老後2,000万円問題が、約5年前の2019年に話題になりました。その影響から「2,000万円あれば老後は安泰!」と思っていませんか? 各々の平均値の単純計算によって導かれた老後資金2,000万円を鵜呑みにするのは危険です。なぜなら収入、年金、貯蓄、生活費……すべてが平均値の人などいないからです。「自分だけは大丈夫!」と高を括っていると「まさか自分が!?」と落とし穴に落ちることも。今回はそんなお話です。
「2,500万円」の貯蓄が消えていく…年金月22万円の65歳の老夫婦まさかの「老後破綻」!?
登場人物
・ゆめこさん(以下、ゆ)……大正時代からタイムスリップしてきた26歳女性。なぜか、現代社会にめちゃくちゃ詳しい。
・ワイ(以下、ワ)……ゆめこさんの白い飼い犬。お菓子好き。ミーハー。
・トキタサブロウ(以下、主)……主人公。1964年生まれ、59歳(2023年10月8日動画配信日時点)、中堅工業会社の部長。既婚。 ・タナカ(以下、タ)……サブロウの部下。25歳独身で、1人暮らしをしている。
主:俺の名前はトキタ サブロウ。中堅の工業会社で部長をしている59歳、もうすぐ定年を迎える。俺の座右の銘は「貧乏暇なし」。なんでかって? 俺は子どもの頃、すごい貧乏だったんだ。
俺は地方の農家に生まれた。人口が毎年減少する寂れた農村で、村全体が貧しかったんだ。なかでも父親が病気だったうちは、特別に貧しかった。服も文房具もおもちゃも、全部近所の子のお下がり。靴なんて底が剥がれてぺこぺこになってるのに、新しいものを買ってもらえなかったよ。
一番きつかったのは、水筒を買ってもらえなかったことかな。遠足には必ず水筒を持ってくるよう学校から言われてたんだが、俺は酒屋に譲ってもらったジュースの空き瓶に水を入れて持っていった。
重いし、フタがないからずっと手にもってなきゃいけないしで、同級生にはさんざんバカにされたよ。挙句の果てにジュースを持ってきてると誤解されて、みんなの前で先生には怒られる始末。
ワ:先生もクラスメイトもひどいね……。
ゆ:尊厳のえぐり方が鋭角ですね。
主:「ちくしょう、金さえあれば、こんなみじめな思いしなくてすむのに……」何度思ったか分からない。だがその悔しさが俺の原点になった。
俺の高校時代はバブル期前夜で、日本全体が独特の活気とエネルギーに満ちていた。「いい大学に入ればいい会社に入っていい暮らしができる!」そう信じて、苦手な勉強を頑張った。
おかげで公立大学にストレートで合格。業績が安定している、地元では誰もが知る中堅工業会社に就職できたんだ。
ワ:努力が報われたんだね!
主:社会人になった時はまさにバブルの真っただ中でね、働けば働くだけ、頑張れば頑張るだけ成果が出た。「24H(エイチ)戦えますか?」なんてテレビCMのキャッチコピーが流行ってたけど、俺にはまさにあんな気概があった。あのCMで自分を奮い立たせて、毎日終電帰宅でくたくたになるまで働いたよ。
ゆ:サブロウさんのように、バブル期のサラリーマンは猛烈に働く人も少なくありませんでした。
主:俺と同じように本気で「上に行きたい」と思うヤツは、同僚に何人もいたからな。俺は絶対に負けたくなくて、仕食らいついてきたんだ。その意欲を買われてね、同期の中でも出世頭だったんだ。
まあみんなそれなりに頑張っていたが、俺には及ばなかったんだな。
ワ:にゃは、有頂天!
ゆ:鼻につくその態度を改めれば、もっと上に行けたでしょう。
主:そんな俺も来年には定年だ。世間じゃ老後2,000万円問題なんて少し前に騒がれてたが、若い頃がむしゃらに働いて、しっかり評価もされてきた俺には正直、無縁無縁。関係のない話だな。
余裕しゃくしゃくのサブロウさんに襲いかかる、突然の悲劇!
