「おばさんなのに、おばさん構文使わないんですね」。47歳の短文LINEに職場がざわつく

絵文字や赤いビックリマークを多用すると「おじさん構文」「おばさん構文」などと言われるし、句点をつければ「マルハラ」と怖がられる。大人世代が「おばさん構文」を使わないとまた、ぶっきらぼうな印象を与えるケースもあるようで……。

LINE等のSNSでメッセージを送るとき、絵文字やビックリマークを多用した、いわゆる「おじさん構文」「おばさん構文」は若者に嫌われるという。 最後に句点をつけると「マルハラ」と言われたりもする。いったい、どうすればいいのと中高年からの嘆きが聞こえてくる。

「おばさん構文」を作れない47歳の短文に物議

「私は子どもたちとのやりとりも多いし、もともと文章を書くのは大の苦手。だから手紙はもちろん、メールだってめったにしません。絵文字もハートも面倒だから入れない。逆に『おばさん構文』を作れないタイプなんでしょうね」 そう言って苦笑するのはセイコさん(47歳)だ。結婚して20年、パートで働きながら18歳、16歳、12歳の3人の子を育ててきた。夫は出張が多く、ほとんどワンオペでがんばったと今は感じているが、当時は夢中だったという。 「携帯を持つ時期も、スマホに切り替える時期も遅かった。そもそもデジタル機器系は大嫌い。面倒だったけど、学校との連絡手段がスマホでないとむしろ不便になってきたり、日常生活のいたるところにスマホが入り込んできたので、今だって渋々やっている」 職場での連絡もLINEがほとんどの今、セイコさんの文章が簡潔すぎるとパート仲間で話題になっているそうだ。 「パート先は20代から60代まで、女性が多いんです。一応、職種によってグループがあるので、そこでのやりとりがほとんどですが、中には連絡を受けて雑談みたいな返事をしている人もいる。 だいたいパート仲間のグループでは仕事をする日を代わってほしいというのが多い。上司からは急に何日にシフトに入れるかとか。私は常に『了解』『〇日なら入れます』『その日は無理』の3パターン」

簡潔すぎる短文で「怒ってる?」と聞かれる事態に

言い訳つきで返答をする人が多い中、セイコさんは一切状況には触れず、大丈夫か無理かしか伝えない。そのほうがわかりやすいだろうという意図があるのと、ぐだぐだ書いても誰も読まないだろう、答えだけでじゅうぶんだという思いもある。 「そしてもっと大きな理由は、私が面倒くさがりなこと。LINEのメッセージを打つのって時間がかかるんですよ。パートが終わったらすぐに夕飯を作らないといけないから、とにかく私には時間がない。 最近は近所に住む義父母が弱ってきて、時間があればそちらにもいかなければいけないし。だから3パターンしか書けない(笑)」 同世代からは「怒ってる?」と聞かれることもあるという。

若い子からも「愛想なさすぎ」と言われ……

同世代からは「いつもぶっきらぼうね」と言われているとセイコさんは笑う。つい最近、若い世代に「セイコさん、愛想なさすぎですよ」と冗談交じりに言われたそうだ。 「だってあなたたち、絵文字入れたらおばさん構文だって言うでしょと言ったら、『程度の問題です』という返事でした。 『セイコさんはいつも明るくて楽しいから、あの調子で返事が短いんだと私たちはわかるけど、新人の子が怖がってましたよ』ですって。そんなこと言われてもねえ、いったいおばさんはどういう文章を書けば、『いいおばさん』になれるんでしょう」 短文でわかりやすく、なおかつ愛想がないと感じさせない文章と考えると、非常に難しいものに思えてくる。セイコさん自身は、短文3パターンを駆使するだけだと開き直っているが、職場には「気にしてLINEができなくなった仲間もいる」そうだ。 「繊細な人は、こういう文章はどう思われるだろうと気になって返事が遅くなったりするみたいです。そんなこと気にしなくてもいいよと言っても、気にする人は気にする。 だから職場連絡に限っては、どういう返事があっても、誰も怒ってないから気にしないことと上司から伝えてもらいました。わかりやすいのが一番ということにしよう、と」

「おばさん構文」による“分断”を避けなければ

そうでもしないと、「おばさん構文」を書いてしまう人と、それを神経質に考えてしまう人とに分断されてしまう。職場でそういうことがあってはいけないとセイコさんは言う。 「そしてLINEのやりとりで何か気になることがあったら、実際に顔を見たとき話そう、とも決めたんです。文章だけじゃ誤解が生じる。便利になると不自由になるねと職場のみんなと話しています」 セイコさんはパート仲間の中でも最古参なので、「私が一番ぶっきらぼうです」と新人には必ず伝えるという。LINEがぶっきらぼうでも、怒っているわけではない。そう思ってもらう必要があるのだ。 「それがみんなに浸透するようになってから、おばさん構文だのなんだのと話題になっても、みんな笑いながらオープンに話しています。どうせ私が一番ぶっきらぼうだからね、と私も笑いをとって……。何でも話せる職場がいいですからね」 些細なことを気にして不快な思いをするより、オープンに言い合ったほうがずっと風通しがいい。セイコさんはそれを信じている。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。 (文:亀山 早苗(フリーライター))

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