『涙の女王』“ロマコメキング”キム・スヒョンが帰還! 『愛の不時着』との繋がりも

Netflixで3月9日より配信がスタートした『涙の女王』が、早くも大ヒットのレールを走りだしている。配信の翌日には、Netflixの世界ランキング(非英語シリーズ)に8位で初登場し、翌々日には日本、韓国ともに首位を獲得した。

『涙の女王』は、主演が人気スターのキム・スヒョンとキム・ジウォンであり、脚本は『愛の不時着』で日本に第4次韓流ブームを巻き起こした大ヒットメーカーのパク・ジウン。監督を務めるのは、今俳優たちが最も仕事をしたい1人と言われるヒットメーカーで、『ヴィンチェンツォ』を世に送り出したキム・ヒウォン(チャン・ヨンウ監督との共同演出)ということで、放送前から話題になっていた。

ロマンティックコメディのキングであるキム・スヒョンがロマコメに帰ってくるのは、2020年の『サイコだけど大丈夫』以来4年ぶりとなる。キム・スヒョンは、1988年2月16日生まれで、小さなころは心臓病を患っていたこともあり、内向的な少年だったという。そんなキム・スヒョンを心配した母親から演技を勧められ、演技学院に通いだす。そして、高校1年生の時に、シェイクスピアの代表作『真夏の夜の夢』妖精パック役で初めて演技を行う。その舞台で彼は、ステージ上で感じた喜びの経験から演技の世界へと本格的に歩みだす。

その後、2007年にシットコムドラマの『キムチ・チーズ・スマイル』でデビュー。天然パーマの髪をオーディションで面白いと気に入られての抜擢だった。この頃の彼の笑顔や表情、眼差しは今も全く変わらない。2009年の『クリスマスに雪は降るの?』の子役としての演技が評判となり、その演技を見たペ・ヨンジュンとの縁で、2011年『ドリームハイ』に出演。ライジングスターとして人気を得る中、2012年に『太陽を抱く月』で大ブレイク。続く2013年に、本作の脚本を手掛けたパク・ジウン作の『星から来たあなた』の大ヒットにより世界的スターとなる。

キム・スヒョンが出演する作品は、ドラマのみならず映画でも多くの作品がヒット作品となり、キム・スヒョンが出演するだけで世界的な注目を浴びる。キム・スヒョンは、なによりもその眼差しが特徴的だ。瞳の奥に広大な銀河が広がっているような、吸い込まれそうになる眼差しなのだ。さらにスポーツ万能で、自分が漕いでいる自転車から飛び降りてまた飛び乗ることができるほど運動神経も抜群であり、プロボウラーを目指して資格試験を受験するなど、鍛えられた見事な肉体を誇る。ソフトなビジュアルから低音のイケボを発し、シリアスもコメディも演じることのできる、まさに“ロマコメキング”が帰還したのが喜ばしい。

そんなキム・スヒョンが本作では、財閥家の婿役を演じている。妻を演じるのは、こちらも大人気スターのキム・ジウォンだ。キム・ジウォンも数々の出演作品があり、ロマコメクイーンとして人気を博したパク・ソジュンと共演の『サム、マイウェイ~恋の一発逆転!~』やソン・ジュンギと共演の『アスダル年代記』、チ・チャンウクと共演の『都会の男女の恋愛法』など人気俳優との共演が相次いでいる。2022年には、ヒット作となった『私の解放日誌』にも出演した。本作では、勝気で冷徹な様子を見せながらも、不器用に夫ペク・ヒョヌへの愛を抱く財閥令嬢で、クイーンズデパートの社長ホン・ヘインを演じる。

