細田博之前衆院議長の死去に伴う衆院島根1区補選の告示まで1カ月 与野党激突 3補選で唯一 自民に逆風、野党攻勢 保守王国の勝敗が政権左右も

立候補した(右から)錦織功政氏、亀井亜紀子氏、村穂江利子氏、佐々木信夫氏

 細田博之前衆院議長の死去に伴う衆院島根1区補選の告示まで16日で1カ月となった。全国3補選のうち唯一の与野党対決となる見込みで、「保守王国」での勝敗は岸田政権の行方を左右する。「政治とカネ」の問題で自民党が逆風を受ける中、攻勢を強める野党は候補一本化の成否が焦点になっている。 

 「亀井氏に後れを取っている」。14日に松江市内であった自民県連の会合で、党本部の職員が党の直近の情勢調査を報告し、危機感をあおった。

 新人の錦織功政氏は党公認を受けた1月下旬以降、企業や業界団体を回り、県連地域支部の会合に出席。国会議員が派閥の政治資金パーティー裏金事件の謝罪を続けるが、支持者から「評判は地に落ちている」など批判を受ける。

 細田氏が裏金事件で追及を受ける安倍派の前会長を務めていたことに加え、晩年の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係やセクハラ疑惑も尾を引く。県連内では「逆風は想像以上だ」との声が上がる。

 党本部の危機感は強い。茂木敏充幹事長は島根1区に注目と野党勢力が結集することを懸念。分散させようと、水面下で長崎3区補選の公認候補擁立を模索したが、岸田文雄首相は首を縦に振らなかった。党内で動きがあった17日の党大会までの裏金事件に関わった安倍派幹部の処分も首相が慎重姿勢を崩さなかった。

 党本部は今後、複数の職員を送り込み、20日の事務所開きは茂木幹事長が出席を予定。当面は支持固めを進める構えで、1区選挙対策本部の嘉本祐一事務本部長は「劣勢をひっくり返す活動を展開しなければならない」と巻き返しを誓う。

 元職の亀井亜紀子氏を擁立する立憲民主党は、保守層の切り崩しと無党派層の獲得に動く。「直接会ったことがある人を増やさないといけない」。2月3日、松江市内であった立民県連の会合の控室で、党本部の岡田克也幹事長が亀井氏にげきを飛ばした。

 党の情勢調査で錦織氏を知名度で圧倒。大票田の松江市を中心に街頭演説やビラ配り、公民館単位での対話イベントを続ける。

 今月3日に来県した党本部の泉健太代表は「裏金の是非、政治改革の必要性を問う非常に重要な戦いだ」と強調。16日の事務所開きに長妻昭政調会長が出席を予定し、4月28日の投開票日直前まで知名度のある国会議員を送り込む計画を立てる。

 亀井氏は、JAやJFしまね、県トラック協会など自民支持基盤の業界団体へのあいさつ回りを初めて実施。父で元衆院議員の久興氏(84)も今年に入り、郵政関係者の会合に出席して支援を呼びかける。

 今後の焦点は、新人の村穂江利子氏を擁立する共産党の動きだ。村穂氏は裏金事件などに触れ、自民党政治からの転換を主張。中国電力島根原発(松江市鹿島町片句)の稼働反対などを訴え、支持拡大を図る。

 一方、共産党の小池晃書記局長は15日の記者会見で「自民党と一対一の対決構図に持ち込むための協議が進んでいる」と述べた。党県委員会の上代善雄委員長も「立民が共闘の意思を固めれば踏み切る覚悟だ」と語る。

 過去2回の総選挙は亀井氏で候補を一本化した実績があるが、立民の最大の支援組織・連合の〝共産アレルギー〟は根強い。立民島根県連の川井弘光幹事長は「共闘はないものと思って準備している」とする一方、「勝手に(候補を取り下げて)応援するのであれば拒まない」と述べ、候補一本化に含みを持たせた。

 このほか、無所属新人の佐々木信夫氏が立候補を表明。日本維新の会は候補者擁立が難航している。

 ※【訂正】タイトル見出し、細田博之氏の「細」が抜けていたため修正しました(12時23分)

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