味・歴史を比較!福井と長野の「ソースかつ丼」地域で愛され群馬や福島でも 北陸新幹線延伸企画

ソースかつ丼の味や歴史を掘り下げてみた

特集は、新幹線で結ばれる福井県の「グルメ」です。きょう16日、北陸新幹線の金沢―敦賀間が延伸開業。長野から福井までは最短1時間30分ほどで結ばれます。注目するのは、福井県民が愛するソースかつ丼です。ソースかつ丼は長野や群馬、福島でも、地域の名物になっています。味や歴史を掘り下げてみました。

福井駅

福井県民におすすめのご当地グルメを聞いたところー。

おすすめのご当地グルメは?

小浜市民:
「ソースかつ丼がおいしい」

福井市民:
「ソースかつ丼とかもおいしい」

多くの県民がソースかつ丼を挙げました。

さらにー。

坂井市民:
「ソースかつ丼、ヨーロッパ軒です。みんな好きだと思います」

中央にあるのがJR敦賀駅(敦賀市)

評判の「ヨーロッパ軒」に行ってみることに。向かったのは日本海に面した敦賀市。

駅は当面、北陸新幹線の終着駅となります。

敦賀ヨーロッパ軒

市街地に建つ、ちょっとレトロなビル。

こちらが「敦賀ヨーロッパ軒」です。

敦賀ヨーロッパ軒

昼はご覧のにぎわい。

「お待たせしました。カツ丼3つですね」

カツ丼(990円)

ソースかつ丼は3枚のカツが乗っていてかなりのボリュームです。

滋賀から:
「サクサクでおいしかったです」

大阪から:
「めちゃくちゃおいしい。想像していた8倍くらいうまい」

「安定の味ですね」

地元出身者は懐かしさを求めてー。

坂井市出身(大阪在住):
「安定の味ですね。(縁起を担いで)部活前、大会前はこればっか食べて」

敦賀市出身(東京在住):
「この味が懐かしくて。東京だと卵が入ったりとかするでしょ。だからあれはトンカツではないかと思った、最初はね」

パリ丼(990円)

地元では豚カツではなくミンチカツを乗せた「パリ丼」も人気です。

敦賀市民:
「うちはこれ一番やと思っとるし、銀座に出しても負けんくらいやと思っとるよ」

揚げてのトンカツ

3代目の赤坂敬造社長が作っている様子を見せてくれました。

肉はやや薄目にカットした豚ロース。小麦粉、卵、きめ細かいパン粉をつけてラードを溶かした油へ。

敦賀ヨーロッパ軒・赤坂敬造社長:
「(肉はあえて薄く?)かみ応えを残しながら、ソースが一番絡みやく」

長年継ぎ足したソース

味の決め手は長く継ぎ足しで使われてきたソース。ご飯にもかけておきます。

敦賀ヨーロッパ軒・赤坂敬造社長:
「ウスターソースにいろいろ調味料を入れて、それを継ぎ足しで、創業84年たつのですが、ずっと継ぎ足し継ぎ足しでやっている」

カツ丼

揚がった「かつ」をくぐらせ、ご飯に乗せたら完成です。

記者が試食

(記者リポート)
「豚肉が薄くてとても食べやすいです。ソースが良く絡んでいてとてもおいしいです」

敦賀ヨーロッパ軒・赤坂敬造社長

敦賀ヨーロッパ軒・赤坂敬造社長:
「県外に出たお客さんは懐かしいといって食べてくれるし、たまに会う客にも『1週間に1回ぐらい食べないと』と言われる時もあるので、うれしい。歴史があるので100年目指して頑張っていきたい」

高鼻増太郎さん(提供画像)

店のルーツは1913(大正2)年までさかのぼります。

福井出身の高畠増太郎さんが東京でヨーロッパ軒を創業。ソースかつ丼を出すようになったとされています。

その後、店は関東大震災を機に福井に移転しました。

敦賀ヨーロッパ軒・赤坂敬造社長:
「初代の高畠増太郎さんが、ドイツとかに船に乗っていって、そこでいろんなことを学んで、カツレツが向こうでは主流でそれを日本風にアレンジしてかつ丼にした」

