【大岩ジャパンの最新序列】荒木の起用法は? 国内組中心の編成で気になる3つのポイント

パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップまで、残り1か月。大会前最後の活動に挑むU-23日本代表のメンバーが発表された。

3月22日のマリ戦(サンガスタジアム by KYOCERA)、同25日のウクライナ戦(北九州スタジアム)に向けて招集されたのは、昨年最後の活動となった11月のアルゼンチン戦同様に26名だ。

今回のメンバーを見ると、目につくのが海外組の少なさだろう。U-23アジア杯はインターナショナルマッチウィーク外に開催されるため、所属クラブの活動を優先しなければならない。そのため、早くから日本サッカー協会側は欧州でプレーする選手たちや所属クラブと対話を続けてきたが、現状では5名の選手を招集するに留めている。

大岩剛監督も「(招集に)NGというクラブもありますし、『その時のチームの状況やタイミングにもよる』と言っているチームもある」とし、セレクターとしての難しさを口にした。ただ、こうした状況は早くから分かっていたこと。現在も海外クラブとの交渉は続いているが、そうした状況だからこそ国内組の奮起が求められる。

ポジションごとに現状の序列を整理すると、気になる点は3つある。1つ目がGKだ。今回もA代表に招集された鈴木彩艶(シント=トロイデン)がメンバー外のため、現状では、先のアジアカップでA代表入りを果たした野澤大志ブランドン(FC東京)が最も正守護神の座に近い。

しかし、今季は怪我の影響もあってクラブで苦しんでおり、3節が終わった時点で出場機会は“0”。そうした状況を踏まえると、定位置争いは横一線となる。

昨年9月のU-23アジア杯予選以来の招集となった小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)や、同10月のアジア競技大会で評価を高め、昨年11月のアルゼンチン戦で先発出場を果たした藤田和輝(千葉)にもチャンスがある。

2つ目はCB。「センターバックというポジションを取ってみれば、(周囲から)言われる通りで、ずっと選手が活躍できていない」と指揮官が不安を口にしたように、立ち上げ当初から軸を確立できていない。

西尾隆矢(C大阪)、鈴木海音(磐田)、木村誠二(鳥栖)が中心となってポジションを競ってきた一方で、所属クラブでは継続して試合に出られていなかった。今年に入って西尾が2節から出場機会を得ているが、鈴木海は一度もJ1のピッチに立っておらず、木村はベンチ外が続く。

新たな選手の台頭が待たれるが、アルゼンチン戦で招集した山﨑大地(広島)も先週のトレーニング中に右膝を痛め、右膝前十字靭帯再建術、内外側半月板縫合術を受けて全治9か月から10か月の診断を受けた。期待されたチェイス・アンリ(シュツットガルト)は今回も招集外となっており、不安は尽きない。

そこで期待されるのが、馬場晴也(札幌)と高井幸大(川崎)だ。馬場は今季の開幕からレギュラーとして活躍。フルメンバーが揃う大岩ジャパンでは、実に一昨年11月のスペイン・ポルトガル遠征以来の招集となるが、対人プレーの強さや足もとの技術を武器にポジションを掴めるか注目だ。

プロ2年目を迎えた高井は、開幕からの2試合で先発出場。192センチのサイズを活かしたプレーとビルドアップは日増しに精度が高まっている。昨年はU-20ワールドカップやU-23アジア杯予選にも出場するなど、国際舞台での経験値もプラスの材料。CB問題を解決するようなパフォーマンスに期待が懸かる。

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3つ目は、MF荒木遼太郎(FC東京)とFW染野唯月(東京V)の起用法だ。2021年3月のドバイカップを最後に代表から遠ざかっていた荒木は、今季から加わったFC東京で完全復活。鹿島時代の21年にベストヤングプレーヤー賞を受賞した当時を彷彿させる活躍ぶりで、青赤軍団の攻撃陣を力強く牽引している。

正確なキックとアイデアに富んだパスでチャンスを演出。開幕戦で1ゴール、続く2節では2ゴールを記録するなど、目に見える結果を残して代表復帰を掴み取った。久しく代表から離れていたため、大岩ジャパンでの守備のやり方を習得する必要はあるが、攻撃で主役を担う力は十分にある。

MF鈴木唯人(ブレンビー)が不在となるため、攻撃面の新たな旗振り役として期待は大きい。ジョーカーとしても機能するだけに、ゲームチェンジャーの役割を担わせても面白いだろう。そうした意味でも、この2連戦は荒木の起用法を見極める絶好の機会になるはずだ。

一方、染野は一昨年11月の活動以来となる招集だ。ストライカーとして高校時代から高い評価を受けてきたが、プロ入り後は思うように結果を残せていなかった。しかし、昨年6月に期限付き移籍で東京Vに加入したことが転機となる。

点取り屋として活躍し、J2で6ゴールをマーク。さらにJ1昇格プレーオフ決勝の清水戦では終了間際にPKを獲得し、自ら決めてJ1復帰の立役者となったのは記憶に新しい。今季も引き続き東京Vに籍を置き、3節まで先発出場を果たしている。

ゴールこそないが、J1の舞台でも安定感のあるポストプレーや卓越したシュートセンスを発揮しており、満を持しての代表復帰となった。細谷真大(柏)、藤尾翔太(町田)とは異なるタイプのFWであり、攻撃のオプションになり得る。また、2022年5月の候補合宿ではインサイドハーフでも起用されるなど、新たな可能性を模索された経験もある。そうした起用法も含め、大岩監督がどのような役割を与えるのか注目だ。

いずれにせよ、アジア最終予選まで時間はない。新たな選手の台頭が求められるなかで、26名の俊英たちがどんなアピールを見せるのか楽しみだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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