“年間400本”の映画を見るLiLiCoに聞いた「映画館のベスポジ」「ドキュメンタリー映画の魅力」

2024年3月15日より全国6都市で順次開催される「TBSドキュメンタリー映画祭2024」のアンバサダーを務めるLiLiCoさんにインタビュー。ドキュメンタリー映画の魅力や楽しみ方についてお話を聞きました。

“本気のドキュメンタリー作品”に出会える映画祭「TBSドキュメンタリー映画祭2024」は今年で4回目を迎えます。 TBSテレビや系列各局の記者やディレクターたちが歴史的事件や今起きている出来事、市井の人々の日常を熱い思いとともに世の中に発信しており、今年は全15作品が上映されます。 昨年に引き続き、この映画祭のアンバサダーを務めるのは映画コメンテーターのLiLiCoさん。『王様のブランチ』(TBS)の映画コーナーでおなじみのLiLiCoさんにドキュメンタリー映画祭の魅力、映画の思い出や楽しみ方などさまざまなお話を伺いました。

「人生ってこんなにバリエーションがあったんだ」

ドキュメンタリー映画の魅力を熱く語ってくれました!

――「TBSドキュメンタリー映画祭」は今年で4回目ですが、LiLiCoさんは3回目からアンバサダーを務めていますよね。 LiLiCoさん(以下、LiLiCo):本当は、1回目からアンバサダーをやりたかったくらいです。私は昨年、初めてアンバサダーの仕事をいただいたとき、記者会見で映画祭のスタッフに「来年もやらせてください!」とお願いしたんです。 それくらいドキュメンタリーの魅力にハマっていますし、力を入れてやっています。 ドキュメンタリー映画は人生観を変える力を持っているんですよ。「人生ってこんなにバリエーションがあったんだ」と驚くほど面白い。 監督たちはそれぞれ自分なりのテーマを持って、それぞれの人生を映し出している。元気をもらえたり、それはどうなの?と思ったり、感情がすごく動くのがドキュメンタリー映画です。 ――ドキュメンタリー映画はエンターテインメント映画と異なり、シリアスで重いイメージを持っている人も多いと思います。 LiLiCo:実はドキュメンタリー映画は、社会問題や悲惨な現実ばかりを映し出しているわけではないんです。 今回の映画祭の作品で例を挙げると『カラフルダイヤモンド ~君と僕のドリーム~』(監督:津村有紀)は、名古屋を中心に活動する「BOYS AND MEN」の弟分の男性アイドルグループ「カラフルダイヤモンド」の活動を追いかけたドキュメンタリーです。 個人的には恵まれた環境で活動しているグループだなと思いましたが、彼らなりの葛藤があり、それを乗り越えた頑張りも映し出されています。

監督:津村有紀 / (C)TBS

――頑張っている人たちを見ると元気をもらえますよね。 LiLiCo:そうなんですよ。その一方で、『ダメな奴 ~ラッパー紅桜 刑務所からの再起~』(監督:嵯峨祥平)は、人気ラッパー紅桜さんが刑期を終えて出所した後の人生を描いているのですが、私は彼の友だちになれるだろうかと考えさせられました。

監督:嵯峨祥平 / (C)TBS

いくら友だちとはいえ、服役を終えて出所した人を「イェ~イ」と迎え入れることができるのか。ずっと待ち続けた奥さんもすごい。どんな気持ちで待っていたんだろうと。ドキュメンタリーは自分に置き換えて考えられるところも面白いんです。 ――ドキュメンタリーは現実と地続きだからこそ、“自分ごと”としても見ることができるんですね。

憧れの女性も、悪い見本も、全て映画の中にいた

映画が友だちだったスウェーデンでの少女時代を語る

――LiLiCoさんの映画生活についてお伺いしたいのですが、『王様のブランチ』(TBS)ほか、映画に関するさまざまなお仕事の関係で、たくさん映画をご覧になっていますよね。 LiLiCo:年間400本くらいは見ていますね。でも『王様のブランチ』の映画コメンテーターに決まった当初は、それまで映画通のようにたくさん見ていたわけではないので、とりあえずランキングに入っている映画はすべて見て、黒澤明監督、小津安二郎監督など巨匠の作品なども見ました。 昔の作品のリメイクやオマージュ作品も多いので、見ておかないと何も語れませんからね。 ――もともと映画好きだったのですか? LiLiCo:私はスウェーデンで育ったのですが、子どもの頃は、弟に重いぜんそくがあったので、学校が終わったらすぐに帰宅して弟の面倒を見ていたんです。うちはシングルマザーで、母は仕事が忙しかったので、私がやらないといけなくて。 日曜日は母が家にいるので遊んで来ていいよと言ってくれたのですが、普段、学校からすぐ帰宅していたので友だちもいなくて。だから映画が友だちだったんです。 ――今の明るいLiLiCoさんからは想像できないです。 LiLiCo:子ども時代はおとなしかったんです(笑)。スウェーデンでは当時、国営放送しかなかったのでCMがなく、CMは映画館で見るものだったんです。 スターたちが出演するCMを見たり、映画を見たりするのが楽しかった! 現実と違って華やかな世界なので……。きっと現実逃避だったんだと思います。 私は「好きな男の子を見てドキドキ」とか、そういう思春期の経験がゼロなので、スクリーンで擬似体験をしていました。 私にとってドキドキする相手はスクリーンの中の人で、憧れの女性も、悪い見本も、全て映画の中にいました。青春は映画とともにあったという感じです。