ワ:ゆめこさん。何で老後に2,000万円貯金が必要って言われてるの?
ゆ:これは金融庁が2019年に公表した報告書の内容がもとになっています。高齢夫婦が年金だけで暮らすと月に5万円ほどの赤字が出てしまうので、定年後30年間暮らすと仮定した場合、年金以外に約2,000万円を自分たちで用意する必要があるという試算です。
多くの人が2,000万円という大金にドキッとしましたが、サブロウさんはなんの心配ないということでしょうか?
主:もちろんだ! 俺は順調に社内でキャリアを積んで現在は部長。家のローンは払い終わっていて、貯金だって2,500万円もある。女房と2人で暮らしていくだけなら十分だろ?
老後の生活費に困るなんて、俺に限ってそんなの絶対に有り得ないな!
ワ:さすが部長!余裕があるみたいだね。
ゆ:サブロウさん、十分な貯金があったとしても老後破産に陥るケースはあります。
主&ワ:えーーーー! なんで!?
ゆ:貯蓄を2,000万円以上保有している高齢者というのは、実は日本では平均的だったりします。
政府調査によると、65歳以上・無職の高齢者夫婦世帯では、貯蓄の平均は約2,509万円、負債は約29万円。つまり平均で約2,500万円の貯金があるのが、一般的な高齢者世帯ということになります。
ワ:そうなの? じゃあ老後破産をするリスクが高いシニア世帯って、実際はあんまりないのかな?
ゆ:果たして、本当にそうでしょうか?
主:な、なんだ……? 急に右手が動かなくなった……うう!
俺は救急車に運ばれて病院につれていかれ、自分が脳梗塞だと診断された。幸い、後遺症は残らなかったものの、今までの生活習慣が原因だろうと医者から言われてしまった。
俺はあぶらっぽい食事が大好きでな。いい年こいて揚げ物ばっかり食べていたのがまずかったようだ。食事は仕事ばかりしてきた俺にとって数少ない娯楽だったのにな。今の生活を続けると歩けなくなったり、寝たきりになるリスクがあると医者に言われてしまった……はぁ~、こうなった以上我慢するしかないな。
医療費、介護費で「お金がみるみる溶けていくぞ……」
はぁ……、治療費がこんなにかかるなんて思ってもみなかったよ。再発の恐れもあるし、そのときは要介護認定を受けるかもしれない。そうなったら介護費でお金がみるみる溶けていくぞ・
俺は無事に職場へ復帰することはできたものの、食事制限のストレスもあって最近はつい若手社員に厳しい態度を取ってしまっている気がする。こんなことで本当にいいんだろうか……。
いや、俺は悪くないぞ! 仕事で成果をあげつづけてきたこの俺が、断じて悪いはずがない! だいたい、最近の若い連中は何かにつけて楽をしようとしてるから、仕事もこんなにいい加減になるんだ!
主:おい、タナカ! この書類、またミスしてたぞ! おまえ、社会人になって何年目だ!
タ:す、すみません、トキタ部長……。
主:まったく、いい大学を出ててもこんな簡単なミスしてるんじゃいつまでたっても出世しないぞ!
ゆ:当然、こんな態度は職場で好まれるがはずがありません。
ワ:イライラしている人が側にいると、緊張しちゃって余計にミスしちゃいそうだよね。サブロウさん、このままでいいの?
主:……うーん、ローンも払い終わってるし、この家に住み続けるつもりでいるんだが……。段差も多いし、高齢者が住むには大変そうな気もするな。妻だっていつまでも元気なわけじゃないし、お互いのためにバリアフリーにリフォームした方がいいんじゃないか?
でも、リフォームをするとなると、まとまった金が出ていく。うちの会社は退職金が出ないし………。参ったな、今の貯金じゃ全然足りないじゃないか。はぁ……息抜きに散歩にでもいくか。
散歩に出たはいいが、どうしてもカツ丼屋や唐揚げ店に目が行ってしまう。はあ、揚げ物食べたい……。揚げ物食べたい……。あげも……
タ:トキタ部長、お疲れ様です!
