ついに開発ドライバーが本格参戦。マティアス・ロッシがカローラGRS TCRをドライブ/TCR南米

 アルゼンチンで最も成功したツーリングカードライバーのひとりであり、国内最高峰シリーズのTC2000(旧スーパーTC2000)ではシリーズ“5冠”を誇るマティアス・ロッシが、今季2024年より満を持してのTCRサウスアメリカ・シリーズ参戦を表明。ともに車両開発を担当してきたトヨタ・チーム・アルゼンティーナ(TTA)に加わり、改めて『トヨタ・カローラGRS TCR』のステアリングを握ることとなった。

 シリーズ分割時代をまたいで2006年、2007年、2011年、2013年、そして2020年にハイテクFFツーリングカーのタイトルを獲得し、ツーリスモ・ナシオナルやツーリスモ・カレテッラ、そしてトップレースV6を含めさまざまなカテゴリーで“7冠”の偉業を達成したロッシだが、近年は隣国のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”にもチャレンジし、シーズンをまたいで複数の優勝を記録するなど「シリーズ史上で最も成功を収めた国外出身ドライバー」との称号も得た。

 そんな39歳のロッシは今季よりTOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニアに復帰して、ひと足先にTC2000のフィールドにもカムバック。今季で44年目のシーズンを迎える“南米大陸最高峰の技術力を誇る選手権”は、新たにB~Cセグメント級のSUVをベースとした新車両規定の導入が予定されており、ロッシもシーズン序盤はカローラTC2000のステアリングを握りつつ、並行してTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)が開発を進める『C-HR』または『カローラクロス』のSUV車両熟成に邁進する計画を立てていた。

「そのうえで、こうしてTCRサウスアメリカにも参入できてとてもうれしいよ。 僕にとって、国際レベルのカテゴリーでさまざまな国籍のドライバーと競争できることが重要なんだ」と、改めてTCR競技への本格挑戦が決まったロッシ。

「僕はその開発に携わったチームの一員だったから、当然このクルマのことはよく知っている。この事実がクルマに適応してセットアップするのに役立つと思っているんだ」

 その言葉どおり、2021年の初期開発からシェイクダウンまで、一貫して『トヨタ・カローラGRS TCR』の開発を担当してきたロッシの貢献により、昨季シリーズへの本格デリバリーが開始された同車は複数のチームが勝利を飾り、ベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)や強豪パラディーニ・レーシングのファン-アンヘル・ロッソとファビアン・シャナントゥオーニらを含め、最後までタイトル戦線の輪に加わる活躍を演じた。

「僕の目標はレースでの勝利を目指して戦い、タイトルを獲得するチャンスのある状態でシーズンの最終段階に到達することだ」

TCRサウスアメリカ・シリーズ参戦を表明したTC2000“5冠”を誇るマティアス・ロッシ
2021年の初期開発からシェイクダウンまで、一貫して『トヨタ・カローラGRS TCR』の開発を担当してきたロッシ(上段左/中央右)
トヨタ陣営の一角でもあるコブラ・レーシングは、チアゴ・ヴィヴァクアの起用を発表

■トヨタ陣営の一角コブラ・レーシングはヴィヴァクアを起用

 実質的なファクトリーチームとも言えるTTAを率い、車両開発の現場ではロッシとも共闘したチーム代表のダリオ・ラモンダは「ロッシをチームに迎えることができて興奮している」と、ようやくのエース招集に期待を寄せる。

「彼は素晴らしい成績を残したドライバーであり、彼の加入はカローラGRS TCRの開発を成功させつつ、我々の野心的な目標を維持するのに役立つはずさ」

 そのトヨタ・カローラGRS TCRを走らせるトヨタ陣営の一角でもあるコブラ・レーシングは、昨年の昨年インテルラゴスで同チームから初参戦を果たしたシングルシーターとGTの経歴を持つ27歳、チアゴ・ヴィヴァクアのTCRサウスアメリカ、同TCRブラジルへのフル参戦を発表している。

「とても興奮している。僕にとっては新たな冒険になるだろうし、前輪駆動車は何か新しいものになるだろうが、僕自身はすでに同じモデルでインテルラゴスでレースをしたことがあるから、その経験が役に立つはずだ」と、昨季デビュー戦では9位を記録したヴィヴァクア。

「TCRへの参入は僕にとって素晴らしいチャンスだと考えている。TCRはブラジルと南米大陸の双方で成長しつつあるコンセプトであり、世界的な認知度も持っている」と、今季は両シリーズでトヨタ・カローラGRS TCRのステアリングを握るヴィヴァクア。

「このチャンピオンシップにより『FIA TCRワールドツアー』に出場する可能性も得られ、コンセプトの範囲内でさまざまな可能性が開かれる。今年レースの機会を与えてくれたスポンサーや支持者の全員に感謝している」

 さらに、昨季の段階でシリーズの相互交流に関する提携を結んでいたTCRスペインからは、新チャンピオンのエンリック・ボルダスが4月13~14日開催の開幕戦インテルラゴス“エンデューロ”への出場を表明。前出のパラディーニ・レーシングにジョイントし、ロッソやシャナントゥオーニらと並んでトヨタ・カローラGRS TCRをドライブすることになる。

 すでにこのプロモーター間の協力活動の一環として、昨季TCRサウスアメリカの初タイトルを獲得した18歳の新鋭イグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が2024年TCRスペインのプレイベントに出場しており、5月11~12日にハラマで開催されるチャンピオンシップ開幕戦にも出走する予定となっている。

 また、初代TCRサウスアメリカ王者でもあるW2プロGPは、引き続きチームデビューシーズンに2勝と合計5回の表彰台を獲得し、総合5位でフィニッシュしたガリッド・オスマンの残留をアナウンスし、昨季同様クプラ・レオン・コンペティションTCRで「さらに力強い1年をスタートさせ、TCRサウスアメリカのタイトルを目指して戦おうという意欲が湧いている」との強い決意を示している。

「僕自身はすでに同じモデルでインテルラゴスでレースをしたことがあるから、その経験が役に立つはずだ」とヴィヴァクア
TCRスペインからは、新チャンピオンのエンリック・ボルダスが4月13~14日開催の開幕戦インテルラゴス“エンデューロ”への出場を表明
初代TCRサウスアメリカ王者でもあるW2プロGPは、ガリッド・オスマンの残留をアナウンスしている

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