脱炭素計画策定遅れ 福島県内14市町村、見通し立たず 人手不足や災害対応背景

 福島県が2024(令和6)年度末までに県内全市町村での策定を目指している地球温暖化対策実行計画(区域施策編)について、県内の少なくとも14市町村で策定の見通しが立っていないことが、福島民報社の取材で分かった。さらに2月末時点で策定を完了させたのは、県の目標の約半数にとどまっている。人手不足や災害からの復興を優先せざるを得ない状況が背景にある。2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す県は、目標達成は難しくなるとして、アドバイザーを派遣し市町村の計画作りを後押ししている。

 

 実行計画は、地球温暖化対策推進法に基づき、都道府県や中核市などに義務づけられており、その他は努力義務となっている。地域の実情に応じて二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量の削減目標や再生エネルギーの導入促進、ごみの削減などの具体的な施策を盛り込む。

 県によると全59市町村のうち、2月末時点で福島、郡山、いわきの中核市3市を含めた26市町村で策定を終え、33市町村が未策定。県は今年度、50市町村の策定を目標に据えている。

 福島民報社が未策定の33市町村に取材したところ、3町村が今月末までの策定を見込んでおり、14市町村が2024年度末までに策定する予定だった。2村からは16日までに回答を得られなかった。

 実行計画の整備には、地域の産業や生活に関わる膨大な情報を収集し、分析しなければならない。会津地方の自治体の担当者は「限られた人員の中でさまざまな情報を集め、関係機関と調整するのは難しい」と苦悩を口にする。浜通りの自治体の担当者は「復興を最優先で進めている」として、次期復興計画の決定後、検討する考えを示した。

 県は温室効果ガスの排出量を段階的に減少させる計画を進めている。年内に、脱炭素化社会の実現に向けた県民や県内事業者の行動指針を示す独自の条例制定を目指しており、「オール福島」を打ち出し、県内の意識を醸成していく。実現には、市町村の取り組み強化が求められるため、アドバイザー派遣や説明会などを通じ、実行計画の策定を支援している。

 地球温暖化対策に詳しい渡辺明福島大名誉教授は、まちづくりと合わせて実行計画を練り上げることが自治体の負担軽減につながると指摘。「アドバイザーに加え、地域の実情に精通した人材の協力を得て取り組めば、迅速化を図れ、実効性の高い計画になるのではないか」としている。

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