旧高野家4件登録へ 昭和初期の庵や文庫 文化審答申 岩手・奥州

旧高野家住宅古稀庵(奥州市教委提供)

 国の文化審議会(佐藤信会長)は、15日に開かれた文化財分科会で、幕末の蘭学者、高野長英(1804~50年)にゆかりのある奥州市水沢字大畑小路にある「旧高野家住宅古稀庵」など旧高野家に関係する4件の建造物を登録有形文化財(建造物)に登録するよう文部科学相に答申した。建物4件は、長英が亡くなった後に建てられた古稀庵、新座敷、板倉、瑞皐文庫。関係者は、長英の生誕220年を迎える今年、顕彰活動の弾みになると答申を喜んでいる。

 建物4件のうち、1931(昭和6)年に建てられた古稀庵は、長英が暮らしていたとされる国史跡・高野長英旧宅(1933年指定)の東隣にある。長英の子孫、高野長運氏の70歳をお祝いして建築された。意匠を凝らした水屋や便所、小座敷など生活用の部屋がある。

 新座敷は、旧宅と古稀庵の間にあり、41年(昭和16)年ごろの建設とされる。渡り廊下で古稀庵に隣接し、九畳半と八畳の部屋があるほか、折り上げ天井や窓ガラスに繊細な組子があるなど独特の意匠が特徴。

 長英の雅号を用いた瑞皐文庫は、長英の名誉回復のために子孫が長英の功績を記した資料を保管するために32(昭和7)年に建築した。収めていた書物は高野長英記念館に移管され、うち58点は国の重要文化財に指定されている。

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