大堀相馬焼「陶吉郎窯」の窯元完成 福島県浪江町

再建した工房で伝統の火を後世につなぐ決意を新たにする近藤さん

 福島県浪江町大堀地区に再建工事が進められていた大堀相馬焼「陶吉郎窯」の窯元が完成した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、地区内に窯元が再建されるのは初めて。6月のオープンを目指し、窯元の近藤学さん(70)が既に古里で作陶活動を再開している。15日、現地で竣工(しゅんこう)式が行われ、伝統の火を後世につなぐ決意を新たにした。

 大堀地区は原発事故で帰還困難区域となったが、国の伝統工芸品「大堀相馬焼」の窯元の避難指示は昨年3月に解除された。近藤さんは避難先のいわき市に窯元を構えていたが、発祥の地での生産を守り抜くため、2拠点での活動を決意。かつてと同じ場所にガス釜を備える工房、焼き物を販売する店舗を設けた。

 竣工式で近藤さんは「産地形成という目標に向かって頑張っていく」と誓った。課題となっている大堀相馬焼の後継者育成にも取り組む考えで、「一人でも多くの職人を養成し、大堀相馬焼を100年、200年と受け継いでいきたい」と産地の復活に力を注ぐ覚悟を示した。

 町によると、震災と原発事故発生前まで24軒の窯元が町内にあった。約半数が避難先で窯を再建し、残りは廃止や休止を余儀なくされた。

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