さよならサンダーバード、しらさぎ 惜別、感謝乗せ「石川発」

金沢発の最後の特急を見送ろうとホームに詰め掛けた鉄道ファン=15日午後8時45分、金沢駅

  ●県内各駅ファン詰め掛け

 琴が奏でる発車メロディーに、駆け付けた多くのファンの惜別と感謝の思いが乗った。北陸新幹線敦賀延伸に伴って第三セクターに経営移管される北陸線は15日、石川県内最後の運行日を迎えた。金沢駅のホームには、特急「サンダーバード」「しらさぎ」などの最終便を、カメラやスマートフォンに収めようと人だかりができた。「さよなら」「ありがとう」。関西、中京に向かう石川の足として親しまれた車両は大きな拍手に送られ、金沢をたった。

  ●最終便に合わせセレモニー 金沢

 金沢駅での「さよならセレモニー」は午後8時6分発のしらさぎ66号、午後8時47分発のサンダーバード50号に合わせて行われた。鉄道ファンら約500人が詰め掛け、対岸のホームも人でいっぱいに。午後8時29分、ホームにサンダーバード50号が入ってくると、ファンは一斉にカメラを構え、写真や動画に収めた。「さよならサンダーバード」と記した自作の旗を振る子どもも見られた。

 この便で息子の映斗ちゃん(4)と小松駅まで行くという会社員中村美紀さん(47)=小松市=は「子どもの幼稚園からの帰り道に特急を見るのが日常だった。今までありがとうと伝えたい」と惜しんだ。

 セレモニーでは、JR西の漆原健金沢支社長、村山卓金沢市長があいさつ。両特急の運転士と車掌に花束が贈られた。宮下良和金沢駅長が「出発進行」と力強く最後の合図を出した。

 サンダーバードは1997年3月、大阪-富山間で64年から走っていた「雷鳥」の後継として運転が始まった。

 16日からサンダーバードは敦賀―大阪間、しらさぎは敦賀―名古屋・米原間の運行となり、石川県内から姿を消す。金沢-福井間の「ダイナスター」など三つの特急も運行を終え、石川県内を走る特急は金沢―和倉温泉を走る「能登かがり火」のみとなる。

  ●横断幕に「ありがとう」 和倉

 七尾市の和倉温泉駅でのセレモニーにも全国から鉄道ファンが詰め掛けた。「ありがとうサンダーバード」の横断幕が掲げられ、大阪などからの多くの観光客を温泉地に運んだ列車の最後の雄姿を見届けた。

 午前10時13分、約250人を乗せたサンダーバード20号が動きだすと、茶谷義隆市長らが手を振った。津幡町の公務員長崎公貴さん(24)は「七尾線を走るサンダーバードは当たり前の存在だった。なくなるのはさみしい」と乗り込んだ。

 大阪―和倉温泉間の直通列車の誘致に取り組んだ和倉温泉観光協会・旅館協同組合顧問の小田禎彦さんは「サンダーバードにはお世話になった」とさびしげ。地震で全旅館の休業が続くが「和倉を必ず復活させ、新幹線の効果を呼び込みたい」と力を込めた。

 停車駅の羽咋駅では、羽咋市の酒井正則さん(73)が「能登復興のためにも大型連休やお盆には直通の特急があっていい」と臨時列車での復活に期待した。

  ●ボンネット広場で見守り 小松

 小松駅に近接する小松市の土居原ボンネット広場では、鉄道愛好者でつくる「北国(きたぐに)鉄道管理局」のメンバーらが、目の前を通過する特急を見守った。

 常務理事の中田賢宏さん(47)=同市不動島町=は旧国鉄の駅長時代の制服を身に着けて高架を見上げ、「寂しいが、新時代が来る。歴史的な瞬間に立ち会えてうれしい」と話した。代表理事の岩谷淳平さん(48)=同市下牧町=は「特急がなくなることに、まだ実感が湧かない」と悲しそうに語った。

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