物語は、地方の名士の息子であり、ソウル大卒で弁護士のヒョヌと、財閥クイーンズグループの令嬢であり、クイーンズデパート社長のヘイン夫婦の愛の変化を描いていくものだ。第1話、第2話は、ヒョヌとヘインが熱烈な恋愛を経て結婚したものの、3年が経過し、夫婦仲が冷めているところから始まる。財閥に婿入りしたヒョヌは、ヘインと結婚したことで、財閥クイーンズグループの法務理事であり、クイーンズデパートの法務チーム長としてヘインに仕えていた。ヒョヌは周囲から、ヘインに夫ではなく執事扱いされていると噂されるような日々を送るなかで疲弊し、夫婦関係を終わりにしようと考えていた。ヒョヌは、離婚を決意し、ヘインに伝えることにする。

本作のオープニングは、ヒョヌとヘインの誕生からそれぞれが違う場所で成長し、出会い、恋に落ちてふたりの距離がぐんと縮まり、夫婦となりふたりの距離が大きく離れる中、ヘインの身に冬が訪れ、ヒョヌが彼女の元へ走り抱きしめるーー。という一連の流れが映画のように流れるという演出で、これを観ただけで涙腺が刺激されてしまう。本作の全てがこのイントロに込められているようだ。

その感動的なイントロから、物語の序盤でヒョヌとヘインが世紀の結婚を果たす美しいシーンの演出に目を奪われる。『愛の不時着』カップルのヒョンビンとソン・イェジンが挙式した場所として有名な、グランドウォーカーヒルソウルでの結婚式をドラマ内でオマージュするなんて! と感激した(他にもペ・ヨンジュンとパク・スジン、チソンとイ・ボヨン夫婦などもこの場所で挙式している)。

また、『愛の不時着』からカメオ出演があったり、キム・スヒョンと『サイコだけど大丈夫』で兄弟役で共演したオ・ジョンセの登場に笑わせられたり、感動させられたりと、豪華なカメオ出演に大興奮してしまう。韓国ドラマはこういう他作品との繋がりで視聴者を楽しませてくれる仕掛けが多く、ファンにはたまらないのだ。

一見夫婦関係が冷めきっているヒョヌとヘイン。ヒョヌの視点から見ると、ヘインは冷たく高圧的で、自分を見下しているような高慢さだ。しかし、ヘインの視点からの演出もあり、同じ場面でも、ヒョヌのことを思い行動するヘインの姿や、冷たく硬いように見えるヘインの胸中を知ると悲しくなる。ヒョヌは、ヘインへの愛が消えてしまったように見えるが、ヘインの中でヒョヌへの愛は消えていないように見えるのだ。

夫婦愛の変化を描いた本作は、一度は冷めたかのような夫婦が「愛すること」をテーマにここからさまざまな展開を見せてくれるのだろう。第1話、第2話を通して、キム・スヒョンのカッコよさと、ずば抜けたコメディセンスに大笑いさせられ、キム・ジウォンの美貌と、その心の中にある不器用な愛に感情を揺さぶられた。

シリアスな場面でのキム・スヒョンは、すこぶるカッコよく、銃を撃つ姿やヘインの元に駆けつけるシーンなど、胸キュンの連続だ。一方で、同じ人なのかと思うほど、キム・スヒョンのコメディ演技も天晴れだ。キム・スヒョンと脚本家のパク・ジウンは、『星から来たあなた』『プロデューサー』に続き、本作で3度目のタッグとなるが、どの作品もキム・スヒョンの酔っぱらう演技がおかしく、愛おしいのだ。酔っ払い演技をさせたら韓国俳優の中でも上位入りは間違いない。ヒョヌが酔っぱらった場面では、キム・スヒョンのアドリブも炸裂し、抱腹絶倒させられた。

本作は、冷めきった夫婦の関係をテーマにするのかと思いきや、突然ヘインの身に起きた出来事により、ヒョヌの離婚への選択肢が一気に覆された。ここからどんなふうに夫婦が変わっていくのかが楽しみでならない。すでに大ヒットの片鱗を見せる本作が、どこまで視聴者を惹きつけてくれるのか、どんな物語を体験することができるのか、個性的な登場人物を演じる出演者たちとの関係性がどう転がるのか、とても楽しみだ。
(文=にこ)

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