確認を忘れると大きなトラブルにも…プロが教える「引っ越し手続きの落とし穴」あれこれ

進学や就職、異動などで引っ越しをする人が多くなるシーズンです。トラックドライバーの時間外労働規制による人手不足、いわゆる「2024年問題」で希望する日に引っ越しができないトラブルが発生するなど、引っ越す人にとって、今年の春は何かと忙しくなりそうです。引っ越し作業に掛かりっきりになり、忘れてしまいがちな手続きや確認事項、やっておくとその後のトラブルを防ぐことができるポイントを、静岡市葵区の常不動産社長、山田常夫さんに聞きました。

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火災保険解約では返金も

まずは、引っ越す前の準備です。電気、ガス、水道や、インターネットの解約は気が付きやすいのですが、火災保険や家賃保証会社も解約手続きが必要です。山田さんは「火災保険は解約すると残りの期間に応じて返金があるのですが、忘れる人も少なくありません。契約書を見返しましょう」と指摘します。

解約時、家賃の日割りができない物件もあります。その場合、引っ越した後も前の部屋の賃料を支払わなければなりません。一方、敷金精算のために退去立会いする不動業者を呼ぶ前に、室内をきちんと掃除しておくと、見積もりが"甘くなる"可能性もあります。

敷金とは家賃の滞納や原状回復などの費用にするため大家が事前に回収する金のことです。以前は、大家の立場が強く、経年劣化した壁紙の交換など本来大家が負担すべきなのに、敷金の大半か、敷金以上の費用を要求されるトラブルが多発し社会問題化していました。しかし「敷金については『東京ルール』が静岡でも浸透してきているので以前ほど大家が有利な精算とはなっていません」と山田さんは説明します。

「東京ルール」浸透で減った退去トラブル

「東京ルール」は東京都が2004年に設けたガイドライン(賃貸住宅紛争防止条例)で、退去時のトラブル防止を目的に定められました。ガイドラインでは家具や家電の配置による床のへこみ、太陽光による壁や床の日焼けなど、通常の生活で起こる部屋へのダメージは大家の負担、家具や家電を引きずってできた傷、液体をこぼしてできたシミなどは借り手の負担、とそれぞれの責任の範囲を明確にしています。入居時に不動産会社が借り主に説明することで、退去時のトラブル予防になるために全国で導入されているということです。

要注意!不必要な「付帯商品」のセールス

それでは、入居前や契約時に確認しておきたいポイントはなんでしょうか。「賃貸大手フランチャイズ店がセールスしてくる『付帯商品』には注意が必要です。消臭抗菌サービス、浄水器リース、害虫駆除サービスなどさまざまですが、自分に必要のないサービスを外せるか確認しないと、いらないサービスにお金を払うことになります」と山田さん。

消毒抗菌サービスに関しては2018年北海道で、顧客から代金を受け取っておきながら使用しなかったスプレー100本以上を不動産事務所で処分中に爆発させるという事故が起きています。

また、契約期間を過ぎても住み続けたい場合「更新料」を要求される場合があります。これは大家の手間賃や仲介業者の一時収入といった性格が強く、関西の一部では更新料がない地域もあるそうです。法律で定められた支払い義務はありませんが、契約書に明記されている場合は支払う必要があります。

逆に、予定より早く退去する場合「短期契約違約金」が発生するケースもあります。こちらも物件によるので、契約書の確認が必要です。

電気が開通せずタワマンでキャンプ生活した人も?実際のトラブルあれこれ

引っ越しにまつわる想定外のトラブルのいくつかを山田さんが披露してくれました。「まずは東京から静岡市のタワーマンションに転居した方に起きたトラブルです。入居日の開通を依頼したにも関わらず通電されていませんでした。困った末に会社の発電機を貸し出し、キャンプ用のランタンでしのいでいただいたことがあります」立会の必要がないものは、入居より数日前の開通に設定したほうが良いそうです。

ほかにも、備え付けのエアコンのリモコンを持っていってしまう人や、逆に自分で設置したエアコンの室外機を忘れて引っ越してしまった人もいたそうです。意外なところでは洗濯機置き場の「エルボ」(洗濯機と排水口をつなぐL字の短いパイプ)を持っていってしまう人が多いとのことですが、これは部屋に付属しているため置いていくのが正解です。

入居後はすぐに設備を確認、不具合は管理会社へ

入居したら、家具を配置する前にやることがあると山田さんは強調します。「カギ、窓、トイレ、風呂など設備に気になる点があったらすぐに管理会社に連絡し、交換、補修をお願いしましょう。

不具合があるまま使い始めると自分が修理代を負担することにも成りかねません。補修に応じてくれない軽微な不具合は写真を撮っておくと退去時に役立ちます」とアドバイス。新生活を気持ちよくスタートさせるためにも、契約書の確認は念入りに、と話しています。

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