山﨑賢人「羽生結弦さん意識してます?」主演作『陰陽師0』アクション監督語る意外反応

(写真右:スポーツニッポン新聞社/時事通信フォト)

平安時代に実在した“最強の呪術師”とされている安倍晴明。彼の若き日を描いた映画『陰陽師0』が4月19日より全国で公開される。

本作の見どころのひとつが、壮大なアクションだ。今回、アクション監督・園村健介さん(43)に、主演の山﨑賢人さん(29)と作り上げたアクションや、参考にしたという羽生結弦さん(29)について語っていただいた。

――今回、“安倍晴明生誕1100年”を記念した作品で、山﨑賢人さん主演で若き安倍晴明を描く、それを聞いただけですごくワクワクしますね。

「そうですね。自分はアクションシーンしか関わっていないですが、セットも豪華で、すごいなと思いながら見ていました」

――本作のキックオフイベントで、山﨑賢人さんが「晴明の人間離れした動きを表現するために、重力を感じさせないアクションに挑戦しました。アクション監督である園村健介さんが、羽生結弦さんの演技を見て着想を得たとおっしゃっていました」と話していたことについてお聞きしたいです。園村監督が羽生さんを参考にしようと思ったきっかけを教えてください。

「羽生さんが『SEIMEI』というプログラムで、昔の映画『陰陽師』の安倍晴明役・野村萬斎さんの動きを取り入れていたのが頭の片隅にあって。

暴力的にならずに追撃をかわしていくというアクションを構成するうえで、色々なイメージを想像したんです。マタドール(闘牛士)的なものとか。でも縦横無尽に動き回っていて、最も日本らしさ・晴明らしさがあるのは、フィギュアスケートだなと。滑りのニュアンスをアクションに取り入れたら、より面白くなるかなと思いつきました」

――羽生さんの『SEIMEI』は何度もご覧になったのでしょうか?

「はい。基本的には、動きをトレースするというよりは、華麗な雰囲気のヒントとして見せていただきました。強いて言えば、羽生さんは、くるくる回って助走をつけてから、ジャンプを跳ばれますよね。そのやり方は、予告にもある、高い靴を履いた山﨑さんが回転しつつ追手から逃げるシーンの参考にしました」

――術に入るとき、山﨑賢人さんは左手で印を結びますが、あれも羽生さんを参考にしているのですか?

「そこは呪術の専門の先生がやってくださいましたね」

――他に監督が担当されたアクションは?

「竜の幻と戦うところなど、大きい動きのある場面は立ち会わせていただきました。あとは僕らの仕事として、役者の方々が怪我をしないよう安全管理もしました」

――撮影で苦労されたところはありますか?

「やっぱり、さきほどもお話しした山﨑さんが回るシーンですかね。呪術っぽい、CGを使うアクションが多い中でも、ここは肉体的な躍動感で魅せるシーンなので、一番大変でした。撮影本番は3日間ぐらいでしたが、リハーサルは約2カ月前から重ねていました」

――稽古はどういう風に進められたのでしょうか?

「まず、僕らやスタントマンが実際に動いてビデオコンテを作ります。佐藤嗣麻子監督からOKがでたら、今度は役者さんに見せて教えます。ワイヤーなど、特殊な技術が必要なものもあるので、山﨑さんに練習していただきました」

――山﨑さんが「重力を感じさせないアクション」とおっしゃっていたシーンですね。ちなみに、監督が“羽生さんから着想を得た”という話を山﨑さんにされたときは、どんな状況でしたか?

「さっき話したビデオコンテを山﨑さんに見ていただいたときに、実は山﨑さんのほうから質問されたんですよ。僕が言う前に、映像を見て『これ、羽生さん意識してますか?』って」

――山﨑さんが気づかれたんですか!

「そうなんです。山﨑さんも『SEIMEI』は覚えていたんだと思います。『よくわかりましたね』と話しました」

――どこをご覧になってそういう風におっしゃったんですか?

「全体的にだと思いますね(ビデオコンテを見せながら)」

――たしかに、本当にアイスリンクの上で動いているみたいですね。フィギュアのスピンやイナバウアーに似た動作もあります。山﨑さんは他になにかおっしゃっていましたか?

「こんなに大変とは思っていなかったみたいで、『台本よりもアクション多いんですね』って驚いていました(笑)」

――こういうのは1日どのくらい稽古をするものなんですか?

