかけたアンディや、ヒザの故障が原因でラファがもっと早く引退していたら残念なものになっていたと思う。僕が一番初めに現役を終えられたのがうれしかった。彼らが望む限りはツアーにいてほしいね」

確かにジョコビッチ、ナダル、マリーの大ベテランの3人が第一線で輝き続ける姿は、多くのファンが望んでいることでもある。フェデラー氏の言葉通りの状況が今後も続くことを願ってやまない。

文●中村光佑

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