墓修復、間に合わず 県内石材店、依頼数千件

震災で墓石の多くが倒壊した氷見市営村上墓地=同市朝日丘

  ●17日彼岸、諦めの声も

 富山県内の石材店が能登半島地震で倒れた墓石や灯籠などの修復に追われている。春の彼岸入りを17日に控えるものの、数が多すぎて間に合っていない。修復件数は数千件レベルで、墓の所有者からは「今年ばかりは仕方がない」と諦めの声が漏れている。

 山岡石材店(高岡市)には高岡、氷見市内だけで2千件以上の修理依頼が来ている。石川県にも事業所があり、担当者は「最終的に依頼がどれだけの件数になるか想像も付かない」と話す。能登では多くの人が避難生活を続けており「まだ墓のことまで考えられないだろう」と胸中を推し量った。

 職人20人がフル回転で修復を急ぐが、終了のめどは立たない。顧客から彼岸の墓参りを諦める声も聞かれ、担当者は「それでも何とか早く直したい」と語る。

 萩石材(砺波市)では市内だけでなく、南砺、小矢部、氷見から墓石の修理依頼が約50件寄せられた。氷見では「直してもまた地震で被害に遭うかもしれない」と砺波に墓を移すことを考える人もいたという。

 約100件の依頼に対応しているのは石森石材(砺波市)。担当者は「年末か来年になってしまうかもしれない」と苦慮する。市によると、青山・赤坂霊苑の墓石や灯籠などの倒壊は91件に上るという。

 石材店の対応が追いついていない現状に、氷見市では諦めて墓じまいする市民も出ている。4月に東原墓地公園の敷地に開設された合葬施設には、震災後に26件の遺骨収納の申し込みがあった。

 市営村上墓地では455区画のうち、半数以上で墓石が倒壊。被害が拡大しないようにブルーシートで覆われた区画も目立つ。

 墓石が隣の墓に倒れたという60代の男性は、何社も断られながらようやく市外の業者に修理してもらえることになったが、隣の墓の所有者は見つからず、謝罪ができないままで、「申し訳なく、1日も早く元に戻したい」と話した。

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