赤坂耕二さん(提供画像)

1939年・昭和14年、弟子の赤坂耕二さんが「のれん分け」を許され、敦賀に「分店」を開き後に「敦賀ヨーロッパ軒」と称するまで発展。

ヨーロッパ軒 総本店

現在、福井県内には総本店を含め19店舗のヨーロッパ軒があります。

敦賀ヨーロッパ軒・赤坂敬造社長:
「(延伸で)東京の客とか、長野とかすごく近くなったので、来てもらったら一番いいですし、かつ丼以外にもパリ丼というのがあって、ミンチカツなのですけど、地元ではすごい人気があるので、それもできれば食べてほしいですね」

明治亭 駒ヶ根本店

一方、ソースかつ丼は信州にもー。

こちらは駒ヶ根市に本店を置く「明治亭」。

ロース ソースかつ丼(1630円)

厚い肉とご飯の上のキャベツが特徴です。

ロース肉を180度の油で7分近く揚げてー。

トマトや果物を使った特製ソースに浸します。ご飯の上にたっぷりと千切りキャベツを盛り、肉を乗せれば完成です。

キャベツも山盛り

市内から:
「月に1度は来るね。キャベツも山盛りだし、これがいいね。肉も柔らかい」

長野市から:
「すごく肉厚でキャベツもシャキシャキしていてソースも相まってすごくおいしい」

ロース ソースかつ丼(1630円)

駒ヶ根で名物になったソースかつ丼。

明治亭の片田社長によると始まりは昭和初期で、都内の洋食店で提供された料理に着想を得たのではということです。

明治亭・片田秀昭社長

明治亭・片田秀昭社長:
「昭和の初期というふうには聞いているが誰がというとわからない。カツレツをひとつの料理としてキャベツと合わせて提供したのは東京の『煉瓦亭』が一番最初。そこから影響を受けたものが、駒ヶ根に来たらどんぶりの上に乗ってしまったと思う」

ソースかつ丼が名物の地域

1993年には地元の飲食店が「駒ヶ根ソースかつ丼会」を結成。PRにも力を入れてきました。新幹線延伸による交流人口の増加に期待が高まります。

明治亭・片田秀昭社長:
「あの辺の皆さんが長野県に来ることが便利になった、近くなったことは間違いないので、もう一歩足を延ばせば駒ヶ根もいけるぞということは、きっとあるかと思うので楽しみにしている」

ソースかつ丼は福井、長野の他に群馬県桐生市、福島県会津若松市でも名物になっています。発祥はさまざまですが、洋食の影響を受けたものと考えられ、今回の取材では福井のヨーロッパ軒が最も長い歴史がありました。

左:片田社長(明治亭)、右:赤坂社長(敦賀ヨーロッパ軒)

ところで、敦賀ヨーロッパ軒の赤坂社長も、明治亭の片田社長もやはり気になるようでそれぞれのソースかつ丼を食べたことがあるそうです。

敦賀ヨーロッパ軒・赤坂敬造社長:
「おいしかったですよ。こっちと違った味ですし、キャベツのっていて。ちょっとキャベツが食べづらいなと思って、自分的にはね」

明治亭・片田秀昭社長:
「当然、気になりますので私も何回か。ちょっと僕らの思ったソースかつ丼は違う。(ヨーロッパ軒は)和風なあっさり系でどちらかと言えばわれわれの方が洋風かな」

左:「明治亭」のソースかつ丼、右:「敦賀ヨーロッパ軒」のソースカツ丼

にじみ出る、それぞれのソースかつ丼に対する自信とプライド。

新幹線延伸を機に自慢のソースかつ丼を食べ比べてみてはいかがでしょうか。

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