中3生が自転車で222kmコースを5回完走 姫路の藤咲さん、銀の馬車道・鉱石の道「達人」認定

愛用のロードバイクで「銀の馬車道・鉱石の道」を周遊するルートを計5回完走した藤咲太吾さん=姫路市飾東町庄

 日本遺産「銀の馬車道・鉱石の道」の魅力を堪能できるコースを自転車で走り、完走回数に応じて称号を受けられる事業で、姫路市立城山中3年の藤咲太吾(ふじさきだいご)さん(15)が最高位の「道の達人222」を得た。それぞれの道を周遊する計222キロのコースを5回走りきり、中学生では初めて同称号を受けた。ロードバイクで九州まで旅するほどの学生ライダーは「いつか自転車でユーラシア大陸を横断したい」と笑顔を見せる。(田中宏樹) ### ■小学生時代、親に内緒で姫路→明石

 コースは県が中心となり2019年度に設定。JR姫路駅と生野銀山(兵庫県朝来市)の間を往復する銀の馬車道周遊ルート(106キロ)と、同銀山を発着点に神子畑(みこばた)選鉱場跡(同県同市)や明延鉱山跡(同県養父市)などを巡る鉱石の道周遊ルート(116キロ)がある。

 「銀の馬車道・鉱石の道」の沿線市町や県などでつくる推進協議会は、21年度から両ルートの完走者に称号を贈っている。

 藤咲さんは小学生の頃から自転車に乗るのが好きで、親に内緒で姫路から明石まで走ったこともあった。中学1年でマウンテンバイクが手に入ると行動範囲は広がり、道路標識を頼りに神戸ハーバーランドや岡山県備前市まで出かけた。

 中学2年だった22年6月、将来のために親が積み立てていた出産祝いなどを充て、念願のロードバイクを購入。重量が軽く、振動が吸収される車体は「自分の力が全て推進力に変わって気持ち良かった」。淡路島1周や京都・嵐山までの日帰り旅行など、サイクリングにのめり込んだ。

 昨年1月、自転車店に置かれたチラシで同協議会の取り組みを知り、銀の馬車道周遊ルートに初めて挑戦。中学生の間に最高位の称号を得るという目標を立て、昨年12月までに両ルートを5回ずつ走りきった。「道の達人-」を受けたのは5人目で、20代以下では初めてだったという。

 「市川沿いを走る馬車道は川の音や鳥の鳴き声が心地よく、鉱石の道は紅葉など山の自然が美しかった」と藤咲さん。「自分が走っている道を馬車が通っていたと考えると、不思議な気持ちだった」と振り返る。

 昨年の春休みは4日がかりで太宰府天満宮(福岡県太宰府市)まで走り、今月下旬には東京を目指す。4月からは姫路工業高校機械科に進むといい、「高校ではもっと遠い場所へ行ってみたい。将来は起業し、自転車の製造にも携わりたい」。これからも目標に向けて突っ走っていく。

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