物価が毎年2.0%ずつ上がる場合、私たちはどのように家計管理を行っていけばいいのでしょうか?

物価が毎年2.0%ずつ上がることの家計内での意味

図表1は、左側が「家計簿」、右側が「資産・負債表」です。

図表1

※筆者作成

物価が毎年2.0%ずつ上がる場合、例えば、食費や日用品費などの基本生活費も毎年2.0%ずつ増加します。大まかにいうと、支出が毎年2.0%ずつ増えると考えておく必要があります。支出が毎年2.0%ずつ増えてしまうと、収入から支出を差し引いた純利益(余るお金)も毎年2.0%ずつ減っていきます。

純利益が毎年2.0%ずつ減るということは、右側の「資産・負債表」では、資産(ここでは現預金とする)が毎年2.0%ずつ減ることを意味します。仮に負債が変わらない場合、資産から負債を差し引いた純資産も毎年2.0%ずつ減り、家計の体力は徐々に落ちていきます。

支出を減らし、収入を増やすことで、お金は貯まりやすくなる

物価が上がり続けるだけなら単純に家計は悪化していきますが、そのような状況を抑制するためにはどのようにすればいいのでしょうか。家計簿内でできることは、「収入を増やす」、「支出を減らす」の2つです。

物価が上昇してきたなかでいろいろとやりくりを工夫し、支出を減らす努力を重ねてきたご家庭は多いように思いますが、おそらく、これ以上の工夫はなかなか難しいというのが本音でしょう。

仮に、支出を減らすことが限界に近づいているとするなら、あとは収入を増やすしか方法はありません。例えば、物価の上昇率が年2.0%である場合、収入の増加率も年2.0%であれば、純利益は±0で変わりません。

現在、国は賃上げを積極的に推し進めようとしています。これはデフレから脱却し、景気を回復させるための一つの方策ですが、仮に毎年2.0%ずつ物価が上がり、賃金上昇率が年5.0%だとすると、純利益は毎年3.0%ずつ増える計算になります。

ただし、注意点が一つあり、物価が上昇していくなかで税金や社会保険料の支払いが増えてしまうと、その分、家計へのダメージも増えます。

支出を減らそうと家計を工夫し、収入がいくらか増えたとしても、増税や社会保険料の負担増が純利益を圧迫してしまうため、さらなる対応が必要になります。

資産を増やし、負債を減らすことで家計の体力は高まる

次に、資産・負債表内でできる工夫ですが、その方法は「資産を増やす」と「負債を減らす」の2つです。

資産を増やすことについては、国は「貯蓄から投資へ」のスローガンの下、2024年から始まった新たなNISA(少額投資非課税制度)を通じて積極的に投資を推奨しています。

投資をすることで資産が増え、仮に負債が変わらないとした場合、家計の体力である純資産が増加します。ただし、投資を行う際は、損失を被る可能性があるため、投資や経済についてある程度学びながら実践していく必要があります。

また、負債を減らす場合、物価が上昇し、お金の価値が目減りするわけですから、なるべく早くローンなどの借金を返済することが求められます。このような工夫を通して、純資産を増やしていきます。

まとめ

経済成長が伴う物価の上昇なら、賃金も上昇し、その結果として物価が上昇していくわけなので何ら問題はありません。

しかし、現在の物価上昇は、景気の回復よりも早くモノの値段が上がってしまったことから、通常の景気回復を実現させるためには賃金の引き上げが必要で、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回るのに時間がかかります。

そして、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回るようになると、そこから本当の意味で景気の回復が始まりますが、景気が回復していくと、通常、徐々に物価は上がります。問題は賃上げが毎年続くかという点です。

収入の増加が続く方もいれば、そうではない方も出てくるでしょう。仮に賃上げによる家計への恩恵が少ない場合、収入を増やすための工夫がさらに必要になってきます。

今後の収入について自分の場合はどうなのか考え、家計をしっかりと管理していくことが、これまで以上に求められるのではないでしょうか。

執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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