「ありがとう」と言って母は…介護に限界の50代の娘<特養>に入居する母を見送り号泣「なんて親不孝なことを」

誰もが直面する「親の介護」。そんな日が来ることが想像できず、「もし親に介護が必要になったら」の準備ができていない人が多くいます。実際に親の介護に直面したら……頑張りすぎて限界を迎えることも珍しくありません。そうなったら老人ホームに頼るのがひとつの解答ですが、そこには親も子も葛藤があるようです。みていきましょう。

親の介護、何が不安ですか?

あんなに大きかった「親」という存在が小さくなっていく……誰もが「親の老い」を目の当たりにする経験はするもの。そこで頭をよぎるのは、「介護」の問題です。

PGF生命が行った『「おとなの親子」の生活調査2023』で、「親の今後やサポートについて、不安やリスクを感じることは」と尋ねたところ、トップは「健康状態・病気」で63.2%。「認知症」45.2%、「生活費」13.8%、「相続」13.4%と続きました。また同居親子と別居親子で比較すると、同居親子のほうが「認知症」と「生活費」の回答が別居親子よりも10ポイント前後高い傾向にありました。

次に親の介護について具体的な不安を聞いたところ、トップは「精神的な負担」で27.8%。僅差で「体力的な負担」が26.7%。「介護と仕事の両立」22.6%、「介護に関する情報や知識が足りない」20.1%、「介護費用が足りない」18.3%と続きます。

そんな親の介護、準備の進み具合について聞くと、「具体的な準備をしている」は43.3%、「具体的な準備はしていない」は56.7%。さらに「具体的な準備をしている」と回答した人を年齢別にみていくと、「40代」が34.4%、「50代」が40.9%と半数を下回りましたが、60代では54.7%と半数を超え、「親の介護」に対して具体的な準備に迫られるターニングポイントだといえそうです。

実際にどのような準備をしているか尋ねると、最も多かったのが「きょうだい間での話し合い」で44.8%。「親の希望の確認」が39.8%、「公的な介護サービスの確認」が26.8%、「専門家・ケアマネジャーへの相談」が25.8%と続きます。

このように親の介護に対しては不安を抱きつつも具体的な準備は不十分の人が多いことが分かります。80代になる1人暮らしの母が脳卒中がきっかけで要介護3になったという、50代女性もそのひとり。3人きょうだいの末っ子でしたが、近くに住む女性が住み込みで介護をするようになったといいます。

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』によると、介護が必要となった主な原因のトップは「認知症」で16.6%。「脳血管疾患(脳卒中)」が16.1%、「骨折・転倒」が13.9%と続きます。また要介護1~3のトップは「認知症」であるのに対し、要介護4、5のトップは「脳血管疾患(脳卒中)で要介護度が高くなる傾向にあります。

「もし介護が必要になったらどうしたい?」と親に希望を聞いていたが…

急に母親の介護をすることになった50代女性。初めは介護休暇など、会社の制度を利用しながら仕事と介護を両立させようと考えましたが、繁忙期には帰りが深夜になることも。そんな状況のなかで親の介護をこなしていくのは大変なことでした。

他のきょうだいにも助けを求めましたが、自宅があまりに遠く、現実的に考えて難しい……肉体的に限界を超えてしまい、疲労で入院。「もう自宅で介護は無理かもしれない……」と考えるようになったといいます。

そして、1週間ほどで退院したとき、母親から「老人ホームに入りたい」と話があったといいます。

――もう、あなたの負担になりたくない

――施設に入ったほうがラク

そう母はいうものの、初めは拒否したと女性。なぜなら、母親が倒れる前の正月休み、「もし介護が必要になったらどうしたい」と聞いた際「死ぬまで自宅にいたい」と言ったから。女性としても「自分で親を介護したい」という思いもあったといいます。

話は平行線を辿りましたが、最終的に折れたのは女性のほう。現実的に仕事との両立は難しく、このままでは介護離職の可能性も。そうなると経済的にも困窮することが目に見えていました。

母親の入居が決まったのは、「特別養護老人ホーム」。いわゆる特養。待機者は多いと聞いていましたが、介護度から優先度が高いと判断され、スムーズに入居することができたといいます。

――入居の日、母が「いままで本当にありがとう」って……

スタッフに車椅子を押されて自室に向かう母の背中をみて、涙が止まらなかったといいます。

――介護が必要になったら施設に入りたい? それとも自宅で介護してもらいたい?

きちんと親の希望を聞いておきながら、叶えられなかった自分に後悔しかないという女性。「なんて親不孝なことをしてしまったのか……」と、自問自答する日が続いています。

[参考資料]

PGF生命『「おとなの親子」の生活調査2023』

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』

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