医療保険と介護保険にまたがるサービス「訪問看護」 給付が重なる場合はどうなる?

訪問看護とは

訪問看護は、医師の指示のもと、保健師、看護師、准看護師、助産など看護の専門職が、居宅に訪問し、その方の病気や障がいに応じて看護を行うサービスです。言語聴覚士や作業療法士、理学療法士によるリハビリテーションが行われることもあります。

サービス提供は、病院・診療所または訪問看護ステーションが行います。訪問看護ステーションでは、24時間の電話相談や必要時には緊急訪問看護を提供しています。

訪問看護師は、食事や排せつ等のさまざまな療養上のアドバイスを行います。また、バイタルサインをチェックし、心身の健康状態・障がいの状態をみて、状態に応じた助言や緊急対応を行います。点滴、注射などの医療処置や痛みの軽減や服薬管理なども行います。

訪問介護は、利用者の年齢や疾患、状態によって医療保険または介護保険いずれかの適用となります。介護保険の給付を受けることができる人は介護保険からの給付が優先します。つまり、介護保険と医療保険の双方から訪問看護のサービスを受けることができません。

医療保険の訪問看護とは

医療保険の訪問看護の対象者は、介護保険の適用にならない人(小児等40歳未満の人、要介護者・要支援者以外の人)です。利用回数、時間等が定められています。基本的に利用回数は週 3 回かつ1日1回まで、利用時間は 1 回30分から90分以内となっています。

ただし、厚生労働大臣が定める疾病等、気管カニューレ等の特別な管理が必要となる方、病状の悪化等により特別訪問看護指示期間にある方は、週4日以上かつ1日に2~3回の利用ができます。

かかった費用の自己負担は、所得・年齢によって異なりますが、原則月額の1割~3割です。医療保険で訪問看護を利用するには、本人や家族が訪問看護を主治医に依頼して、「訪問看護指示書」の交付を受けて、訪問看護計画に基づきサービスを受けます。

介護保険の訪問看護とは

介護保険の訪問看護は、第1号被保険者・第2号被保険者の方が対象です。

第1号被保険者の場合は、65歳以上かつ、要支援・要介護に認定される必要があります。また、第2号被保険者は、40歳以上65歳未満かつ、末期がんや脳血管疾患など16特定疾病疾患の対象者で要支援・要介護に認定される必要があります。

訪問看護を介護保険で利用する際、本人や家族が訪問看護を主治医に依頼して、居宅介護支援事業所のケアマネジャー等によるケアプランのなかに、訪問看護を組み入れてもらいます。訪問看護ステーション等は、主治医から「訪問看護指示書」の交付を受けて、ケアプランに基づいたサービスを受けます。

ケアプランに沿って1回の訪問時間は、20分、30分、1時間、1時間半の4区分があります。医師の訪問診療よりも安く、回数も多く利用できます。かかった費用の自己負担は、所得・年齢によって異なります。

第2号被保険者は月額の1割です。第1号被保険者は月額の1割(一定以上の所得者については2~3割)です。ただし、要介護度によって支給限度額が設定されていますので、月の支給限度額を超えたサービス分は自己負担となります。

なお、要支援者または要介護者であっても、厚生労働大臣が定める疾病等(がん末期等)の方、急性増悪が起こることによる頻回な訪問が必要な方、精神科訪問看護の対象者は医療保険の適用となります。

まとめ

訪問看護は介護給付と医療給付が重なるものについては、原則、介護保険の給付が優先されます。また、介護保険と医療保険では、利用回数や利用者負担などが異なります。

受診している医療機関、訪問看護ステーション、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険や障がい福祉の担当窓口などで相談できますので、活用しましょう。

出典

厚生労働省 老健局 訪問看護
公益財団法人 日本訪問看護財団 訪問看護とは(一般の方向け)

執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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