花粉症持ちの人が多い都道府県 2位は山梨と岐阜 スギの植林が多い地域と花粉症の関係は?

“花粉症持ち”の人が多い都道府県は? ※画像はAIによるイメージです(kei907/stock.adobe.com)

みなさんは、“花粉症持ち”の人が多い都道府県といわれたらどの都道府県を思い浮かべますか。第一三共ヘルスケア株式会社(東京都中央区)が実施した「花粉症に関する全国調査」によると、「静岡県」が1位となりました。一方、スギの量が多い「東北地方」の花粉症発症率は約53%で全国平均の約55%を下回る結果となったそうです。

調査は全国の20~60代の男女4700人(都道府県別・性年代均等割付)を対象として、2023年12月にインターネットで実施されました。

“花粉症持ち”が多い都道府県(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

はじめに、「花粉症を発症した経験」の有無について質問したところ、全体で55.1%が「花粉症を発症した経験がある」と回答し、半数以上が“花粉症持ち”であることが明らかになりました。これを都道府県別で比較すると、「静岡県」(74.0%)が全国花粉症発症率第1位となり、次いで「山梨県」「岐阜県」(いずれも71.0%)が続きました。一方、花粉症持ちの人数が最も少なかった都道府県は「沖縄県」(23.0%)となっています。

スギの量が多い「東北地方」の花粉症発症率は約53%で、全国平均を下回る結果に(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

さらに、日本列島を9つのエリアに分類し、地方別の「花粉症の発症率」と引き起こす要因として最も多い「スギの植林面積」を比較してみると、植林面積が最も広い(※)「東北地方」の発症率は52.7%)と、意外にも全国平均の55.1%を下回る結果となりました。

一方、スギの植林面積が「東北地方」の3分の1程度と全国的に見ても狭い「東海地方」(66.8%)や「関東地方」(64.0%)などは花粉症発症率が6割を超え、全国の中でも発症率が高いことが明らかになりました。
(※)環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」地域別スギ林面積

最も多い花粉症状、第1位「鼻水・鼻づまり」(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

次に、“花粉症持ち”の2592人に「花粉症の症状」を複数回答で答えてもらったところ、「鼻水・鼻づまり」(93.2%)が最も多く、次いで「くしゃみ」(82.0%)、「目の充血・かゆみ」(66.8%)といった症状が上位に挙がったほか、約5人に1人が「体のだるさ」(19.9%)も感じており、花粉症による影響が、鼻炎や目の炎症だけでなく、体全体の健康状態を左右することがうかがえました。

花粉症が「風邪と同等またはそれ以上につらい」と感じている人は約7割(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

また、風邪を基準として「花粉症のつらさの度合い」について質問したところ、「風邪と同様のつらさを感じる」(37.2%)、「風邪よりも花粉症の方がつらさを感じる」(29.6%)と回答した人が全体の約7割(66.8%)に上り、花粉症によって風邪と同等、またはそれ以上の「体調不良」を感じている人が多いことが明らかとなりました

花粉症で「仕事や勉強に支障がある」と回答した人は約8割(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)
“花粉症持ち”の4割以上が、仕事・勉強のパフォーマンスが通常時の6割以下に低下(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

続けて、「花粉症が日常生活に与える影響」について調査をしたところ、“花粉症持ち”の2592人のうち78.2%が「花粉症による仕事や勉強への影響(支障)がある」と回答。

また、「花粉症により仕事や勉強に支障がある」と回答した2028人に、「通常時と花粉症発症時でのパフォーマンスの違い」を尋ねたところ、花粉症によって「仕事・勉強へのパフォーマンスが通常時の6割以下に落ち込む」と感じている人が43.4%という結果になり、花粉症により、勉強や仕事などの日常生活に大きな影響を与えていることが分かりました。

花粉症によるパフォーマンス低下、要因の第1位は「集中力が低下する」(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

さらに、花粉症による「パフォーマンスの低下を引き起こす要因」を複数回答で答えてもらったところ、「集中力が低下する」(69.1%)、「鼻水や咳が気になる」(50.0%)、「鼻水をかむ時間を取られる」(46.9%)といった要因が上位に挙がりました。

半数が花粉症により、「会社や学校に行きたくない」と感じた経験あり(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

なお、つらい症状やそれを要因としたパフォーマンスの低下など、あらゆる影響をもたらす花粉症によって、約2人に1人が「会社や学校に行きたくないと感じたことがある」(50.2%)と回答しています。

現在行っている花粉症対策(出典:第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」)

最後に、「実際に行っている花粉症対策」を複数回答で教えてもらったところ、「マスクの着用」(73.9%)が最多となったほか、「鼻炎内服薬の服用」(51.5%)、「点眼薬の使用」(45.5%)、「点鼻薬の使用」(29.0%)など医薬品の使用が対策方法の上位にランクインしました。

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【出典】
▽第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」

なお、「花粉症に対する正しい理解と対処法」についてハピコワクリニック五反田院長の岸本久美子医師は以下のように解説しています。

花粉症に対する正しい理解と対処法

【“シーソー理論”って知ってる?押さえておきたい「花粉症のメカニズム」】
異物が体に入ってきたときに抗体を作って排除するという体が元々持つ防衛機能を「免疫」といいます。異物として入ってきた花粉を排除しようと過度に攻撃することで、体にさまざまな症状が起こり、花粉症を発症するのです。

