論破王のひろゆきさんと、20年以上、寝食をともにしてきた西村ゆかさん。強烈に我が強い人物と過ごす日々は、ひと筋縄ではいかないことばかりだった。ゆかさん、そして2人の間に起きた、人生の「CHANGE」を聞いてみた。【第1回/全4回】
「よろしくお願いします」取材場所に入ってきた西村ゆかさん(45)は、柔らかく控えめな雰囲気をまといつつも、しっかりした芯を持っているように感じられた。なにしろ、あのひろゆきさん(47)と長年、渡り合ってきたツワモノなのだから、それも納得だ。しかし、話を聞いてみると、最初から芯が強かったわけではなかった。
そのうち結婚するものと思っていた
ゆかさんがひろゆきさんとつきあいだしたのは、2004年のこと。そこから14年にフランス移住でのビザ取得の関係上、入籍をするまで事実婚状態が続くのだが、08年に「結婚式」だけを挙げている。どんないきさつがあったのか?
「私自身が、ずっとつきあっていれば結婚するものという価値観の世代で育ったので、自分もひろゆきくんと結婚するんだろうなと思っていたんです。ただ、彼は制度としての結婚に意味を見出していないタイプで、“子どもがいるなら別だけど、2人でいてお互いに普通に好きで、一緒にいようという思いが共通しているならそれで良くない?”って言われたんです。私も“それはそうだよな”と思ったんですけど」
頭では納得できたのだが、ゆかさんの中で引っかかるものがあった。
論破王を論破
「ウェディングドレスは着たいんだけどって、ずっと思っていたんですよ。最初はなんとか結婚という方向にいかないかと、“私のこと好きじゃないの?”って言ったり、ちょっと頑張ってみたんですけど彼は変わらなくて。ダメか、ドレス着られないじゃんって思っていたときに気づいたんです。私は結婚がしたいんじゃなくて、ウェディングドレスを着るために結婚式がしたいだけなんじゃないかって」
本人の中での気づき。これが大きかった。
「それを彼にそのまま言ったんです。“私がしたいのは結婚じゃなくて結婚式でした”って。そのときはこんなウェディングドレスが着たいって具体的なイメージもあったので、こんなのが着たいって彼に見せて、“あなた、私のこと好きでしょ? これからも一緒にいたいでしょ? それなのに好きな私の夢を奪うの?”って言ったら、“じゃあ、結婚式をしよう”って、言ってくれたんです」
論破王を論破したのだ。
「よっしゃーって思って。私が準備するからなにが嫌かだけ教えてって聞いたら、2ちゃんねる絡みのことで変な人が会場に来ると面倒だから、国内じゃないほうがいいって。だから、私が海外の式場を探すからって、全部、自分で準備して結婚式を挙げたんです」
世間の常識より自分の意志
「私の中での結婚は、大切な人たちに見守られながらウェディングドレスを着て、好きな人とこれからも一緒にいましょうねって約束することだったんで、事実婚かどうかというのは、けっこうどうでもいいことなんです。最初に、一緒にいれば結婚するものと考えていたのは、まわりに流されていたんでしょうね。
ただ、普通はそうでしょ、みたいな世間一般の常識みたいなものって、自分の意志ではないですからね。じゃあ、その常識に従わないと、なにか不都合が発生するかと考えると、特にないから別にいいんじゃないのって。そう変わったのはやっぱり、彼の言葉がきっかけだったと思います」
「前は30歳とかになると、まだ結婚しないの? とか言ってくるような時代でしたけど、結婚式をすると言われなくなるんですよ。籍を入れたかどうかなんて、誰もわからないじゃないですか。おまけに念願のウェディングドレスも着られる。よし、解決って、自分の中でも納得がいきましたね」
世間の常識にとらわれず、一歩引いて観察し、自分にとって本当に必要なことを見つけていく。結婚、そしてひろゆきさんの言葉をきっかけに、ゆかさんは大きく変わったのだ。
西村ゆか(にしむらゆか)
1978年東京都生まれ。インターキュー株式会社(現GMOインターネット株式会社)、ヤフー株式会社勤務を経て独立。現在はフリーのWEBディレクターとして活動。2008年に西村博之(ひろゆき)と結婚式を挙げ、2014年に入籍してフランスへ移住。著書は『だんな様はひろゆき』(原作・西村ゆか/漫画・wako)。近著は(徳間書店)。