主:ああ、タナカか……お前もお昼だったんだな。うん? それ、介護の本か?
タ:ええ、実は実家の母が昨年膝を悪くしてしまって……。今は家の近い姉が介護をしてくれてるんですが、休みの日には僕も手伝いにいってるんですよ。
主:へえ、そうだったのか……。
タ:それで、最近ちょっと寝不足で。ふはぁ(あくび)
主:そ、そうだったのか? なのに怒鳴ったりして悪かったな……。
タ:いえ、ぼんやりしてた僕が悪いんです。それに母の介護だって、これからはもっと大変になりますし、しっかり働いてお金を稼がないと。
主:……お前、家族思いなんだなぁ!
30歳以上年下の気怠い部下、タナカがサブロウのよき相談相手に
主:俺はタナカの言葉に思わずうるっときてしまった。どうも定年が近いこともあって、若い社員の気持ちをおもんぱかる気持ちが薄れていたようだ。俺は若い頃「こういう大人にだけはなりたくないな」って奴になっちまってたんだ。
なあ、タナカ。これからは仕事で困ってる時はなんだって相談してくれ。介護は教えてやれないが、仕事なら多少の経験がある。お前だけじゃない、他のやつらもだ。まあ俺はもうじき定年退職だけどな。1人で抱えるんじゃないぞ。
タ:え? いいんですか?
主:ああ、もちろん!
とはいえ、最初のうちは俺のことを怖がってる部下ばかりで、相談にくるやつなんてそういなかった。でも、タナカが俺にちょくちょく相談をしてくれるおかげで、他の部下たちも何かと俺に話してくるようになった。
俺がこれまで身につけたノウハウや経験を若者に伝えるのが俺にとってもやりがいになっていた。おかげで休憩時間には皆でコーヒーを手に話をしたりと、これまでより部署の空気もずっと良くなった!
主:タナカ、実は最近投資を考えてるんだよ。俺は脳梗塞の持病があるから、家をバリアフリーにリフォームする費用が稼げればと思ってな。
タ:へ~。部長、投資の経験なんてあったんですか?
主:いや、それがまったくないんだが。一攫千金を狙えたらなと思ってだな……。
タ:やめておいた方がいいですよ。僕の知り合いでも株やってる奴いますけど、短期間で大儲けしてる人なんて1人もいませんよ。基本はローリスクローリターン。3歩進んで2歩下がるなら儲けもん。一般人は細く、長く、焦らずが鉄則ですよ。
主:そ、そうなのか? サクッと稼いでスパッと終わらせたらいいと思ってたんだが。
タ:いやいや、サブさん仕事はすごいのに心配だなぁ。そんな考えだと投資詐欺に遭いますよ!真面目に。投資で稼ぐってなったら、その道の本職の人たちと同じ土俵で戦うことになるんですから。僕らが普段やってる機械のデータのチェックとかを素人がやって上手くできるかって話とおんなじですよ。
主:ああ……言われてみればそうだよなあ。いやあ、相談してよかったよ。
タ:リフォームするんなら、まず手すりの設置とか、スロープになる台を使ってみたらどうです? 案外それをやってみたら、大がかりなリフォームの必要性を感じなくなったって、この間シニア節約YouTuberが動画で言ってましたよ。
主:なるほどなあ! いやあ、流石はタナカだ、頼りになるよ!
タ:あはは、お役に立てて何よりです。
主:俺はタナカのアドバイスを聞いて、いくつかの工務店に相談をしてみた。家を丸ごとリフォームするとなると大金が必要だが、手すりの設置なら3万円~工事ができるとか、助成制度が利用できるケースもあるといったことを教えてもらった。
1人であれこれ考えて思い悩むより、人の意見を素直に聞くことの大切さを思い知ったよ。
ゆ:リフォーム代、随分節約できたようですね。
ワ:うんうん!
