西島秀俊が“天才”で“家庭的”な“理想の上司”に 『さよならマエストロ』で見せた集大成

TBS日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』で、数々の有名オーケストラと共演してきた才能あるマエストロ(指揮者)の夏目俊平を演じている西島秀俊。いよいよ最終回を迎えるが、ギクシャクしていた娘の響(芦田愛菜)と、音楽を通して5年ぶりに心を通わせた俊平は、音楽家として、恩師のシュナイダー先生(マンフレッド・W)からもっと学びたいという想いと、晴見フィルへの想いとの間で揺れる。これまで数々の役を演じてきた西島だが、俊平役は彼のキャリアの集大成のように感じる。

西島の代表作の一つである『チーム・バチスタ』シリーズ(フジテレビ系)では、多くの患者を治療し、最前線を切り抜けてきた救命救急センター部長で、“ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)”の異名を持つ天才救命医・速水晃一を熱演した西島。冷静沈着で、感情を表に出さない、クールな医師役を見事に演じこなしていた。

連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)では、清原果耶が演じるヒロイン・永浦百音が気象予報士を目指すきっかけとなる、ベテランの気象予報士の朝岡覚を演じた西島。朝岡は、百音が就職することになる気象情報会社「ウェザーエキスパーツ」を支える人気お天気キャスターとしても活躍しており、明るく前向きな人物。石ノ森章太郎の大ファンだというところも面白く、百音を導いてくれる理想の上司だ。

現在も続く、非常にファンが多い西島の代表作『きのう何食べた?』シリーズ(テレビ東京系)では、内野聖陽が演じる美容師で恋人の矢吹賢二と一緒に暮らす、弁護士の筧史朗を好演している。几帳面で料理が得意な史朗は、賢二のためにおいしい食事を作るという家庭的な面があり、倹約家であるため、スーパーで商品の値段を吟味する姿も見どころ。西島の優しい表情が視聴者を惹き付け、内野との名コンビぶりは、毎エピソード観ていてほほ笑ましくなる。

医師や気象予報士、料理上手な弁護士など、器用で敏腕なイメージのキャラクターを演じつつ、西島がその役に扮することで人間味を大いに感じられ、作品を観るのが楽しみになる。『さよならマエストロ』の俊平役は、“天才”であり、団員たちにとって“理想の上司”のような存在で、家族との関係も大切にしようと心掛ける“家庭的”な面を持っている。まさに、これまで西島が演じてきたキャラクターの魅力を集めたような人物ではないだろうか。

音楽以外ではポンコツなところがたくさんあるのが、また愛らしい俊平だが、家族も仲間も音楽も同じように大切にしている彼だからこそ、どのような決断をするのか見守りたい。俊平、そして彼の家族や団員たちに、さまざまなことが起きてきた『さよならマエストロ』。最終回のラストシーンまで、目が離せない。
(文=清水久美子)

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