「休憩を挟みつつ、3~4時間やっていました。撮影と並行して、その合間を縫って2カ月間練習しましたね。2年前のことなので正確には覚えていませんが……。

その日、ビデオコンテを見て、お互いの共通認識はもう固まったんですよね。山﨑さんは、『キングダム』や『ゴールデンカムイ』など、どちらかというと感情を表に出すようなアクションが多かったんですけど」

――感情を爆発させるような感じですね。

「はい。今回はミステリアスなアクションで、質が違ったので、『ちょっとギアを変えないとな』と言っていました」

――すごいですね。やっぱりそういう風にお考えになるんですね。なにか、園村監督から注文されたことはありますか?

「『あまり感情が出ていないように見える動きで』とは常に言っていました」

――難しそうですね。

「そうなんですよ。身体は躍動感が必要ですが、感情は抑えなきゃいけないという、すごく難しいことを。それに多分、呪術は指の形まで結構細かいので、指先まで気遣いながらやっていたと思います」

――そこもフュギュアスケートのようですね。

「はい。似てる感じがすごいしましたね」

――撮影のためにやっぱり体を鍛えたりとか?

「していると思います。陰陽師にはない動きなんですけれども、うちのスタントマンを捕まえて、自分でミットとグローブを持ってきて、休憩時間にミット打ちとかやっていました。遊びの延長ではあるんですけど、『ちょっとパンチ教えてください』って」

――練習でもあり遊びでもあるんですね。

「体を動かして、身体操作のスキルを上げたいのだろうと思います」

――山﨑さんが一番苦労されたと思うところは?

「ワイヤーアクションですかね。一般の方が想像するよりすごく難しい技術なので、1個の技をずっと練習していることもありました。今回の場合、空中フォームの美しさが必要だったり、着地もあまりぶれちゃいけなかったりとか、さらに難しかったと思います」

――着地もぶれないって、本当にフュギュアスケートみたいですね。

「はい(笑)」

――監督としては、山﨑さんのアクションの出来映え点は?

「想像以上でした。100点以上ですかね(笑)」

――すごいですね。山﨑さん自身も満足されていましたか?

「比較的みんな満足して、“次のカット撮ろう”と進んでいきました。

ただ納得がいかなくてやり直すシーンも多少はありましたね。人を蹴って空中で回転して、そのまま着地するみたいなカットがあったんです。着地と回転が両方ともうまくいくまで繰り返していました」

――映画、楽しみですね。そういえば今回、山﨑さんが羽生さんのお名前を出したことで、羽生さん側から反応はありましたか?

「自分のほうには特にないですが、SNSで触れてくれた羽生さんのファンは結構いらっしゃいました。羽生さんが直接この作品に関わったわけではないですが、羽生さんのファンの方々も見に来てくれたらうれしいです」

――撮影をしていて、羽生さんと山﨑さんの間になにか共通点は感じましたか?

「シルエットがシャープで、安倍晴明のイメージに適しているところですかね。山﨑さんは役に合わせて体型を調整していて、『陰陽師0』が終わって、『ゴールデンカムイ』の撮影ではかなり筋肉をつけていました」

――なるほど。素の山﨑さんってどういう方ですか?

「すごく面白いですね、ジョークも結構言いますし、僕らアクション部の人間に対しても、すごくフレンドリーに接してくれます。一緒にいる時間が長かったので、会話もたくさんしました。現場全体の雰囲気が和やかで、楽しく撮影していた記憶があります」

――陰陽師という題材でこだわったところは?

「江戸時代などに比べて、平安時代を描いた映画は少ないのもあって、衣装が普段の時代劇とは違いましたね。(山﨑さんが履いていた高い)靴もそうで、やっぱりアクションにも影響しちゃうんで」

――動きづらいですよね。それに慣れるのも大変だったんじゃないですかね。

「袖がとても長くて、アクションで絡んじゃうこともあるので、『これ用の動き方を考えないといけない』みたいなことは山﨑さんも言っていましたね。

他の作品だとジャージでリハーサルをするんですけど、今回は袖のさばき方なども考えて、仮の衣装を着用してアクションを練習していました。大きく手を振ると顔にかぶっちゃったり、烏帽子が思ったより高くてぶつかっちゃったり」

――皆さんのご苦労が詰まった作品ですね。これは是非、羽生さんにも……。

「羽生さんにも観ていただきたいですね、おこがましいんですけど(笑)」

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