花粉症といえば“コップ理論”が有名ですが、他にも複数のメカニズムが関わっているといわれており、中でも最近有名なのが“シーソー理論”です。免疫力のバランスをシーソーの原理に例えたもので、細菌やウイルスに対抗する免疫力よりも、花粉などのアレルギーに対抗する免疫力の負担が大きくなることで2つの免疫のバランスが崩れ、アレルギー症状が引き起こされてしまいます。

【花粉症になる人とならない人の違いは「遺伝」と「環境」による?】
花粉症になる人とならない人の違いは、元々の「遺伝的な要因」と「環境要因」の違いの2つが挙げられます。遺伝的な要因では、アレルギー体質が強い人は花粉症に限らず様々なアレルギーを引き起こしやすいといえます。また、環境要因では、住んでいる地域・家の中の環境によって花粉に接する機会が多いほど、発症の可能性が高くなります。

さらに、幼少期に発症したアレルギー症状を放置するとどんどん進行して、結果的に花粉症や気管支喘息などの症状につながってしまうこともあります。アレルギー対処のリテラシーを高くもち、小さい頃からスキンケアなどを徹底することで、他のアレルギー疾患の発症を比較的抑えることができるといえます。

【都会は花粉症を発症しやすい?花粉の特徴と環境が発症を左右することも】
環境はとても重要です。花粉の粒子は通常30μmで比較的大きいのですが、それが割れることにより、中からたんぱく質などの強い成分が放出されて、症状も強くなってしまいます。

特にスギの花粉は割れやすい特徴があるため、今回の調査でも明らかになっているとおり、スギの量は多くないものの花粉症の発症率が比較的高い東海・関東地方のように、都会でアスファルト量が多いと考えられるエリアだと、花粉が地面に落ちて割れやすく、さらに風で舞いやすいのです。

【睡眠不足や薬の過剰服用…花粉症によるパフォーマンスの低下が日常生活に与える影響】
花粉症の症状の中でも、意外にも相談を多く受けるお悩みは、“睡眠不足による日中のパフォーマンスの低下”です。家の中に持ち込まれた花粉によって鼻づまりが起こり、呼吸がしにくく睡眠に影響が出ることもあります。特に子どもは、寝不足に気づけないため、日中、過度に興奮したり逆におとなしくなったり、一見花粉症とは関係なさそうな行動を引き起こし、ADHDと勘違いされてしまうような事態もあり得ます。

他にも、花粉症でない人に症状のつらさを理解してもらえなかったり、風邪などと間違われたりする、また運転などへの影響を懸念して正しい薬の量を飲まずに悪化してしまうなど、日常生活への影響も大きいといえます。

【花粉症にならないため・和らげるためのHOW TO解説】
他のアレルギー症状を放置せず、しっかりコントロールすることが重要。子どもには幼少期から丁寧にスキンケアをしてあげることも発症率を下げることにつながります。また、花粉に物理的に触れないようにするために、自宅のカーペットの掃除や空気清浄機の設置など、住環境の見直しも必要です。

さらに、風邪など他の原因で鼻や喉などが荒れている際、粘液に花粉が溶け込んでしまうと新たに花粉症を発症してしまう恐れもあるため、風邪症状にもしっかり対処しましょう。そして、症状を和らげるためには、花粉飛散の1~2週間前から通院、または早期から市販薬の抗ヒスタミン薬などの使用を開始して、飛散が終わるまで継続することが最も大切です。

中には何を選んでいいか分からずに、間違った薬(風邪薬など)や規定以上の量を飲んでしまう人もいます。どのようなタイプの花粉症かを見極め、適正使用を心掛けましょう。鼻炎内服薬のほかに、点鼻薬や点眼薬を併用することで症状が緩和されることもあります。

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また、同社の花粉・アレルギー用薬開発担当の小林雅彦氏は「症状別 正しい薬の選び方と服用法」について以下のように解説しています。

症状別 正しい薬の選び方と服用法

【花粉・アレルギー用薬開発担当が解説。症状別に正しく薬を使い分けるには】
花粉が飛散し始め、症状が重くなる前の軽度な状態から早めにかつ継続して適切な医薬品を使って対策することが、症状を抑えるポイントです。医薬品の中でも、“花粉症持ち”の人が多く服用している内服薬ですが、症状がつらい場合には、内服薬に加えて鼻や目など局所の症状に効く点鼻薬や点眼薬を併用できるので、活用してみてください。

【数ある薬の中から症状に合わせて選ぶ方法と注意点】
事前に症状の重さやつらいことが想定できている人には、内服薬のほかにステロイド点鼻薬を併用することがおすすめです。速効性はないものの症状が出始めたらすぐに継続して使うことで症状の悪化を抑えられます。

また、花粉飛散のピークで症状がつらく、今すぐ抑えたいという人には、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤に加えて血管収縮剤を配合した点鼻薬へ一時的に切り替えることもおすすめします。鼻粘膜の腫れを抑え、鼻づまりに速効性があります。点鼻薬と点眼薬の併用も可能なので、目のかゆみがある場合は一緒に点眼薬をお使いになることをおすすめします。

一方で、長期連用は副作用を引き起こす可能性があるため、用法用量を守って正しく使用してください。また、点鼻薬同士や点眼薬同士の併用はできないので、必ず症状に合わせて、選んで使い分けることが、対策のカギといえます。

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【出典】
▽第一三共ヘルスケア「花粉症に関する全国調査」

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