スウェーデンで過ごした少女時代に「映画」から強く影響を受けたLiLiCoさん

――スウェーデン映画はラッセ・ハルストレム監督など人気監督がいますし、『ロッタちゃん』シリーズなどかわいい映画もありますよね。 LiLiCo:当時のスウェーデン映画の面白いところは、役にピッタリの人だったら素人でもスカウトしてキャスティングするんです。その1本から俳優になる人もいますが、普通の生活に戻る人もいます。 夢があっていいですよね。街を歩いていたらスカウトされて映画に出演できるかもしれないわけですから。私も昔は「スカウトされるかも!」なんて思いながら歩いていましたよ(笑)。

知らない世界に心を動かされるのが映画の魅力

――映画館や試写室で映画を見るとき、LiLiCoさんのベストポジションの席はどこでしょうか? LiLiCo:スクリーンを正面にして、真ん中より後ろ寄りの通路側で右端の席ですね。仕事柄、試写のときはメモをとりながら見るので。右利きだからできるだけ邪魔にならないように気を付けています。 ――メモを取りながら細かいところをチェックしているんですね。 LiLiCo:男性向けの媒体用に、小物やファッションなどもチェックしますし、中高生向けの媒体には、素敵な大人になるためにこの映画が教えてくれることは何かなど、ヒントになることをメモったりしています。 そもそも私の映画紹介は、映画通向けじゃないんです。金曜日に友だちと遊んで、土曜日ゆっくり起きて、『王様のブランチ』を見て「LiLiCoのオススメの映画、面白そう」と、劇場へ足を運んでくれたらと思ってやっていますから。 「この映画を見るとこういう気持ちになるよ」ということにポイントを置いて映画を紹介しています。

「TBSドキュメンタリー映画祭2024」の会見で語るLiLiCoさん。(C)TBS

――だから映画通じゃない人でも、LiLiCoさんの映画紹介を見ると、「映画を見て元気をもらおうとか、思い切り泣いちゃおう」とか思えるんですね。「TBSドキュメンタリー映画祭2024」もそんな感じで気軽に足を運んでくれたらと思います。 LiLiCo:実は、自分の興味がない世界を描いた映画ほど見る価値があると思います。とてもためになるんですよ。 例えば、私は自転車を持っていないけど、幕張メッセの自転車のフェスティバルを見に行ったとき、大感動したんです。サドルやペダルの種類の豊富さとかデザイン性とかに圧倒されちゃって。新しい世界が開けた気がしました。これがとても大切なことなんです。

「知らないこと、なかなか興味の持てないことを知ることで世界が開く!」と言うLiLiCoさん

知らなかったことに感情が動くのは生きていく上で大切なことだと思います。 今回15本のドキュメンタリー映画が「TBSドキュメンタリー映画祭2024」で上映されますから、きっと皆さんの心に刺さる1本があるはず! そういう出会いを大切にしてほしいですね。

LiLiCo(リリコ)さんのプロフィール

1970年生まれ。スウェーデン・ストックホルム出身。18歳で来日し、1989年から芸能活動をスタート。『王様のブランチ』(TBS)の映画コメンテーターとして出演。メジャー大作からインディペンデントの良作まで独自の視点で映画の魅力を紹介している。『ALL GOOD FRIDAY』(J-WAVE)でナビゲーターを務めるほか、アニメ『サウスパーク』(日本語吹き替え版)では声優としてエリック・カートマン役を担当するなど、俳優、声優の活動もしている。

『TBSドキュメンタリー映画祭2024』会場と日程

(C)TBS

「TBSドキュメンタリー映画祭2024」の会場と日程は以下の通り。 東京 会場:ヒューマントラストシネマ渋谷 日程:3月15日~3月28日 大阪 会場:シネ・リーブル梅田 日程:3月22日~4月4日 名古屋 会場:センチュリーシネマ 日程:3月22日~4月4日 京都 会場:アップリンク京都 日程:3月22日~4月4日 福岡 会場:kino cinema 天神 日程:3月29日~4月11日 札幌 会場:シアターキノ 日程:3月30日~4月11日 撮影・取材・文:斎藤香 <公式サイト> TBSドキュメンタリー映画祭2024 (文:斎藤 香(映画ガイド))

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