タ:っていうかサブさん、そんなに老後資金が心配なら来年の定年で退職しないで、再雇用制度を使って65歳までうちの会社で働いたらどうですか? うちの会社は退職金が出ないし、来年辞めてもたいして旨味ないっすよ。一緒に働きましょうよ!
主:タナカ……。そうだな、お前と一緒ならあと5年がんばってもいいかな!
タ:やったー。あと5年伸びたことだし、2人で新しいプロジェクト考えるってどうですか?
主:国とか宇宙とか巻き込んだやつ
タ:おいおい5年で起動にのるほどほどのヤツにしてくれよ
ワ:サブロウさんとタナカさん、いいコンビだね!
ゆ:かつてのサブロウさんは自分の懐事情ばかり気にしていましたが、周りの人に興味をもち、人の事情に目を向けられたことで人としての幅が広がったようです。
ワ:定年後も余裕のある素敵なシニアでいてほしいね!
60代がかかりやすい疾患~もしもの時の対処方法~
ゆ:ある日突然、脳梗塞の発作に襲われたサブロウさんですが、病気がきっかけで人生が変わりましたね。
ワ:タナカくんと仲良くなったことで柔らかくなったね!
ゆ:ここからは、60代がかかりやすい疾患をご紹介します。金融資産を守るためには健康資産を高める必要がありますので、予防に力を入れていきましょう。
60代がかかりやすい疾患の1つ目は高血圧です。高血圧は、60代の方にとってもっともメジャーな健康問題の1つです。高血圧は心臓や血管に負担をかけ、脳卒中や心臓病などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。
ワ:サブロウさんが抱えている脳梗塞も、脳卒中の1つだね。
ゆ:男性では30代後半から、女性では45歳から増えていくと言われていますので、早めに対策していくことが大切ですよ。
代表的な方法は、健康的な食事と適度な運動です。塩分や脂質を控え、野菜やミネラルを多く摂ることを意識したり、有酸素運動をライフスタイルに組み込むことが大切です。ぜひ今日から取り入れてくださいね。
ワ:健康的な生活を習慣化しちゃおう!
ゆ:60代がかかりやすい疾患の2つ目は糖尿病です。糖尿病は、血糖値が高くなることによって神経障害や腎不全、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす可能性があります。
ワ:血糖値が高いと、そんなにリスクが高まるんだね。ゆめこさんどうすればいーい?
ゆ:代表的な対処法は、先ほどの高血圧と同じく健康的な食事と適度な運動です。食事に関しては糖質制限が主な方法になりますので、炭水化物や糖分を過剰に摂りすぎないように気をつけましょう。
ワ:健康的な食事をバランスよく1日3食摂るのが大切だね!
ゆ:60代がかかりやすい疾患、3つ目は骨粗しょう症です。60代になると骨密度が減少し、骨折のリスクが増加します。骨粗しょう症は高齢者や女性、やせ型の人がなりやすいと言われていますが、他にも過剰なアルコール摂取、タバコの喫煙、運動不足などの生活習慣が原因になることもあります。
ワ:お酒とタバコが大好きな人は要注意だね!
ゆ:骨粗しょう症の予防としては、適度な運動やカルシウムとビタミンDを含む食事を意識することが挙げられます。骨を作るための栄養素であるカルシウムとビタミンDは、一緒に摂取することで吸収率がアップしますよ。
カルシウムは乳製品に多く含まれることは有名ですが、ビタミンDはどのような食品に多く含まれるかご存じでしょうか?
ワ:うーん、気にしたことがなかったから知らないなぁ……。
ゆ:ビタミンDは、イワシやサンマ、鮭に多く含まれています。また、日光に浴びれば皮膚から生成されますので、太陽が出ている時間帯にウォーキングをするなどして工夫してみましょう。
これまでの内容をまとめると、
・塩分や脂質を控える
・炭水化物やスイーツなどの糖質はほどほどに
・カルシウムとビタミンDを意識して摂取
・太陽の出ている時間帯に有酸素運動を行う
これらの方法を参考に、健康資産と金融資産を守る生活習慣を身につけましょう。
ワ:お金と健康を大切にね!
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