安保法制で「平和的生存権侵害された」 国に損賠求めた住民たちの控訴棄却 高裁宮崎支部

判決を受け、上告する方針を示した原告ら=15日、宮崎市旭2丁目の福岡高裁宮崎支部前

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障法制は憲法違反で、平和的生存権を侵害されたなどとして、鹿児島県内の住民44人が国に1人10万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部は15日、請求を棄却した一審鹿児島地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。憲法判断は示さなかった。原告側は上告する方針。

 判決理由で西森政一裁判長は「憲法は国の行為を制限するもので、個々の国民に具体的な権利利益を保障したものではない」と指摘。安保法制の制定によって生命、身体に具体的な危険が生じたとは認められず、「人格権が侵害されたとは言えない」とした。

 判決後に会見した原告の藤明美さん(73)=鹿児島市魚見町=は、両親の出身地である奄美大島でのミサイル部隊配備に触れ「いつ戦争が始まるのか恐れている。国民の声を聞いて判断してもらいたかった」と悔しさをにじませた。

 増田博弁護団長は「鹿児島で軍事化が進んでいるのにもかかわらず、具体的な危険がないと退けられたのは不当だ。徹底的に争う」と述べた。

 一審の鹿児島地裁は2022年4月、憲法で保障された平和的生存権などを侵害されたとの訴えを退け、憲法判断も示さなかった。同種訴訟は全国の22地裁・支部で起こされ、控訴審を含め原告の敗訴が続いている。

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