「12歳年下の男」に口説かれて…。勝ち組女性が溺れた不倫沼と、その末路【エリート銀行員たちの不倫事情】後編

後輩を利用して案件を成約させようとする、メガバンクで働くマキさん(仮名・40歳)。彼女の大学の後輩である慎也さん(仮名・28歳)は、マキさんの取引先に帯同することになりました。

ここまで思惑通りに来ていますが……衝撃の展開を迎える後編を紹介します

「慎也さんは皆に愛されるタイプなんでしょうね。子会社の担当とも親しいとのことでした」

自分と一緒にいたいというわけではない、仕事で来てくれるだけだ。40代のオバサンなんか、20代の好青年なんて興味がないだろう……そう言い聞かせながらも、帯同する日はいつもよりも服を丁寧に選び、メイクをきちんとしていきました。

昼過ぎにA社のエントランスで、慎也さんと待ち合わせしました。既に来ていた彼を見かけてがっかりしたのは、背が低かったこと。しかし声の出し方や表情の作り方は、電話で聞いていた通りでした。

緊張するマキさんに、慎也さんは『大丈夫ですよ。僕がいますから』と言って、手を握ってくれました。男性から手を握られるのなんて、思い出せないほど昔でした。『手、小さいですね』と微笑む彼に、心音が高まります。それは交渉だけが原因ではないことは、しばらく恋愛をしていない彼女にも分かりました。

「親会社の銀行担当者も来てくれたことで、相手の担当も心なしか嬉しそうでした。銀行のお客さんって、課長や支店長など担当者より上の人を出してもらうと、嬉しそうにするんですよね」

自分が大切にされていると思うからなのでしょう。「それは私も同じだわ。今まで私のことを大切にしてくれた人なんて、いなかったから……」と、彼女は思っていました。握られた手が離された後も、その考えは頭を離れませんでした。

A社との交渉は、和やかな雰囲気で終わりました。「前向きに検討していくね」とにこやかに握手を交わせて、手ごたえもありました。『じゃあ、これで』と彼女が言いかけると、慎也さんは手をつかんできました。

『こんなオバサンに何の用?』と聞くと、『オバサンになんか見えませんよ』と彼は言います。

彼女は同期の女性たちのことを思い出しました。オフィスのトイレから戻ってくる時に、変な厚化粧になっている事務職の女性を。季節限定のスナック菓子が入っているレジ袋を揺らし、疲れた顔で自転車を漕いでいる40代たちを。彼女たちは遥さんであり、遥さんもまた彼女たちの一部だと思っていました。しかし……

『40代の女性が一番輝いています』と慎也さんは続けます。『30代女性の”いつまでも主役は私”という図々しさもない。知識のなさを勢いで乗り越えようとする20代の愚かさもないんです』と。

マキさんは、彼の手を握り返しました。その日の夜に二人は飲みに行き、体を重ねました。彼との逢瀬は渋谷でした。かつては人が多く苦手だった渋谷が、大好きな街に変わった瞬間でした。

その週の金曜日、取引先からは「利率の引上げ」、営業本部からは「親会社の減枠」のOKをもらいました。慎也さんから『前祝いしましょう!』と誘われて渋谷で飲み、ホテルで身体を重ねているとき、遥さんは不安になりました。「案件が成功して、彼氏ともうまくいっている。なんだか怖いくらいだわ」と。

彼女は慎也さんの手を握りました。今の幸せから、転がり落ちないように願って。

しかし不安は、的中することになるのです。

急展開。二人の末路は

急展開。二人の末路は

週明けの月曜日は、慌ただしくスタートしました。銀行の”異動日”で、人事辞令が発表される日なのです。全国に本部や支店があるメガバンクでは、地方転勤も起こります。どこか他人事のようにその様子を眺めていると、マキさんの内線が鳴りました。慎也さんからでした。

『異動のこと、聞きました?』と彼は話します。「まさか、慎也さんが?」と思いましたが、彼ではないとのこと。胸をなでおろしたのも束の間、彼は言いました。『僕の上司です。あの会社の案件、やっぱり考え直せって……』

遥さんは目の前が真っ白になりました。取引先には既にOKをもらっています。「どうにかならないの?」と彼に聞くも、「新しい上司との関係性がないので、何ともできません。ちょっと上司の異動で僕もバタバタしてるので、この辺で」と電話を切られてしまいました。

結局その案件はできず、「忙しくて会えない」と慎也さんに断られ続けて、彼との関係は終わってしまいました。課の目標も達成できず、表彰もなし。慎也さんとの関係を深めたいがあまり、A会社の案件ばかり打ち込んでいたのです。「これでは次の昇格も見込めないな」と彼女は悟りました。戦いは、終わったのです。

恋も仕事もうまくいきませんでしたが、不思議とマキさんの心は晴れやかでした。

「戦い続ける人生に、どこかで疲れていたんでしょうね。慎也さんとの日々は”仕事と育児だけが人生じゃない”と気付かせてくれる、貴重なものでした」

“自分を大切にする”ことの重要さに気付いたマキさんは、今ではマッサージやママ友とのランチなど、仕事と育児以外のことにも時間を使うようになりました。中でも一番のお気に入りは、渋谷の街を歩くこと。歩いていると、慎也さんとの日々を思い出すからです。彼は辞令が出て、仙台へ異動してしまいました。

「最近、渋谷でお気に入りスポットを見つけたんです。それは展望台で、一緒に飲んだビルもホテルも見えるんですよ。空が澄んでいる日は、どこまでも見通せそうな気がします」

でもさすがに慎也さんの今いるところまでは、もう見えませんでした。

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