横行する悪質な「下請けいじめ」無理でも減額要求の圧力…その問題点を専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。3月13日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「日産自動車の下請法違反 中小企業の賃上げへの影響は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです

◆日産自動車が下請法違反 長年続いてきた「下請けいじめ」

公正取引委員会は3月7日(木)に、日産自動車が下請けの部品メーカー30社余りに対し、納入するときに支払う代金を合わせておよそ30億円を一方的に引き下げていたことが、下請法に違反するとして、再発防止などを求める勧告を出しました。

吉田:塚越さん、この下請法違反について教えてください。

塚越:公正取引委員会によると、日産は2021年1月〜2023年4月の間で、タイヤホイールやエアコンといった部品を作る全国36の下請け業者に納入代金を支払う際に、発注時に決めた金額から支払いを3〜5%減額していました。

この減額分は「割戻金」や「一時金」といった名前にして、日産側が決定していました。36の下請け業者のうち、6社の減額分は1億円を超えていて、中にはおよそ11億円も減らされた業者もいたということです。

日産は、日産本体の収益向上が目的でこうしたことをおこなっており、前年度の納入価格を基に減額割合の目標値を設定するだけでなく、社員ごとの目標達成状況もチェックしていました。

つまり、違法な減額を最初から組織ぐるみでおこなっていたことになります。下請け業者は、「それはありえない」と減額要求を断ると圧力をかけられた業者もあったとのことです。また、強く出ると取引が打ち切られる可能性もあり、減額は拒めない状況でした。

同時に、日産の担当者は「長年続いてきた手法で、違法性の認識はなかった」と述べています。これは、違法な減額が習慣化=当たり前になってしまっていたということが読み取れます。今回のおよそ30億円の違法な減額は、1956年に下請法が施行されて以来、認定額としては最高とのことです。

日産は違反を認めて、今年1月末に各業者に減額分を全額支払いました。ただ、違法と認定されたのは2年程度ですが、同様の行為は遅くとも1990年代から続いていたとみられているので、こうした違法行為が常態化していたことがうかがえます。

◆違法な下請けいじめを取り締まる「優越Gメン」 来年度は100人に増員

吉田:読売新聞は「大企業による下請けいじめは横行している」と報じており、日産以外の会社でも問題になっているようですね?

塚越:そうですね。読売新聞によると、自動車業界では他にも、マツダが2008年と2021年に違法減額で公正取引委員会から勧告を受けており、2022年度の自動車業界に対する指導件数はおよそ200件もありました。また、全業種への勧告指導件数は過去最多の8,671件となっています。

政府は、高騰する材料費などを価格転嫁、つまり適正な価格に引き上げる取り組みを進めて、中小企業の賃上げを狙っています。そのため公正取引委員会もこうした大企業と下請けの取引をチェックしており、去年11月には労務費(製造コスト)の適切な転嫁に向けた指針も、内閣官房との連名で作成しています。

そうしたなかで2022年12月、下請け業者と協議しないで取引価格を据え置く判断をした、つまり値上げ交渉などをしなかった(下請け業者からの値上げ交渉の場を設けなかった)として、佐川急便やデンソーといった13の企業団体を公表する異例の措置も実施しています。

また、これは3月12日(火)のニュースですが、コストコホールセールジャパン株式会社も2021年11月~2023年12月に、プライベートブランドのケーキや総菜を作る下請け業者・計23社に3,550万円の支払代金を下げていたということもあり、公正取引委員会から勧告を受けているとのことです。

公正取引委員会は2022年に、有利な立場で下請け業者に不利益を与えていないかを調べる「優越Gメン」を創設。最初は16人だったのが現在は67人、新年度は100人に増員するとのことです。公正取引委員会の幹部は、習慣化している下請けいじめを一掃する必要があるので、不当な圧力を受けた中小企業は情報提供をしてほしいと述べています。

◆長年の悪習によって賃上げが妨げられてきた?

ユージ:この問題、塚越さんはどうご覧になりましたか?

塚越:日産だけの話ではなく、すべての業種に関わる問題です。商習慣のなかに、こういったものができあがってしまっています。日経新聞は、こうした不正が長期的なデフレ状況を作り、賃上げを抑止してきたのだと指摘しています。つまり、下請けに我慢してもらうことで低価格を維持して、それがデフレにつながったり、賃上げにつながらなかったりしたとのことです。

とにかく(状況を)変えましょうということで、先ほど挙げたデンソーや佐川急便は、社内で価格転嫁に関して監視する社内の組織を立ち上げています。「違法な商習慣を止めましょう」ということで、少しずつ価格転嫁、つまり下請け業者が価格設定を上げることができるようになってきたということです。

こうしたことは、短期的な業績や社員の成績を意識させすぎると不正が生じやすくなるので、人を追い詰めないということが大事です。いずれにしても、違法に価格を下げることは良くないと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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3月13日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年3月21日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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