有機EL研究、振り返る 山形大・城戸教授が最終講義、成功の心得伝授

科学者として大切なことを学生に伝える城戸淳二教授=米沢市・山形大米沢キャンパス

 有機EL研究の第一人者・山形大の城戸淳二卓越研究教授(65)が本年度末で定年退職を迎えるのを前に、最終講義が15日、米沢市の同大米沢キャンパスで開かれた。城戸教授は限られた予算、設備から始まった研究生活を振り返り、科学者として成功するための心得を学生に伝授した。

 城戸教授は1989年に助手として同大に着任した。着任当初、大学内の実験装置は限られ、「フラスコからのスタート」だったという。他の機関の設備を借りるなどして、研究を進めてきた。93年に世界で初めて白色有機EL素子の開発に成功。高効率化、長寿命化などで成果を上げ、有機EL研究の拠点化に貢献してきた。

 白色有機ELの開発は、当時の学生が赤色を出そうとして合成した材料の色が白っぽかったことから始まった。「学生とディスカッションを重ね、たまたま起きた事象を見逃さなかったから開発につながった。理論的にどうであっても実験をする、手を動かすことが重要だ」と強調した。

 研究者として成功する秘訣(ひけつ)には▽120%の努力▽好奇心旺盛▽常識を打ち破る―などを挙げた。国や県の大型プロジェクトに取り組んできた経験から、「どんな仕事もそうだが、研究は一人ではできない。普段から人とのネットワークをつくることが大切」と、学生に呼びかけた。

 同キャンパスでは、城戸氏のほか、本年度末で定年退職となる時任静士(有機材料科学)、日高貴志夫(建築環境)、近藤康雄(機械システム工学)の3教授も同日までに最終講義を行った。城戸、時任の両氏は特任教授として同大に残る予定。

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