「めっちゃ背中押してもらえた」 "42歳普通のおじさん"が海外で叶えたCAの夢 ハッピーな報告に祝福の「14万いいね」

入社前の休暇を楽しんだフランスで笑顔を見せる「おりょうさん」(2024年3月/本人提供)

「もうすぐ43歳のおじさんですが、未経験からの挑戦で、20年越しの夢だった客室乗務員(CA)になれることになりました まだ信じられない気持ちです」

日本を離れ、現在カナダ在住の男性のSNS投稿に14万件以上の「いいね」が付いて話題になっている。勇気づけられた人たちから「祝福の声」もあがっている。

「夢を叶えるには何歳からでも遅くないってことに気付かされた」 「もう遅いよなって諦めてたことがあるけどめっちゃ背中押してもらえた」

投稿したのは「おりょうさん」というXのユーザー。カナダの航空会社から内定をもらい、今年3月から働き出すという。

「これからCAになる私が今の地点に至るまで、いろいろな挑戦や転機がありました」(おりょうさん)

「42歳普通おじさん」を名乗る男性に有意義な"まわり道"を聞いた。

●42歳男性が海外エアラインのCAになるまで「ゼロからのフランス語学習は33歳で」

おりょうさんは、カナダのモントリオールに10年ほど在住している。外国文化に目が向いたきっかけは学校の授業だった。

少年時代、岡山県南部の海や山に囲まれた自然豊かな環境で育ったおりょうさん。中学校の授業で学んだ英語の楽しさに目覚めて、大学は大阪の外国語大学を選んだ。

卒業後は国内の外資系ホテルなどに勤め、2012年から「31歳で新たな挑戦を求めて、カナダでの生活をスタート」した。ニュージーランドで1年間暮らしたこともあったが、これが初めての本格的な海外生活となる。

最初の1年半はトロントで過ごし、渡航前に取得していた日本語教師の資格を活かした仕事や、ボランティア活動に積極的に参加。2014年からはモントリオールに移り、33歳でゼロからフランス語の習得を始めた。

「2017年から2022年まではカナダの移民法と滞在資格の専門家である公認移民コンサルタントとして自営業を営みながらも、政府移民政策の大幅な変更とパンデミックの深刻な影響で事業を閉じる決断をしました。

2022年1月からは若いカナダ人学生に混じり、職業訓練校でITサポートの勉強を始め、2023年6月に卒業。以降、IT職種で現地雇用の機会を求めていました」

また、2023年1月からカナダのマギル大学でサイバーセキュリティを学び、現在でも科目履修を続けている。

●「おりょうは絶対にCAに採用されるから!」友人カップル後押し→翌日エントリー

「CA」の直接的な足がかりとなるような勉強は一切してこなかった。ただ、漠然とCAを夢見ていたという。

若いころに感じていた憧れは「清潔感のある凛としたCAの方たちの姿勢で、さらに飛行機の機内という非日常的な空間で、安全とサービスを提供する役割でした」と振り返る。

ぼんやりしていた夢の形がハッキリとしたのは、わずか1カ月前のことだった。

「おりょうは絶対にCAに採用されるから、応募してみて!」と背中を押してくれたのが、カナダで知り合った10年来の日本人の友人Kさんだった。

「それが2月初旬のこと。忘れかけていた夢への情熱が再燃し、その翌日にはウェブ応募をしました」

面接の招待が届いたのは数時間後のこと。

「電話での英語、フランス語、日本語の言語査定を受け、3言語すべてで合格しました。その後、ビデオ会議での面接、対面での集団面接と、健康診断を終えて、身元調査(バックグラウンドチェック)もすべて合格し、2月28日に正式な雇用オファーをいただきました」

あれよあれよと内定を獲得したおりょうさん。Kさんのパートナーであり、元CAで航空機インストラクターのCさんも、履歴書のチェックや面接対策を手伝ってくれたという。

●「パズルのピースが上手くはまったような感じ」

航空会社が内定を出した理由について、おりょうさんは「40代になるまで培ってきた多言語能力、ホスピタリティ業界での経験、異文化間コミュニケーション能力の組み合わせ」といったスキルや経験が「希少価値」と認識されたのだろうと考えている。

「入社する3月26日からCAの有給トレーニングが始まります。トレーニングの終了後にはCAとしての拠点となる都市に転居し、6月初旬には乗務が始まる見込みです」

これからおよそ3カ月後にはCAとして世界の空を飛ぶことになる。

「友人カップルも含め、周りの人たちに助けられて今の自分の資格や経歴があると思っています。そこに、元々探していた職種での就職活動の難航や、航空会社が運良く採用活動をしていたことなど、パズルのピースが上手くはまったような感じですね」

●「一つの夢を追いながらも、心の中に複数の夢を育てる勇気を持って」

夢を叶えたという投稿には、同じアラフォーだけでなく、幅広い世代から「励まされた」として、14万件もの「いいね」がつけられる反響を見せた。

おりょうさんは「皆さんからの反響に、心から感謝しています。私の体験が、夢を持ち続けること、夢を追い求める勇気の大切さを伝えることができたなら幸いです」と感謝の言葉を述べ、次のようなメッセージで応じる。

「重要なのは、採用選考のような一回の挑戦そのものよりも、そこに至るまでの継続した努力です。この努力は、私たちを成長させ、夢を追求する過程で新たな可能性の発見につながります。

一つの夢を追いながらも、心の中に複数の夢を育てる勇気を持ってください。継続した努力を大切にして、自分自身の成長を信じて前進し続けてください」

おりょうさんは、CAとしての役割が、単なる仕事を超えて、社会貢献の形だと強く信じていると話す。

「利用するたびに感銘を受ける日系航空会社と同等のサービスを目指し、お子さまからご年配のお客さままで、それぞれの細かいニーズに注意を払いたいと考えています。乗客一人ひとりの要望に応え、快適で心温まる旅の体験を提供することが私の目標です」

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