岸田政権の政策振り返り(1)、消えた「所得倍増」、いつしか「資産倍増」に転換

【家電コンサルのお得な話・175】早いもので、もう年度末。2023年度も支援金を中心に多くの国や自治体の政策等を当コラムで紹介してきた。そこで一度、これまでの「岸田内閣の政策」について、数回にわたって振り返ってみたい。

出典:自民党|岸田政権の取り組みと成果(2023年8月8日)

期待された「所得倍増」は説明もないまま「資産倍増」に

岸田内閣を振り返る際に難しいのが、「国民感情を逆なですることが多い」「発言をすぐに覆す」「外圧に弱い」など、国益・国民を考えた政策とは言い難いという声が多いことである。ここでは、ネットの声も参考にながら冷静に考えたいと思う。

まず、今回は当初に表明した「所得倍増」について取り上げる。「所得倍増」という言葉を聞いたとき、「岸田にすればやるじゃないか」と期待と希望を抱いた国民も多かった。

しかし、その言葉はいつしか、説明もないまま「資産倍増」に置き換えられた。「所得」と「資産」では意味が大きく違う。簡単に言えば、所得は給与の手取り額、資産は金銭・土地・家屋の保有になる。

当然のことながら、資産倍増となれば「持っている資産」が対象となる。投資余力のある富裕層には大きな恩恵があるが、現在、資産がない方々は切り捨てられたことになり、格差がより一層広がることに繋がりやすい。

資産所得倍増プランの「iDeCo」と「NISA」

こうした問題もある中、資産所得倍増プランが示され、iDeCo(個人型確定拠出年金)や2024年1月1日からは新NISA(少額投資非課税制度)が開始された。これは国民が投資することで、企業の成長に間接的に参加し、賃金以外の収入を得られるようにすることを狙いとしている。

また、資産所得倍増プランには「家計に眠る現預金を投資につなげる」ことが明記されているが、一部では、日本国民の最後の砦である「1100兆円超といわれる現預金」の海外流出が目的との指摘もある。

そういった目的があるかどうかは分からないが、外圧に弱く、世界のキャッシュディスペンサーと化している日本の現状を考えれば、不安に思う方がいてもおかしくはないだろう。

いずれにせよ、こうした投資で大切なのは「元本保証がなく、ゼロになるリスクがある」ということを再認識し、余剰資金で運営することである。株式投資の王道が長期保有であり、その企業を自分で見極めるということを考えれば、目先に惑わされず、慎重さを失わないようにすることが求められるだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

■Profile

堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。

© 株式会社BCN