Qi10 ドライバーを筒康博が試打「ライバルは『ステルス2 HD』」

新機軸10Kのスタンダードモデル ご意見番クラブフィッター評価は!?

カーボンウッドだからこそ実現できた新たなヘッド構造により、やさしさの世界基準“10K”を打ち出したテーラーメイド。上下左右の慣性モーメント合計値1万超えを果たした「Qi10 MAX ドライバー」の兄弟モデル、飛距離と寛容性をバランスよく兼ね備えた「Qi10 ドライバー」をピックアップする。ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?

「やさしいのは『MAX』だけじゃない! 安心感を抱ける意外性」

「―MAX」よりは右へ行くケースは増えたが中弾道の強い球筋に

―率直な印象は?
「『―MAX』のような新しいシルエットではなく、前作までの形状を踏襲しつつ、それでいて安心感を抱くことができるサイズ感が特徴です。意外と投影面積が大きく、ヘッド後方の広さがやさしさを連想させてくれます。シャフトの色味の効果なのか、視覚的にクラブが短く見えるほど(実際は45.5インチ/Diamana BLUE TM50)、ヘッドの存在感が大きい。どんなスイングでもスイートエリアに当てることができそうな、不思議な落ち着き感が伝わってきます」

オーソドックスなヘッド形状に寛容性をプラス

―スタンダードモデルなのにそこまで…?
「はい。『―MAX』の投影面積と比べれば小さいですが、他社のツアーモデルと比べれば、かなりつかまり具合の高い部類に属するでしょう。フェースがクローズすぎたり、オフセットが大きいわけではなく、スッキリした見た目なのにどことなく安心感が抱ける。兄弟モデルの中でよりプロ仕様の『―LS』でさえ、前作のスタンダードモデル『ステルス2 ドライバー』と同レベルに(安心感が)見えます。昨年までのシリーズに少しハードさを感じていた人からすると、アジャストする可能性が広がったといえるでしょう」

程よい高慣性モーメントを実現する21gバックウエート

―2021年発売「SIM 2 MAX ドライバー」に類似しているという声が多いようですが?
「発売して3年が経った『SIM2 MAX』ですが、いまだに使用しているアマチュアゴルファーも多い名作です。同じブルーを基調としたカラーリングなので連想する人も多いと思いますが、今回ほど慣性モーメントにフィーチャーしていなかったと記憶しています。モノコック構造のミルドバックフェースカップが、慣性モーメントを拡大させてはいましたが、カーボンフェース搭載モデルとは別もの。打感と球持ち、振り心地の面では大きく異なるという認識です

赤から青に変化した第3世代カーボンフェース

―あえて気になるデメリットは?
「今シリーズの3機種の性格も見た目も、それぞれの個性が際立ちすぎて、選びやすい半面で、シリーズ内のモデル選びの楽しみが減ってしまったデメリットも感じます。スタンダードならスタンダード、『―LS』なら『―LS』と、試打する前から対象モデルが決まってしまう。これまでは同社の別ライン『グローレ』シリーズとは一線を画し、方向性がある程度決まっていたなかで、性格の異なる3種類をそろえてきましたが、今作は3機種の違いが大きすぎて逆に面白みに欠けてしまう部分があります」

左がスタンダードモデル 右が「―LS」

―「Qi10」の類似モデルは?
「最大のライバルは、他社ではなく同社の過去モデル『ステルス2 HD ドライバー』ではないでしょうか。先ほども述べましたが、カーボンフェースが生み出す打感と打音は唯一無二で、ライバルは他社にはいない。初代『ステルス』は3機種ともが難しく、二代目『ステルス2』、中でもハイドローモデル『HD』が今作と類似したやさしさを有しています。マークダウン(値引き)された前作か、最新モデルの性能を享受するかが悩ましいところ。そういう面では『ステルス グローレ ドライバー』も候補に挙げられるでしょうか」

「従来までの同社ファンはスタンダードモデルかLSになるのでは」(筒)

―どのような人向き?
「同社の歴代モデルは、所属のタイガー・ウッズやロリー・マキロイ(北アイルランド)の使用コメントを聞いたり読んだりして、発売直後から積極的に動く人に支持されてきました。今作も例外ではなく、情報通でしかも年齢の若いゴルファー向けになるでしょう。ここまで寛容性を高めていれば、正直、経験や腕前は関係ないと思えるからです。常にギア情報にアンテナを張り、新しいテクノロジーについて詳しい人こそ試してもらいたい。そんな方ほどゴルフ熱が高くて熱心な分、『―MAX』ではなくスタンダードモデルにハマるゴルファーだと思います」

ライバルのステルス2 HD評(4.3点)より+0.2【総合評価4.5点】

【飛距離】4.5
【打 感】4.5
【寛容性】5.0
【操作性】4.0
【構えやすさ】4.5

・ロフト角:10.5度
・使用シャフト:Diamana BLUE TM50(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン