「彼以上にふさわしい人物はいない」通算アシスト数で歴代2位のキッドが3位のポールを称賛「競い合うことを愛している」<DUNKSHOOT>

現地時間3月13日、ゴールデンステイト・ウォリアーズは、敵地アメリカンエアラインズ・センターでダラス・マーベリックスに99-109で敗れ、ウエスタン・カンファレンス10位の34勝31敗(勝率52.3%)とした。

ステフィン・カリーが右足首捻挫のため3試合連続で欠場するなか、ジョナサン・クミンガがゲームハイの27得点、アンドリュー・ウィギンズが17得点、5リバウンド、ブランディン・ポジェムスキーが11得点、5リバウンド、6アシスト、4スティール、トレイス・ジャクソン・デイビスが10得点、9リバウンドを記録するが及ばず。

カリーの代役として先発ポイントガード(PG)を務めたクリス・ポールは31分10秒のプレータイムで9得点、4リバウンド、4アシストをマーク。勝利に導くことはできなかったものの、ターンオーバーはゼロとさすがの安定感を見せた。

そのポールが偉大な記録に着々と迫っている。キャリア19年目、38歳の大ベテランは、レギュラーシーズン通算1万1790アシスト、2597スティールでいずれもNBA歴代3位の座にいる。
この2部門でポールの上にいるのは、1万5806アシスト、3265スティールでいずれも歴代トップに君臨するジョン・ストックトン(元ユタ・ジャズ)と、1万2091アシスト、2684スティールでどちらも2位にランクするジェイソン・キッド(元マブズほか)のレジェンド2人。

現在マブズで指揮を執るキッドHC(ヘッドコーチ)は、ウォリアーズ戦前の会見で自身の記録に近づいている“ポイント・ゴッド”についてこう話していた。

「私の記録を超える上で、これ以上の選手はいない。彼は(将来に)殿堂入りするキャリアを送ってきた。PGのポジションについて語る時、彼はまさに成功の青写真を指している。チームを率いたベストな1人として語り継がれていくだろう」

ポールは今季、41試合の出場で平均27.1分、9.3点、3.9リバウンド、7.0アシスト、1.29スティールを記録。アシストとスティールではチームトップに立っている。

レギュラーシーズン残り17試合にフル出場した場合、計算上アシストは1万1909本、スティールは2618本になるため、今季中にキッドの記録を上回る可能性は低いと言わざるを得ない。

とはいえ、5月に39歳を迎える司令塔は、今も所属チームにとって貴重な存在であることに変わりない。来季も現役を続行するとなれば、アシストとスティールの2部門で歴代2位へ順位を上げることだろう。 そんなポールという選手について、キッドHCは「数多くの若い選手たちが彼のことを尊敬していると思う。負けず嫌いで大きなハートを持ち、競い合うことを愛している。彼が恐れることはないんだ。アシストで私の記録を超える者として、彼以上にふさわしい人物はいない」と称えていた。

これまで過ごした5球団すべてで先発PGを務めてきたポールにとって、ウォリアーズは特殊な環境にある。PGにカリーがいるとはいえ、長時間ボールを保持してプレーメーキングするわけではなく、持ち前のシュート力を存分に発揮するべく、オフボールで動き回ってドレイモンド・グリーンからパスを受け取り、イージーショットを決めるなどオフガードの側面も持つからだ。

そのことを十分に理解しているウォリアーズのスティーブ・カーHCはこのように話す。

「彼のような選手はそう多くない。今のリーグではステフが多大な影響を与えていて、クリスのような従来のPGと比較すると、シュート力が重要な要素となっているからね。だから彼(ポール)は絶滅しかけているタイプの選手なんだ」
現在カリーをケガで欠くウォリアーズにとって、ポール以上に安心してプレーメーキングを託せる選手はいない。3ポイントとドライブが重宝される現代バスケットボールで、ポールのプレースタイルは少数派となってしまったものの、カーHCはその重要性をこう指摘していた。

「これから先も、パス・ファーストのPGを生み出すことはできるだろう。それは彼らが試合へ数多くのものをもたらしてくれるからだ。もちろん、クリスは長い間、そのスキルでトップに立ってきた」

ゲームを読み解く洞察力やチームメイトの得点機会を演出する巧みなパス捌き、的確なタイミングで着実に決めるジャンパーなど、ポールはリーグ史に名を残す司令塔としてそのキャリアを積み上げてきた。

プレーオフ進出圏外にいるウォリアーズを浮上させるべく、39歳の大ベテランは終盤戦も豊富な経験を駆使してタクトを振り続けるだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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