プレミアリーグ3強時代へ突入?上位クラブの現状と優勝への考察【2023/24】

遠藤航(左)シュテファン・オルテガ(中)冨安健洋(右)写真:Getty Images

ここ数年のプレミアリーグは、ジョゼップ・グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティと、今季限りでの退任を表明したユルゲン・クロップ監督率いるリバプールの2強時代だった。しかし現在のプレミアリーグは、その争いにアーセナルを加え新時代へ突入しようとしているのかもしれない。

第28節終了時点での順位は首位アーセナルが64ポイント。次いで得失点の差で2位のリバプールが同じく64ポイント。3位のシティが63ポイントと、これまでに類を見ない熾烈な優勝争いとなっている。最後までわからない今2023/24シーズンのプレミアリーグ。本記事ではそれぞれ3チームの現状と優勝について考察していく。


アーセナル DF冨安健洋 写真:Getty Images

14年ぶりのベスト8は優勝への布石か

公式戦直近5試合にすべて勝利し、第28節終了時点で今シーズンのプレミアリーグ首位につけているのがアーセナルだ。3月12日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ2023/24ベスト16のポルト戦では、前半41分にFWレアンドロ・トロサールが得点を決めた。その後も試合は動かず1-0のまま後半終了時間を迎えたが、2月22日の第1戦でポルトが1-0と勝利しているため延長戦に突入。PK戦へともつれ込んだ試合は、ポルトの第4キッカーFWウェンデルソン・ガレーノのシュートをGKダビド・ラヤが止め、アーセナルが14年ぶりに悲願のベスト8へ駒を進めた。

昨2022/23シーズンはあと一歩のところでマンチェスター・シティに優勝を譲り渡す結果となってしまったアーセナル。優勝したシティに比べるとどうしても選手層の差に目が行く編成であり、DFウィリアン・サリバが負傷してからチームは失速気味で過密日程を闘い抜くための選手層が不十分だった。それに伴い今シーズンは積極的な補強を敢行。FWカイ・ハフェルツやMFデクラン・ライスの獲得、さらには昨シーズンまでの正守護神GKアーロン・ラムズデールに代わり、新戦力のラヤを積極的に起用し続けたこともチームとしてのレベルを一段階上へと押し上げた。

ポルト戦ではそれまで負傷離脱していたDF冨安健洋もベンチ入り。シーズン終盤へ向けて磐石の態勢が整いつつある。その強さは数字にも表れており、得点数70、失点数24という数字はどちらも今シーズンのプレミアリーグで最高の値だ。昨シーズンにはなかった強固な選手層とたしかな強さ、そしてそれを証明する数字とともに次節のシティ戦(第29節)で勝利が得られれば、優勝の可能性が一気に現実味を帯びる。


マンチェスター・シティ GKシュテファン・オルテガ 写真:Getty Images

ビッグシックスとの残り対戦数がカギ

しかしやはり、優勝の筆頭候補と呼べるのはいまだにマンチェスター・シティなのかもしれない。FWジャック・グリーリッシュの負傷といった懸念点もあるなか、直近5試合の成績は4勝1引き分けと優勝争いの座をキープ。昨シーズンの王者はその強さを保ち続けており、第28節で繰り広げられたリバプールとの首位攻防戦は多くのサッカーファンを熱狂させた(1-1)。しかし熱狂の代償は大きく、リバプールのPKへと繋がったFWダルウィン・ヌニェスとの交錯により、GKエデルソンが右足を負傷。最大で4週間離脱の可能性があるとイギリスメディア『BBC』が報じた。控えのGKシュテファン・オルテガもすばらしい選手ではあるが、シティのビルドアップを支えるエデルソンの負傷はアーセナルとのビッグマッチへの不安材料であることは確かだ。

その反面、シティは日程面で他クラブより若干優位な状況に置かれている。次節以降における残りのビッグシックス(※)との対戦はアーセナル4試合、リバプール3試合に対し、シティは2試合のみである(第29節アーセナル戦、第34節トッテナム戦)。もちろん、プレミアリーグではどの試合も油断することはできないが、この3チームがいずれもヨーロッパの大会に残っていることを考えると、リーグ戦のどこかでローテーションを行うことが全ての大会で優勝するために必要不可欠だと思われる。そして現時点でその機会に最も恵まれているのがシティだといえるだろう。

※マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、アーセナル、チェルシー、トッテナム


リバプール MF遠藤航 写真:Getty Images

優勝は遠藤航と若手の活躍次第?

直近5試合の成績は5戦5勝のリバプール。GKアリソン・ベッカーやDFトレント・アレクサンダー=アーノルド、FWディオゴ・ジョッタなど主力メンバーの負傷が続出しているなか、2月25日に行われたカラバオ・カップ決勝ではチェルシー相手にDFフィルジル・ファン・ダイクのゴールで1-0と勝利。今シーズン初タイトルを獲得した。

ユルゲン・クロップ監督退任のニュースは、チームの団結力をさらに深めるものとなったかもしれない。クロップ監督はカラバオ・カップ決勝というプレッシャーのかかる舞台で多くの若手選手たちにチャンスを与え、結果的にその試みは大成功した。特にDFジャレル・クアンサーとDFコナー・ブラッドリーは、第28節のシティ戦にもスタメン出場を果たし見事なプレーを披露。クロップ監督がチームとともに積み上げてきたリバプールのアイデンティティが、若手にも継承されていくことを予感させる瞬間だった。シーズン終盤にクアンサーやブラッドリーのような若手選手がビッグマッチを経験できたことは今後の優勝争いにおけるプラス材料であり、怪我人が戻ってくるまでになんとか勝ち星を積み上げたいところだ。

また、もっとも大きなプラス材料はMF遠藤航の完全なフィットかもしれない。シーズン序盤こそ懐疑的な目を向けられていた遠藤だが、その評価は第28節のシティ戦で確固たるものとなり、いまではチームに欠かせない存在である。遠藤はシティ戦でもフル出場を果たすと幾度となくボールを奪取。同試合におけるクラブのマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)を獲得した。遠藤がボールを刈り取り、MFアレクシス・マック・アリスターが供給するというコンビネーションは成熟を迎えており、リバプールは中盤の最適解を見つけることができた。だからこそいまの状態をキープするために、これ以上怪我人を増やさず勝ち点を積み上げることが優勝へ向けての最善だろう。


プレミアリーグのロゴ 写真:Getty Images

1試合も落とせない激戦

残すところ10試合となった2023/24シーズンのプレミアリーグ。1ポイント差で3チームがひしめき合う優勝争いは一分の隙もない。それぞれの強さと堅実さを考えれば、1試合の敗戦が優勝争いからの脱落を意味するだろう。UEFAチャンピオンズリーグとUEFAヨーロッパリーグも佳境を迎えるなか、サッカーファンにとって目が離せない数か月がはじまる。

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